第39話:密林!ぼっち!謎の美女!
(※ユラ視点)
シトと嬢王のバトルが終わった後、嬢王は玉座に座りながら果実酒を飲んで、何かを書いている。
「こいつを見張り小屋に捨ててこい。」
「この手紙と、こいつが持っていた武器を一つだけ持たせてやれ。」
手紙を受け取り、側近の女戦士が下がる。
嬢王は、ピクリとも動かないシトを見つめながら、果実酒を口に含む。
「くっ!!!!!」
私は静止する女戦士を振り切り、闘技場の中央で横たわるシトに駆け寄った。
「あなたが勝ったのはわかってる!再戦の話もこちらとしてはありがたいわ!文句は言わない!!」
「ただ!ただ一つ!傷の手当はさせて!」
「お願い・・・」
「お願い・・・します!」
私は嬢王ローザに頭を下げて訴える。
・・・
頭をあげた時に、嬢王と視線が合う。
視線はずらさない。
・・・
・・・
「許す。この者の縄を。」
嬢王の掛け声と共に、女戦士が私に近づき縄を解いた。
急いでシトに駆け寄り、頭を膝の上にのせる。
この腕の傷はひどいわ!!なんとかしないと。
「この者に祝福と癒しを・・・。ヒール!」
私の手が緑色に光り、シトの腕の傷を癒していく。
魔法である程度回復させた後、私は自分のローブを切って、シトの腕に巻きつける。
「シト・・・、大丈夫・・・」
「大丈夫だから・・・」
「君ならできる。いい?ここで折れてはダメ。ここは男の見せ所よ!」
私は意識のないシトの頭を胸の中に包んで、小声で話しかける。
そして、そっとシトの首に光の勾玉をかける。
その瞬間、死角になるよう私の髪でシトの顔を覆い隠し、彼の額にそっとキスをする。
・・・
・・・
シトを地面にそっと寝かせて、立ち上がる。
その光景を待っていたかのように、嬢王が女戦士に命じた。
「連れていけ。」
私の目の前で、女戦士二人に抱えられ、シトは闘技場の奥に連れていかれた。
私は、そのまま嬢王に強い眼差しを送る。
再び、嬢王と視線が交差する。
覚えておきなさいよ!シトが死んだら、自滅覚悟で暴れてやるから!!
怒りが込み上がてくる。
私は自分の拳を、これ以上ない力で握りしめた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(数時間後)
身体が熱い・・・
左腕がジンジンする・・・
ゆっくりと目を開ける。
僕は重い身体を起こして辺りを見渡した。
「ここは・・・」
僕は、見知らぬ小さな小屋に寝転んでいた。
「そうだ・・・、僕はローザさんとの1対1の戦いに負けて・・・」
左腕を
傷口には布が巻かれ、きっちりとした処置がしてあった。ジンジンしているが動かせる。
「これは・・・回復魔法?」
腕を摩りながら、辺りを見渡す。
僕のサラマンダーダガーが置いてある。そしてその下には1枚の紙が置いてあった。
紙を見てみると、アマゾネスの集落の場所を記した地図。
そしてメッセージが、
「7日目の夜、闘技場に来い。それまで女は生かしておいてやる。逃げるのは自由だが、女の命はないと思え。 -ローザ・アリアン-」
それはローザさんからの再戦を促すメッセージだった。
ローザさん・・・
僕は勝負に負けたことを鮮明に思い出した。
膝を抱えて、
その時、何かがジャラっと音を立てた。
これは・・・
ユラさんがつけていた光の勾玉?
「なんでここに・・・?」
勾玉を指で摩る。
・・・
外で川の流れる音が聞こえる。
僕は喉の渇きを
外から小屋を見てみると、草木で覆われ見つかりにくいようにカモフラージュされている。
そして、目の前にさほど大きくない川が流れている。この湿地帯の中央を流れる大きな本流から派生した川なのかもしれない。
水を両手ですくい、ゴクゴクと飲む。
冷たい水が身体に染み渡る。
その勢いで、僕は顔をバシャバシャと洗った。
揺らいだ水面が落ち着き、僕の顔を写した。
・・・
・・・
ウッ・・・
ウッ、ウウッ・・・
僕の目からは自然と涙が溢れ出す。
・・・
「負けてしまった・・・・」
・・・
「ユラさん・・・、ミナさん・・・、シズクさん・・・」
・・・
「弱くて・・・、助けられなくて・・・ごっ、ごめんなさい!」
・・・
ウッ、ウッ、ウウッ・・・
・・・
・・・
「何がそんなに悲しいの・・・?」
突然の声に身体がビクッと反応する。
僕は涙を拭いて、声の方向に視線を送った。
川の中央にある大きな岩の上に、一つの人影が見える。
岩の上に座り、夜空を見ている。
いつから・・・そこに??
黒色をベースに奇抜な赤い柄が入った長いローブ、腰を締める赤くて長い帯がひときわ目を引く。
青い髪は腰のあたりまであり、着くずしているローブから見えるほっそりしたうなじ、大胆にあいている胸元から大きな胸が溢れている。
僕は泣いているところを見られた恥ずかしさと、その女性のあまりの妖婉さに目をそらす。
「あの・・・泣いていた訳ではなくてですね・・・その・・・」
・・・
「泣いていた・・・」
ハッと声の方向を向くと、その女性はいつの間にか僕の目の前に立っていた。
近くでみると、改めてその美しさに見惚れてしまう。
透き通った切れ長の緑色の目。そして着くずしたローブから見える、白くて柔らそうな胸。ローブからチラリと見える白い太もも・・・
その艶かしさに僕の顔が一瞬で紅潮する。
・・・
・・・
「あの・・・どうしてこんなところに・・・」
僕はしどろもどろになりながらも、女性に話しかけた。
「いい匂いがする・・・」
「えっ???匂い????」
・・・
「いい匂いを辿ってきたら君がいた。」
唇を舌で舐める女性。
言ってることはとても謎だが、その仕草がとてもセクシーだ!!!!
「ぼっ、僕はシトって言います。とある理由でここでしばらく生活することになり・・・」
・・・
「シト・・・」
「私は・・・そうね・・・ムツキ」
女性は、月を眺めながら無表情で答えた。
・・・
・・・
ぐうううう!
・・・
ムツキさんのお腹が大きな音を立てる。
お腹を摩るムツキさん。
ぐううう!!
今度は僕のお腹がそれに合わせて鳴った。
僕とムツキさんは顔を見合わせる。
「フフフッ」
「はははは」
「なっ、何か食べましょうか!」
僕は密林の奥地で不思議な女性と出会った。
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