第40話:ムツキさんとシロちゃん。
パチッ!パチッ!
目の前では焚き火が心地よい音を立てて燃えている。
焚き火の向こう側には、焼きあがった魚を頬張るムツキさんの姿が。
焚き火が、ムツキさんの顔や体を薄く照らす。その姿がこの世のものとは思えないほど妖艶で、見惚れてしまう。
「美味しい・・・・」
ムツキさんは、魚を口に頬張りながら話す。
「そこの焼いていない魚ももらっていい?」
「えっ、でも焼いた方が美味しいですよ???」
僕は答えた。
「私じゃないの・・・。」
「シロちゃん、出ておいで。」
その声を合図に、ムツキさんのローブの腕の袖から、白い蛇がゆっくりと顔を出した。
長さは1mあるかないかぐらいで、美しいほどの真っ白い鱗と赤い瞳を持っている。
その赤い瞳は僕を捉え、長い舌をチロチロと出している。
まるで、僕を物色しているように感じてしまう。
「私の友達のシロちゃんです。」
シロちゃんは、ムツキさんの身体を舐めるように這いずり回り、ムツキさんの肩から顔を出す。大きなおっぱいにシロちゃんの身体が丸く絡みつき、その胸の大きさを強調している。
これはっ・・・・!!!
・・・
・・・
これはこれで、なんか!なんかエッチだ!!
「初めまして。シロちゃん。僕はシトです。」
シロちゃんに向かって魚を差し出すと、目にも止まらぬ速さで僕の手から魚を奪いとり、あっという間に丸呑みした。
シロちゃんのお腹が魚型に膨れ上がる。
「あれ・・・?」
「へえ・・・・。この子が私以外からもらったご飯を食べるなんて・・・。シトを相当気に入ったみたいね。」
ムツキさんは、シロちゃんの頭をキレイな指で撫でながら微笑む。
「シトはどうしてこんなところで生活することになったの?」
ムツキさんがシロちゃんを撫でながら、僕に問いかける。
僕はとある理由で、ガルガン山を目指していること、このクルビレ湿地帯を抜けようとして起こった出来事について話した。
「アマゾネスの嬢王にね・・・・」
ムツキさんは一通り話を聞いてから、ゆっくりと口を開いた。
パチンッ
焚き火からは火の粉が弾ける心地よい音がする。
「その嬢王と再戦か・・・」
「はっ、はい、7日後までに僕は強くなって、もう一度嬢王と戦って勝たないと・・・」
蛇のシロちゃんは、ムツキさんから僕の身体に移り、腕に絡みつき、僕の頭の上に頭を載せている。
「ふむ・・・、嬢王・・・、女ね・・・・」
・・・
「わかった!美味しいご飯のお礼に、私が究極の必殺技を教えてあげる。」
ムツキさんが大きく頷きながら話す。
「えっ!!!必殺技ですか?」
「えっ!えっ!!!教えるって・・・、ムツキさん、一体何者なんですか?」
「えっ・・・私・・・私はほら・・・」
「う・・・・ん、昔、結構ヤンチャしてた系の女子です。(ハート)」
指を口に当てながら、僕にウインクするムツキさん。
確かに気配を感じない動作、岩場から僕の近くまで一瞬で移動してきた身のこなし。
只者ではないのかもしれない。
「何もしないで、ウンウン悩んでいるよりはマシだと思うけど?」
・・・
・・・
「はっ、はい!わかりました!よろしくお願いします!!でも、ムツキさんは何か予定とかあったんじゃないですか?」
「私・・・?う・・・ん、私はいいの。急ぎじゃないから。それに・・・なんだからもう少しシトと一緒にいたしね。」
ムツキさんはペロッと舌を出してウインクした。
・・・
・・・
かわいらしい!!!!!!
こんな美女と、数日間一緒だなんて・・・・!!
そんなことを考えていると、
カプッ!
「イタッ!!!!!」
僕の頭にシロちゃんが噛み付いた。
ムツキさんは、その姿をみて微笑んでいる。
さっきまでは悔しいのと、心細いのと、色々な感情が混ざり合って、僕の心はグチャグチャだった。
でも、この密林の不思議な女性のおかげで、僕の心に再び火が灯り始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
--- 数時間後 ---
(※ムツキ視点)
目の前では、少年が心地よい寝息を立てて寝ている。
私はこっそりと近づき、彼の顔を覗き込む。
・・・
「あ・・・んっ」
やっぱりこの子からいい匂いがする。私の大好きな匂いが微かにする。
・・・
・・・
「このまま食べじゃおうかしら・・・」
私はローブを肩まで脱ぎかけて、彼の頬を舌でペロリと舐めた。
・・・
「はぁぁん・・・」
「ダメ・・・、この匂いの素を確かめてからじゃないと・・・」
「今は我慢よ。シロちゃんも。」
私の体を物欲しそうなシロちゃんが這いずる。
・・・
・・・
小屋の外に複数の気配を感じる。
・・・
「ふん。クズどもが物色してやがる。」
私は扉をそっと開けて、小屋を出る。
外に出ると、案の定、獣人どもが小屋を取り囲んでいた。
「ふぅ・・・、強さの度合いも測れないのか・・・、まったく・・・、では、わかりやすく見せてやろう。」
・・・
・・・
獣人達は一目散に立ち去った。
月明かりに照らされた私の姿が、水面に反射する。
「恋しい・・・あの人が・・・恋しい・・・」
・・・
・・・
私は月を見ながら一筋の涙を流した。
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