第38話:嬢王との1vs1

ガチーーン!!!


闘技場の中央で、僕とローザさんの剣がぶつかり合い、激しい金属音を響かせる。


なっ、なんて力だ!!!


衝撃で吹き飛ばされそうになるのを踏ん張って耐える。


つばぜり合いになり、ローザさんの顔と僕の顔が近付く。


「私を殺す気で来ないと、お前が死ぬぞ。そしてお前が負けたら、女どもも無事では帰さん。」


紅の瞳に込められた強い殺気が、戦いの本気さを物語る。


くっ・・・・


僕が・・・僕が勝たないと・・・、みんなが・・・


覚悟を決めて、ローザーさんを睨む。


出し惜しみはなしだ!!


ローザさんの剣を弾き、後ろへと大きくジャンプして距離をとる。


手で印を結びながら集中力を高める。


「んっ?お前、剣士じゃなかったのか?」


これは、ガジュラ戦で使った一時的に身体能力を高める肉体強化術。シズク師匠から教えてもらった勝負の術だ。ただし、術が切れた後、デメリットとしてしばらくの間は、体の自由が効かなくなってしまう。


ローザさんが油断している時に勝負を決める!


「ふーーーー!!!」


大きく息を吐き出す。


行くぞ!!!!


「闘気開放!!!!」


体が一瞬光ると同時に、ローザさんに向かって全力でダッシュする。


あっという間に距離を詰め、低い姿勢からローザさんの懐に潜り込む。そして一回転して勢いをつけた剣撃を腹部に放った。


ガチーーーーーン!!!


鈍い金属音が響く。


ローザさんは片手に持った剣で、渾身の一撃を軽々と受け止めた。


「ほう。肉体強化か。面白い術を使う。」


「くっ!!!」


再び、ローザさんの周りを素早く回転しながら回り込み、勢いをつけた剣撃を叩きつけていく。


剣と剣がぶつかり合う音が響く。


「なっ!!!」


肉体強化でのスピードアップ、そして回転を交えた勢いのある重い剣撃・・・、僕の連続の剣撃を片手一本で弾き返していく。


今度は、地面スレスレの低い姿勢で回転し、横一線の剣撃をローザさんの脚に向かって放つ。


ローザさんは、バックステップしてその一撃をかわした。


「ここだ!!!」


体勢が崩れたローザさんの肩めがけて、勢いよく剣を振り下ろした。


ガチーーン!!!


・・・


「ごっふ・・・・・」


振り下ろした剣撃は、いとも簡単に受け止められ、僕の腹部にローザさんの膝蹴りがめり込む。


「ぶはっ!!!!!」


僕の口からは血が吹き出す。


そして動きが止まった一瞬、僕の顔面にローザさんの回し蹴りが直撃し、吹っ飛ばされた。


「なかなかいい攻撃するじゃないか。よく鍛えられている。」


ローザさんがゆっくりと歩いてくる。


間に合うか・・・


もう・・・僕にはそんなに時間がない。


長期戦はダメだ・・・。


僕は地面にうずくまりながら、手で印を結ぶ。


「おい!どうした?これで終わりか?」


ローザさんが近づいてくる。


僕の手の中に光の球が浮かび上がる。


ローザさんは僕の近くにきて、大きく剣を振りかぶった。


ここだ!!!


「波動弾!!!!」


ローザさんの剣が振り下ろされる一瞬、


僕は起き上がり片膝をついて、ローザさんの腹部めがけて光の球を放った。


光の球はローザさんに直撃し爆発した。


「ハア!ハア!!ハア!!」


周りの歓声がどよめきにかわる。


これはシズクさんから教えてもらった、自らの気を練って放つ中距離型の術だ。


ドスッ!!!


・・・


ん??????


・・・


いたっ、、痛いーーーーーー!!!!!!


強烈な痛みが僕の腕を襲う!!


・・・


なんでっ!!!


・・・・


僕の左腕にローザさんの剣が突き刺さり、血が吹き出している。


まさか・・・・


目の前には、左腕をダランと下ろして、右腕の剣で僕を刺しているローザさんの姿が。


「左肩を持っていかれたぞ。」


剣を抜き、さらに顔面を思いっきり蹴られ、吹っ飛ばされる。


「ぐぐっ!!!!」


肩の痛みに耐えながら立ち上がろうとするが、ローザさんはこの隙を見逃さない。立とうとする僕を前蹴りして仰向けに倒し、僕の上にのしかかった。


「術の反動か?動きが鈍いぞ。」


ローザさんは血が吹き出している僕の肩の傷を、手で握りしめる。


「ぎゃあああーーーー!!!」


僕の腕を強烈な痛みが襲い、さらに血が激しく吹き出した。


「いい声を出すじゃないか。どうだ!私の奴隷になるんだぞ!幸せだろう?あそこの女たちとは比べ物にならない快楽を与えてやろう!」


ローザさんは大きな声で叫び、腕の傷をさらに強く掴んだ。


傷口からはさらに血が吹き出す。


周りの歓声がひときわ大きくなった気がする。


「言えっ!ローザ様が僕の最高の女性ですと!」


痛みと術の反動で身体に力が入らない。


薄れる視界に、ユラさん、ミナさん、シズクさんの姿が入る。


ユラさんが、青白い顔で僕を見つめている。


また心配させてしまっている・・・


僕が彼女を守・・・


「ぐううう!!!!」


意識が薄れる中で、心臓の鼓動が高鳴っていく。


・・・・


・・・・


ローザさんの紅の瞳を睨み、震える手でローザさんの首に手を回す。


「ぐあああああああ!!!」


ローザさんも僕の瞳から目を逸らさない!!


「ほう。こいつ・・・・、面白い!!!!」


ドゴッ!!!!


ローザさんの強烈な右フックが僕のアゴを捉えた。


力が入らない・・・・


視界がまわる・・・


「お前に一週間の猶予をやる。」


「私は強い男が好きだ!私を今日以上に、もっとゾクゾクさせてみせよ!逃げたら、この女どもは獣人たちの群にでも放り込んでやる。獣人たちに犯されるか、喰われるか、知らんがな。」


そういって、ローザさんは立ち上がった。


ローザさんは顔を紅潮させながら、僕を嬉しそうに見下ろしている。


大きな歓声がやたらと耳につく・・・


その中に、かすかにユラさんの声が聞こえた気がした。


そして、僕は意識を失った。

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