第15話:救いの手
「帰る場所がない・・・」
夜も更けたが、僕は大広場のベンチに座ってうな垂れる。
相棒は大きな荷物だ。
シズクさんの借金を肩代わりするために、自分の住んでいた小さな家を売った。前々からおばあちゃんの友達だった人から、売って欲しいという話があり正直迷っていた。
シズクさんの話を聞いた時、僕はその人に会いに行った。そして無理を言って、その日にお金を準備してもらったのだ。
なぜあんなことをしたのか・・・
その時は自分の気持ちを制御することができなかった。
ユラさん、ミナさん、シズクさんが止めるにも関わらず、僕は大胆な行動をした。
あまりよく覚えていないけど、すごく怒りが込み上げてきて・・・。いつもと違う自分になったような・・・。
「ふぅぅぅーーーーーー。」
座りながら、ガクっと肩を落とす。
「これからどうすれば・・・・」
「シト・・・・」
気がつくと、シズクさんが目の前に立っており、手をモジモジしている。
「シズクさん・・・、どうしたんですか?」
「今日はそのごめんね・・・。お金は必ず少しずつ返すから。」
「もう、何回謝ってるんですか!大丈夫ですよ!お金も気にしないでください!」
僕はシズクさんにできる限りの笑顔を返す。
「でも・・・泊まるところないんじゃ・・・?」
シズクさんがモジモジしている。
「よかったら・・その・・・うちくる? 私が今借りてる部屋も狭いんだけど・・・」
「・・・・・・・・・・」
「えっ!えっーーーー!シズクさんの家にですか?えーーーーー!」
「うん・・・こんな風になっちゃったのも私のせいだし・・・。」
かっ、かっ、かわいい!
なんだこのシチュエーションは!
すごく照れてるシズクさんが家に来いってーーー!
「だっ、大丈夫です!友達の家に泊まらせてもらいます。シズクさんも今日は色々疲れたでしょう。ゆっくりしてください!」
ほんとうは行きたい!
シズクさん家に行きたい!!
でも・・・でも・・・!
なんか弱みにつけ込むみたいで嫌だ!
「・・・わかった。明日とか泊まるところがなかった言ってね。」
シズクさんは手を振りながら去っていく。
「ふーーーーーっ、バカバカバカバカバカバカ!!」
再びうな垂れる。
しばしの沈黙・・・・
「こんな事だろうと思ったわ。」
声の方を振り向くと、ユラさんがベンチの側にある木に寄りかかっていた。
「友達なんていないくせに・・・。強がって。」
「ご存知でしたか・・・・」
「今夜はうちに泊まりなさい。部屋は余ってるから。」
ユラさんの優しさが身にしみて涙が溢れる。
「ユーーーラーーーさーーーん!!!!」
ビシっ!
「泣き止みなさい!その代わり変な事しようとしたらコ・ロ・スわよ!」
僕は泣きながら何度も頷いた。
ユラさんと二人で歩き始める。
「今日はかっこよかったぞ・・・。」
ユラさんが優しく頭をポンポンとしてくれた。
その優しさが嬉しくて、嬉しくて・・・再び涙を流す。
「かっこよかったぞ・・・。」
[第3章・完]
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