第28話:目を覚ませば、そこに乳。

「うううーーーーーん・・・」


なんだかモチモチしたものが顔にあたっている。


気持ちいい・・・。


とても甘い香りが僕の鼻につく。


この匂いは・・・・


よく知ってるいい匂い・・・


ユ・・・


ユラ・・・・


「ユラさん!!!!!!」


バッと目を開けた。


視界が合わず、目の前がぼやけている。


目を細めていると、段々と視界のピントが合ってくる。


んっ・・・・・・????


んーーーー!!!!!!


「ユッ、ユラ・・・、ユラさん???」


僕の顔のすぐ近くにユラさんの顔がある。


混乱して状況がわからないでいると・・・


・・・


「はい・・・」


「おはよ。シト・・・」


ユラさんは目から涙を流しながら、笑みを浮かべている。


「ユラさ・・・ん、僕は・・・、僕はその・・・」


ユラさんの顔をみて顔が赤くなる。


ユラさんは思いっきり笑顔になって、


「ほーーーら!!約束のモチモチだーー!!!」


僕の顔がユラさんの胸に押し付けられる。


こっ


この肌触りは・・・


もしかして・・・


何もつけてない????


「おはよっ!!!シト!!!」


ユラさんは僕のことを一度胸から離した。その瞬間、ユラさんの何もつけていない巨大な胸が目に入る。


「ユラさん・・・ちょっと胸っ!!!」


「嬉しいくせにーーー!!!」


ユラさんは、また僕の顔を胸の中に埋めた。


そんな・・・・


そんなことされたら・・・・


僕はもう・・・・


僕は天井に向かって、盛大に鼻血を吹き出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(その翌日)


「きゃあああああ!!!!!」


「なっ、何しているんですか!!」


僕はベッドから飛び降りて振り返る。


そこには、何も身につけていない、ミナさんとシズクさんが!


「おは・・・よ・・・、シト」


ミナさんの大きな胸がポヨンポヨンと揺れる。


「・・・、シト・・・元気」


シズクさんは身体をくねらせて、僕の一部を凝視する。


シズクさんの視線を目で追うと、そこは僕のアレが大変なことになっていた。


「きゃあああああああああ!!!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


意識を取り戻してから2日目の朝。


シズクさんとミナさんが、いつの間にか僕のベッドに入り込んでいた。


「今日は私の順番!!」


と、ミナさんがよくわからない事を叫んでいた。


昨日、僕は目を覚ました。


5日ほど寝たきりだったらしい。


そして、見知らぬお爺さんからは、


「小僧、貴様の若さがにくいんじゃ!」


と杖で頭を叩かれて意味がわからない。でも、このお爺さんが僕たちを助けてくれたらしい。


みんなにガジュラとの戦いがどうなったのかを教えてもらった。


ユラさんの話によると、僕の右半身から、漆黒のオーラが立ち上がり、とんでもない力を発揮してガジュラを倒したとか。


・・・


・・・


その話を聞いても、僕には記憶が全くなかった。


確かにみんながやられているのを見て、自分が自分でないような感覚に囚われていたような気もしたけど・・・。


ユラさんは、あんまり真剣に考えすぎないようにと、笑いながら話してくれた。


「ガジュラとベリエルとな・・・・、ふむ、これはまさか・・・」


ムア爺が渋い顔をしている。


「きゃあっ!!!」


バチーーン!


どうやら隣に座っているミナさんのお尻を撫で回したようだ。


「おじじ、マジメに話せ。」


シズクさんが珍しく突っ込んでいる。


「お前さん達には、伝えておかなければならないことがあるぞい。何度か結界の外に様子を見に行ったんじゃが、このエリア4では見たことのないモンスターがうろついておる。何かを探しているようにな。」


「お主たちが倒したガジュラとは、おそらく結界戦争の八大将軍じゃろうて。あの戦の時に、確かに倒したはずなのじゃが・・・。なぜ今頃になって、その姿を現したのかは謎じゃぞい・・・。」


