第5章:魔獣ガジュラ

第20話:Tバックと野宿と作戦会議

ここは"深淵の樹海:エリア3"。


僕たちはエリア1、エリア2を最短ルートで抜け、エリア3の深い森林にたどり着いた。エリア3ともなれば、それ相応に強いモンスターと遭遇する。


しかし、運よくそれほど強いモンスターと遭遇することなく、僕たちは森林を突き進むことができた。


森林を抜けると、目の前には大きな岩山がそびえ立つ。


冒険者組合から購入した樹海の地図を見ると、この岩山がエリア3とエリア4の境目のようだ。


辺りも暗くなってきたため、夜に岩山を越えるのは危険であると判断し、今晩はここで休息を取ることにしたのだ。


手分けして辺りを探索すると、一晩キャンプをはるにはちょうど良い洞窟と、脇を流れる川の一部に、なんと!源泉が沸いているのを発見した!


源泉を発見したことを3人に伝えた時の喜びようと言ったら・・・。


「シト、褒美に一緒に入るのを許可する。ただし目隠し付きだ。」

とユラさんがメガネをキリッと掛け直す。


「背中を流してやろう。我が弟子よ。」

シズクさんが弟子として認めてくれた。


「私の全部を見てーーー!!!」

うん。ミナさんは、平常運転だ。


女性陣のテンションの高さは最高潮に達し、僕へのアタリもとても優しかった。


それはさておき、夕飯の調達は僕とシズクさんの役割だ。

ちなみにユラさんとミナさんも、食べれそう果実や木ノ実を探索しに行った。


川に着くと、ここぞと言わんばかりに、タンクトップと、Tバックのみの姿になったシズクさん。


・・・


目の前では、前かがみになって魚を狙うシズクさんの突き出たTバックのお尻が丸見えである。


これは・・・


魚を取るどころか、シズクさんのお尻に目が釘ずけになってしまう。


ダメだ!ダメだ!魚に集中だ!!


魚めがけて、川に勢いよく手を突っ込むが全く獲れない。


ふとシズクさんの方を見ると・・・


ビシャッ!ビシャッ!!


シズクさんが川に手刀を放つ度に、Tバックのお尻が揺れ、魚がキレイに空を舞って川辺に放り出される。


「一体なんなんだ・・・この人は。」


僕も負けじと、魚を追う。しかし、一向に魚が獲れない。


「気配を消す。魚の動きを読む。力ではなく呼吸と一瞬のスピードが大事。」


顔をあげると、シズクさんが近くにきていた。


前かがみになってこちらを覗き込むように見つめるシズクさん。


タンクトップの隙間から二つの胸が、大きく揺れている。


「あっ・・・・、はっ!!はい!!!」


僕の鼻から鼻血かツーーーーと滴り落ちた。


「シト、また出ちゃってる。」


こちらをニヤニヤしながら見つめるシズクさん。


僕は、鼻血を止めるために上を見ながら、横目でシズクさんを見る。


濡れたタンクトップ、ウエストのくびれとむっちりとしたお尻の間に食い込んだTバック・・・。


ダメだーーーーー!!!!


「ずっ!ずいまぜーーーん!!!!」


僕はダッシュで川辺にあがった。


僕の釣果は0。シズクさんの釣果、十数匹・・・。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


夜もすっかり更けてきた。


焚き火を焚き、焼き魚と甘い果物でお腹を満たす。


4人で夕食を食べながら、ガジャラ討伐に向けて、作戦会議が始まった。

ユラさんの提案で、ここで改めて全員の武器や技、魔法などを確認することになった。


「みんな、自分の武器の性能や技、使える呪文などを話してもらってもいいかな。あの化物を屠るには、私たちの連携がかなり重要になるはずだから。」


ユラさんは、真剣な趣で話し始めた。


「まず、私から。クリスタルロッドと先に取り付けた魔力封印のクリスタル。私がなぜ冒険者ではなく、道具屋のパートをやっていたか・・・。それは、毎日毎日、このクリスタルに私の魔力を注ぎ込んでいたから。冒険で魔力を使わないで、このクリスタルに数年分の私の魔力を蓄積してあるわ。この魔力を全解放して放つ風魔法、"エアリアルバースト"。直径1m程度の魔力と大気が圧縮された球体を放つ、風属性の魔法よ。」


「あんた、なんて恐ろしいことを・・・。そんなバカみたいな魔力を一気に放出したら、あなたも無事じゃ済まないでしょうに!」


ミナさんが珍しく、真剣な表情でユラさんを見つめる。


「・・・・やっぱり、ミナにはバレちゃうか。そう・・・、その大気の球を制御する時に、私自身もその強力な風圧で無事では済まないでしょうね。」


「でも、それぐらいしないとあの化物には通用しないか・・・。対策は後から話し合うとして、私は・・・」


ミナさんは、一度、空を見上げて話し始めた。


「ふーーー、アナタたちには隠してもしょうがないわね・・・。私の秘密を教えるわ。私にはエルフ・・・、ダークエルフの血が流れているの。私の奥の手は精霊魔法。エルフ特有の能力、精霊の力を借りた雷の精霊魔法よ。ただし、私は純血じゃない。だから強力な精霊魔法を使うと、しばらくは魔力を無くして動けなくなるわ。精霊魔法を使った後の私は相当ポンコツよ。」


「どおりで魔法の発動が早いはずよね。薄々気付いていたわよ。」


「えへっ、隠していてごめんなさい。私はダークエルフのクォーター。だから、あまりエルフの尖った耳などの特徴は出ていないから、気付く人はそんなにいないのよ。」


えっ!ミナさんにはエルフの血が流れてる?どっ、どおりで超美人なはずだ・・・・。


話を聴きながら、改めてミナさんの美しい顔に見惚れてしまう。


「シズクはどう?」


みんなの視線がシズクさんに集まる。


「シト、あれを出して。」


シズクさんから預かっていた長い袋を持ってきて、中身である2本の刀を見せた。


「これは、私の一族に伝わる対の魔剣。雨音あまおとと"火凛かりん。雨音は、一振りすれば、水の魔力の刃を放ち、火凛は一振りすれば、火の魔力の刃を放つ。私は雨音を、シトが火凛を持つ。シトと、この長剣を扱うトレーニングはしてきている。」


「変わった形の魔剣ね。その力、かなりの戦力になりそうね。」


ユラさんは僕の方をみる。


「そして、シトは?」


「ぼっ、僕は特に何も!あっ、シズクさんから刀の扱い方を学びました!」


「シトは、カチカチ。」


シズクさんが答える。


「そうなのよねー。シトは本当に堅いのよねーー。でもその堅さが素敵よね・・・」


ミナさんが、指を口に当てて、艶かしい顔で僕を見つめる。


「前々から不思議だったのよね。なんかのスキルなのかしら?」


ユラさんが続ける。


そうなのだ。みんなとクエストをこなしている時にわかったのだけど、僕は耐久力に長けているらしい。


普通の剣士が受けたら大ダメージを受けてしまいそうな攻撃も、なんとか耐えているらしい。


「シトの堅さは置いといて、いかに強大なダメージを確実に当てるかよね・・・」


ユラさんが首を傾げる。


この後、対ガジュラの作戦会議はしばらく続いたのだった。


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