第6章:結界の老人
第30話:動き出した闇と鬼のムア爺
----- ※時はさかのぼり、ガジュラが滅した数時間後 -----
(※キングス大陸/北部のモンスター領域/中央に位置する"エクリプソ城内"にて)
「ガジュラが滅しただと。」
玉座に座る大きな影がゆっくりとした口調で話す。
「はっ!数刻前!ガジュラ様の魔力反応が、イオニスの砦付近で消滅しております!」
もう1つの影は、玉座に向かって
「ガジュラめ・・・まだ刻ではないというのに・・・」
別の影が声を荒げる。
「王よ、ガジュラほどの者が、そう簡単に滅ぼされるとは到底思えませぬ。ここは別の者を調査にいかせて、状況を把握すべきかと。」
さらに別の影が玉座の大きな影に向かって進言する。
・・・
・・・
「・・・ ナージャ・・・、ナージャよ。」
低く、そして腹の底に響くような、落ち着いた声が城内に響き渡る。
・・・
・・・
「はっ、お呼びでございますか、王よ。」
1つの影が玉座の前に突如現れ、跪く。
「ガジュラの生存を調べろ。そして滅した者がいるなら早急に排除せよ。」
「御意。」
1つの影は玉座の前から一瞬で姿を消した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(※エリア4/ムア爺の結界内)
(※ユラ視点)
ムア爺の鍛錬が始まってから10日目。
「エアリアルバーーーーースト!!!!」
大気を凝縮した魔力弾を、ムア爺に向かって放つ。
「ほいっ!」
ムア爺は、分厚い魔力障壁を自分の前に出し、魔力弾を防ごうとしている。
「散っ!!!」
私はタイミングを見図らって、指の合図と共に叫ぶ。その声に反応し、魔力弾は障壁に当たる寸前で、複数に散らばり、障壁をかわしてムア爺に迫る。
爆発と共に、砂埃が舞い、視界が閉ざされる。
「ミナ、上!」
「ガッテン承知!!!!」
「全てを裁く一閃の雷鳥。その力を解放せよ。"サンダーバード"!!!!」
暗雲が広がり、巨大な光の雷鳥が姿を見せる。以前とは比べ物にならない大きさだ。
「
光の雷鳥が、大きな音を立てて、ミナの剣めがけて落下する。
「今度こそ!もらったーーー!!!」
ミナは、空中で無防備になった、ムア爺に向かって雷の剣をふり抜く。
剣から光の一閃がムア爺に向かって高速で放たれる。
「むっ!!」
光の一閃はムア爺に直撃し、大きな音を立てて爆発した。
その光景を見ながら、ミナは私の近くに着地する。
「ハア、ハア、ハア!今度こそ・・・やったわよね・・・」
ミナが息を切らしている。
「きゃっ!!!」
いきなり、お尻を撫でられて思わず私の声が漏れる。
「いやーん、またダメ!!」
隣ではミナが同じく、お尻を撫でられている。
「ほっ、ほっ、ほっ、二人とも揉み応えのあるムッチムチの尻じゃて。」
ビシ!!
パンッ!!!!!
私からは脳天チョップを、ミナからはビンタを喰らい、
「しかし、ユラは風の魔力弾をよう制御できるようになってきておる。しかもさらに上級の魔力コントロールができるようになったの。その制御力なら、もう自らの体を傷つけることはあるまいて。」
「ミナは雷の精霊を召喚しても、ガス欠になっとらんの。精霊の力を宿した魔法剣、良い。良い。」
ムア爺は、私にチョップされた頭を撫でながら、ゆっくりと立ち上がる。
「もう今日、50戦目よ・・・。魔力切れして、回復して、また魔力切れして・・・。流石にフラフラだわ。まさかこの歳でこんなハードな事するなんて・・・」
私はその場に座り込む。
「もう・・・立てないいいーーー!!!!そんなに頑張れる歳じゃないーー!!!」
ミナも、もはや立ち上がる気力もないようだ。
「ほっ、ほっ、だいぶお主らの魔力量も増幅してきておるの。」
「ゴレさんやーーーー!!!そっちはどうじゃ!!!!」
ムア爺が声を張り上げる。
私はシトとシズクの方に目を向けた。
巨大なゴーレムに捕まり、逆さずりにされている、シズクとシト。
「ほっ、ほっ、ほっ、良い!良い!」
私とミナは、ムア爺から魔法の修行を。
そしてシトとシズクは、ムア爺が召喚した土の精霊、巨大なゴーレムの"ゴレさん"と一日中戦っている。
毎日、ズタボロにされ、そして泥のように眠る日々がずっと続いていた。
「さてと・・・、もう1本じゃ!!」
私とミナは顔を見合わせて、がっくりと頭をうな垂れた。
こうしてさらに地獄の日々が続いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
5人で夕食中。
「さてと、そろそろいい時期じゃろうて。ユラとミナには、ワシのすっごいのを挿れるぞい!」
「うるさい!エロジジイ!」
私はムア爺のセクハラをさらっと流して、パンをかじる。
「おじじ、そういうのもうお腹いっぱい・・・」
ミナは机の上に顔をのせ、もはやご飯を食べる気力すらない。
シズクと、シトは、もう見てられない・・・。
野獣のようにご飯を貪り食べている。
この二人・・・最近すごい似てきた気がする・・・。
「違う!違う!セクハラ違う!ここ最近、死ぬ寸前まで魔力を使わせておるのは、ワシの魔力への耐性をつけるためなんじゃ。」
「ワシはのう、土と森の属性を持っとるんじゃ。それぞれの属性の魔法を封印術で刻印にして、二人に伝授しようと思っとるんじゃ。土はミナに、森はユラにじゃ。
「刻印の力を解放した時に、ワシの魔力が解放され、お主たちの魔力を増幅し、それぞれの魔法が使えるようになろうて。」
・・・
・・・
「はあーーー!なにそれ!!!超欲しいっ!!!」
ミアが胸の前で手を組み、腰をクネクネさせて叫ぶ。
「風属性以外の魔法も使えるようになるってことよね?それは欲しいわっ!!」
私もこんな力は欲しいに決まっている。
「昔は、術者が開発したオリジナルの魔法なんぞは、このような手法で伝えられた事も多かったもんじゃがの。あとは高度な封印術を使える者でないと、まあ難しいじゃろうて。」
「えっ、もしかして、いっ、いらないのかの????」
ムア爺が私たちを見つめる。
「ください!!!お師匠様ーー!!!」
私とミナは声を揃えて叫んだ!
「ほっ、ほっ、ほっ、しかーーーし!ある意味、これはワシの力をお主らに譲るということじゃ。それには条件があーーーる!!」
一体その条件とは・・・
私とミナはゴクリと唾を飲んだ。
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