・・・


・・・


「えっ!今なんて?倒したって・・・、おじじ?」


ミナさんが問いかける。


「ほっ、ほっ、ほっ、ワシは結界戦争で戦った、とあるパーティーの生き残りじゃよ。八大将軍ともよう戦ったもんじゃて。」


・・・


・・・


・・・


「ええええええーーーーーーー!!!!!!!」


僕たちは揃って叫ぶ。


「嘘よ!!!このエロジジイが!!!」


ユラさんが明らかに疑う。


「ないわ!絶対ないわ!」


ミナさんが首を振る。


「おじじ、嘘はいけない。」


シズクさんがムア爺をいさめる。


「お主ら!!どこまで人を疑うんじゃい!!おじじ寂しい・・・」


「でも確かに、エリア4にいる高レベルのモンスターに気づかれないような高度な結界を張り、一人で生きてるなんて、並大抵の実力じゃなきゃできない芸当だわよね・・・」


ユラさんが眉間にしわを寄せてムア爺を見る。


「では、少しだけ昔話をしようかの・・・」


ムア爺は、ゆっくりと甘い香りのするお茶をすする。


「結界戦争の話は、お主らも一度は聞いたことがあろうて。闇の軍勢が、ヒューマンの領地に進行して、それはそれは多くの犠牲が出たもんじゃ。ガジュラも、ベリエルという名のモンスターも、八大将軍の中におっての。恐ろしいモンスターじゃったわい。争いは壮絶を極め、ワシらパーティーは覚悟を決めたんじゃい。と言っても覚悟を決めたのは、ある冒険者じゃがな・・・。」


「ワシらは、強力な結界を張り、大陸を真っ二つに分断することにしたんじゃい。ヒューマンはヒューマンの領域、モンスターはモンスターの領域でお互い生活できるようにとな。」


ムア爺はゆっくりとお茶をすすりながら続ける。


「あの大樹木は、ある冒険者、精霊魔法を使う女魔導士、アイラ・・・。アイラ・エルフィードがその身を犠牲にして召喚した神樹なんじゃ・・。彼女はエルフ族で、それはそれは絶世の美女での・・・。もうムチムチ!ナイスバディ!最高クラスの森の精霊使いじゃったよ。」


コホンと咳を1つして、ムア爺は続ける。


「そしてもう1人、結界を張るのに力を尽くした奴がおる。八大将軍の1人、黒龍こくりゅう将軍ベリエルじゃ。はじめ、奴はワシらの敵じゃったんじゃ。しかし、実はの・・・アイラも、ベリエルもお互いの種族が共存して生活できる世界を望んでおったんじゃ。征服よりも共存ってやつじゃの。ベリエルは己の魔力を全て神樹に注ぎ込み、そして大樹木を起源とした、大陸を横断する深淵の大樹海を作ったんじゃい。」


大きく息を吐きながら、ムア爺は続けた。


「アイラの精霊魔法と、ベリエルの闇の魔力が融合し、モンスター、ヒューマン、どちらもお互いの領域に踏み入ることができない、光と闇が融合した結界が完成したわけじゃ。これがこの大樹海の真実じゃよ・・・。」


「アイラもベリエルも命を落としての・・・。ワシは2人の良い友人じゃった・・・。じゃからこうしてこの樹海に住み、長年見守っていたわけじゃ。」


「しかし、お前さんたちも知ってるように、モンスターが樹海に出現するようになってきておる。昔は雑魚ばかりじゃったんじゃが、段々と強力なモンスターも出現しておる。そして身を潜めていたガジュラの出現・・・、ベリエルと同じような魔力を使うと言われた小僧・・・。」


ムア爺は、僕の方をチラリと見つめる。


「この結界に何かが起きているのは事実じゃろうて。そしてそこの小僧も、何かしらの関係があるのかもしれんの・・・。」


「きゃあっ!!!!」


「もう・・・1回死んでこい!」


ビシッ!!!


ユラさんのお尻を撫で回し、脳天チョップを喰らうムア爺。


「真面目に話しなさい!!」


ユラさんに怒れて、頭を撫でながら続ける。


「残念な話じゃが、お主らは、もはや巻き込まれてしまっておるじゃろう。ガジュラを倒したヒューマン、不思議な魔力をもつ小僧。エリア4に出現したモンスターは、おそらくお主らを探しておるのじゃろう。お主らは、なんとか奴らに対抗できる力を身に付けなければいけないのではないか?」


ムア爺は、僕たちの方に真剣な眼差しを向けた。


「生きるためにのぉ・・・」


・・・


・・・


場が静まり、ムア爺のお茶をすする音だけが響いた。

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