第36話:アマゾネスの嬢王
「おいっ!さっさと歩け!この乳デカ!」
「うっさいわねー!そんなに急がなくても歩くわよー!」
ミナさんが女戦士を睨めつける。
僕らの状況は、今まさにアマゾネスの一団に捕まっている。
ミナさんが、魔法をかける合図をした時に、ユラさんがなぜか首を横に振ったのだ。
「ユラ・・・何でシャドウスモークで逃げなかったの?・・・」
ミナさんが小声で、隣を歩くユラさんに囁く。
「こいつら、シズクに気づかれずに近付くなんて、気配を消したり探知する能力にかなり長けているようね。目くらましで逃げても、すぐに見つかるでしょう。ぶっ飛ばしてもいいんだけど、アマゾネスがどれくらいの人数がいるか見極めないと。流石に数百人の仲間を呼ばれたら、私たちに勝ち目はないわよね。それに・・・、あのリーダー格の女、かなり強いわよ。」
「密林の女たち、手強い。」
シズクさんがウンウンと頷く。
「アンタ、まさか寝てたんじゃないでしょうね?」
ミナさんが突っ込む。
「少し・・・寝てたかもしれない。」
ユラさんがガクッと肩を起こした。
そして・・・・
何だかとっても視線を感じる・・・・
女戦士の皆さんとよく目が会うのだ・・・
中には舌舐めずりしてる人までいて・・・
正直怖い。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
密林の中をだいぶ歩いただろう。
前方に開けている土地があるのか、光が指していて明るい。
僕たちは十数人のアマゾネスに囲まれ、光が指している方向に向かった。
「これは・・・」
僕はその風景をみて声を出してしまう。密林が開けると、大きな村が存在していたのだ。
しっかりとした木製の家が立ち並び、村の中心の大きなストリートには、食料や生活雑貨を販売している露店まで立ち並んでいる。
「アマゾネスの村・・・」
ユラさんが呟く。
僕らはアマゾネスに連れられて、メインストリートを進んでいく。
「男よ・・・・」
「何だかひ弱そうね・・・」
「私はもっとマッチョがいいわ・・・」
「えっ、でも可愛い顔してるじゃない!」
「今回はどうなるかしらね・・・」
すれ違うアマゾネス達から話し声が聞こえる。
中には僕に投げキスする女性までいた。
アマゾネス達の衣装は、みんな、こう・・・
露出度が高くて・・・
みんな下着姿で歩くのだろうか・・・
小さいブラジャーと細い紐のようなパンツ、そしてスケスケのローブのような服装で、正直、目のやり場に困ってしまう。
そして・・・、驚くべきことに美女ばかりだ!!!
「チッ、一番イヤな状況だわ・・・」
ミナさんが舌打ちをする。
「シトの
シズクさんも何だかイラっとしている。
「シト・・・・・」
ユラさんが僕を不安そうな顔で見つめる。
ユラさんと僕の視線がほんの数秒間重なった後、ユラさんの目が意を決したように鋭い眼差しに変わった。
「いい?100人程度なら、エアリアルバースト、ぶっ放しで逃げるわよ。その後、ミナ、スモークお願い。荷物の場所だけ確認しておいて。奪って逃げるよ、OK?」
ユラさんがみんなに耳打ちする。
僕らは全員で頷き、その時を待ちながら、奥の大きな建物に進んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村の中央には、大きな木造の建物がある。
これは集会場なのだろうか・・・
広大な円型のスペースの周りを、見物席のような木の椅子が囲んでいる。
そして見物席の中央には、玉座のような大きな椅子があり、さっきのリーダー格のアマゾネスが脚を組んで座っている。
「えーー、んでお前達はナニモノなんだ?」
僕たちは、頑丈な縄で手を縛られ、玉座の階段の下で
後ろを振り向くと、200人ぐらいいるだろうか。
多くのアマゾネスがモノ珍しそうに見物席に座っている。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。私はアマゾネスの嬢王、ローザ、ローザ・アリアンだ。お前達はなぜあの場所にいた?」
褐色の肌と、長い赤い髪、水着のような黒のブラジャーからは大きな胸のほとんどがはみ出しており、細くくびれたウエストと豊満なお尻のお肉の間にパンツの細い紐が食い込んでいる。そして獣の皮でできたようなローブを身にまとう姿は、威風堂々としており見る者を威圧する。
そして何よりも美しく整った顔、紅の瞳で見つめられると、なぜか恥ずかしくて目を伏せたくなる。
「私たちは、ローランド帝国の国王から手紙を預かっている。それをガルガン山のある人に届けに行く。そのためにこのクルビレ湿地帯を渡ろうとしていたわ。アマゾネスの集落に干渉したりしない。だからこのまま通らせて欲しい。」
「ローランド国王ね・・・」
・・・
・・・
「ガルガン山ね・・・・。」
ローザさんは、グラスに入った赤い飲み物をゴクっと飲み込む。
「ガルガン山の状況をお前達は知ってるのかい?
チッと舌打ちをしながら、ローザさんは続ける。
「まあ、よそ者のあんた達はこのまま帰んな。ここら辺も獣人やら竜人やらが、やたらと凶暴になってね。私たちも手を焼いてるんだ・・・。」
ふーと大きな息を吐き、手で僕たちを払いのける素ぶりをする。
「あーーー、あと迷惑料として、そこの男は置いていきな。」
ローザさんは唇を舌でぺろっと舐めながら僕を見つめる。
・・・・
「僕・・・・????」
自分のことを指で指しながら、みんなの表情を伺う。
・・・・
・・・・
「ええええーーーーーーー!!!」
ユラさん、ミナさん、シズクさんは、あたかもこの結果になることを予測していたように、顔を見合わせている。
「迷惑なんかかけてないじゃない!!いいから通らせなさいよ!」
ミナさんが吠える。
「黙ってろ!お前に話してない!乳でか女!」
ローザさんが一蹴する。
「私のバッグに国王の手紙があるわ。私たちは本物よ。国王の使者に対して、このような仕打ち、問題になると思うけど。」
ユラさんは、冷静な表情でローザさんを見つめる。
周りの女戦士が、ユラさんのバッグから手紙を出し、それをローザさんに見せた。
指2本で手紙を摘み、興味のなさそうな顔で封筒の封蝋(ふうろう)の印を見つめるローザさん
「ふんっ!・・・・」
ローザさんは、手紙を女戦士の側近に向かって投げるように渡す。
「わかった・・・!」
・・・
・・・
「じゃあ、こうしようじゃないか!」
「うちらは欲しいものがあったら力で奪い合う。そこの男と、私が戦って、私が勝ったら、この男をもらう。私が負けたら、なんだっていうことを聞いてやるさ。」
・・・・
・・・・
「えええええっ!!!!!!!」
「おっと、これ以上の交渉はないよ!こっちの領地なんだから、こっちのやり方に従ってもらう。」
「あっはははははははーーー!!!」
ローザさんが空に向かって高らかに笑う。
「今晩の宴に、最高の
ローザさんの掛け声と共に、アマゾネス達の地鳴りのような雄叫びが響き渡る。
ユラさん、ミナさん、シズクさんは、その雄叫びを聞き、うざったそうに顔をしかめている。
「シト・・・」
ユラさんの声と共に、みんなの視線が僕に集まった。
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