第31話:刻印の条件は、もうギリギリ!

(※ユラ視点)


「魔法の刻印を伝授する条件・・・」


「それは・・・」


ゴックリ・・・


「ワシの事も二人のおっぱいでモチモチしてくれー!!!!!」


どんな条件を言われるのか、固唾かたずを飲んで待っていた私たちは盛大にズッコケた!!


「おじじ・・・そんなに一人が寂しかったのね・・・」


ミナがあまりのバカさ加減に同情し始めている。


「どんな条件か、真面目に考えていた私がバカだった・・・」


「しょうがない!おじじ、私が人肌脱いであげよう!」


ミナが腕組みをしながら、ウンウンとうなづく。


ムア爺とミナの視線が私に向けられる。


「わっ、わっ、私はイヤよ・・・だって・・・」


私は慌てて手を振って答える。


「この前、シトに添い寝までしてあげたのに・・・?ユラ、あんた、もしかして・・・」


シトがピクッと反応し、ご飯を食べる手を止め、真っ赤になりうつむいている。


その光景を見て、私の顔も一気に紅潮する。


「それは、状況がちがっ・・・。うーーーん・・・わかったわよ!もう!します!モチモチしますーー!」


飛び上がって喜ぶムア爺。


ガクッとうな垂れる私。


勢いで答えてしまった・・・。


ムア爺が私たちに刻印を刻む前に、モチモチの儀も行われることになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(※ミナ視点)


「ふーーーーー」


夜風が気持ちいい。雷の精霊を使いすぎたのか、魔力を使いすぎたのか、身体が火照って眠れない。


「地の精霊ね・・・、私のこの血筋で使えるかしら・・・」


・・・・


・・・・


「ほっ、ほっ、ほっ、自分の血筋がそんなに気になるのかの?」


「おじじ・・・」


振り向くとムア爺が杖をついて立っていた。


いつものようにゆっくりと歩き、隣の椅子に腰掛ける。


「よっこいせーー」


「ふーーーー。いい風じゃのーー」


「ミナよ、お主はエルフの血筋の者じゃな。しかもダークエルフの血筋か・・・」


ムア爺は相変わらず長い髭をさすっている。


「ええ・・・。まあ、おじじにはわかっちゃうわよね。そう・・・、私はダークエルフの血が混じってるのよ。だから闇の精霊魔法は使えても、地、水、風、火などの四大精霊には嫌われるのよね。この前は、ユラを助けるために、一度だけ風の精霊が力を貸してくれたけど・・・。」


私は髪をゆっくりとかきあげて続ける。


「雷の精霊は、私の一族がずっと契約している精霊なの。だから私にも使えるのよ。でも・・・、残念ながら、ムア爺の魔法を継承できても、おそらく地の魔法は使えないわ。だってどっちかというと、私の一族はモンスター側にいてもおかしくないから・・・。」


ムア爺はニコニコしながら聞いている。


「ダークエルフとヒューマンの血か・・・。誇り高き純血のエルフ族からは忌み嫌われ、ヒューマンからはモンスター呼ばわりされてきたのかもしれんの・・・」


ハッとして私はムア爺を見つめる。私が経験してきた事を見透かされた気がした。


「ミナよ・・・。お主はあの小僧が、仮にモンスターになったら嫌うのか・・・?嫌わないじゃろう?それと一緒じゃよ。お主はお主を大切にしてくれる人と共に生きよ。今のお前の仲間たちは、血だの生まれだのまったく気にしておらんじゃろう。他人にどう思われようと気にするな。お主を大切にしてくれる人、お主の大好きな人との時間を大切にするんじゃぞ。」


「おじじ・・・」


「それに・・・、ワシは悪い奴に刻印を継承したりは絶対せんよ。ダークエルフの血が入ってようが関係ないわい。お主はお主。とても優しい子じゃ。そして、地の精霊は優しい子が大好きじゃて。」


ムア爺は私の目をみてニコッと微笑む。


「ありがとう・・・・」


私はムア爺に涙を悟られないよう、顔を膝に埋めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


--- 翌日 ----


(※ユラ視点)


朝食を終えた後、私とミナはムア爺の前に立っている。


これからムア爺の顔を私とミナの胸で、モチモチしてあげるためだ。


「生きてて・・・、生きててよかったぞーい!!!」


ムア爺は泣きながら喜んでいる。


「さあ、ムア爺の天国への手土産として、ここは一肌脱ごうじゃないか、ユラ君」


ミナがタンクトップを勢いよく脱ごうとしている。


「ちょっと・・・、ミナ!本当にするの?」


ムア爺が祈るように私を見つめる。こいつは・・・。


・・・


・・・


「ふぅ・・・、もう・・・仕方ないか・・・」


腹をくくった私とミナは、同時にタンクトップを脱ぎ、胸の先だけ指で隠している。


私とミナの豊満な胸は、指でギリギリに隠された先っぽ以外は丸見えだ。


「んもーーーーー!やっぱり恥ずかしい!!!」


私は顔を真っ赤にしながら叫ぶ。ミナも流石に恥ずかしいようで顔が真っ赤になっている。


「神じゃーーー!ここに女神が二人もおるーーー!!!」


ムア爺は、鼻血を出しながら、私とミナの胸に向かって拝み始めた。


「さあ、早くその指をどけて・・・モチモチを!!!!」


私とミナはゆっくりと指をどけていく。


・・・


・・・ダメ、全部見えちゃう・・・


・・・


「やっぱりダメーーーー!!!!!」


私が胸を隠すと同時に、大きな爆発が起こった!


私もミナも驚いて胸を隠し、爆発の方向を見る。


「ふん・・・ついに気付かれてしもうたかの・・・、せっかくのお楽しみを邪魔しおってからに。」


ムア爺はさっきまでのデレデレした顔から一転して、厳しい表情を見せる。


「ユラ、ミナよ。モチモチはお預けじゃ。今すぐ刻印を刻むぞい。」


「ミナはワシの左手側に、ユラはワシの右手側に来るんじゃ。」


私とミナは、上半身裸のまま、指定された位置へと移動する。


「いくぞい!」


ムア爺が、私とミナの右胸の上に手のひらを当てる。


「むほっ!ムニョムニョじゃて!!!」


「ムア爺!!!!」


私とミナが声を合わせて突っ込む!


「ゴッホン!では・・・」


「我が力の起源、契約されし精霊よ・・・。右手に森の精霊エンシェント・エント。左手に、土の精霊ノーム。我が名にて命ずる・・・。我との契約を解除し、この者たちに力を与えよ。我が名にかけて誓おう。この者たちは我が意思を継ぐ者なり。」


「魔法刻印!!」


ムア爺の詠唱と共に、私の胸に当たっているムア爺の手が緑色に光る。ミナの方は赤黒い光を放っている。


やがて光は、だんだんと小さくなり消滅した。


ゆっくりと胸から手を離すムア爺。


私の胸の上には、古代文字のような刻印がされている。


ミナの胸の上にも刻印の模様は違えど、同じサイズの刻印がされている。


「ふーーーーーー!!!!」


「さて、これで終了じゃて。残念じゃがの・・・使い方を丁寧に教えてやるほど時間がなくての・・・。お主らはここをすぐに出なければならん。この刻印はお主たちの血で解放するが良い。解放の詠唱はこうじゃ・・・」


私たちには刻印以外、特に変わったことはない。


しかし、ムア爺はなんだかとても小さくなったように感じた。


「ユラ、ミナよ・・・。今すぐシトとシズクを呼んでまいれ・・・」

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