第11話:訓練!紐パン・リターンズ!

今日もシズクさんとの特訓だ。


せっかくユラさんとミナさんに夕食に誘われたのに・・・


二人とご飯食べたかった!!!


お店で並んで座る二人。いつものように二人の言い争いが始まる。卓上にのってしまう大きな胸。ついつい見つめてしまう僕・・・。


いかん!!!いかん!!!


そうだ!強くなるんだ!!


ここは、深淵の大樹海のエリア1の沼地である。


今日のクエストは、ポイズントードの討伐。


ポイズントード、前に全く太刀打ちできなかった相手だ。


沼地には10数匹のトードがおり、僕の気配に気づいたのか、一斉に顔をこちらに向ける。


「これまで教えたことやってみて。時間は10分。私はここでみている。時間オーバーなら罰ゲーム。」


「はい!!!!」


サラマンダーダガーを抜き、走り出す。


シズクさんに教えてもらうようになってから、僕のダガーの持ち方は逆手になった。自分の腕と刃を平行になるように持ち、トードの群に向かってダッシュする。


まだ僕を追いきれていないポイズントードの脇を素早くすり抜け、正面の飛びかかってきた1体を切りつける。


その反動を利用して、横から飛びついてくる一体を回転して切りつける。


毒の霧を吐こうとしている一体に、シズクさんがくれた飛び道具、"クナイ"を投げつける。


動きが止まった僕を狙って、飛びついてきた1体を蹴り飛ばす。


そして何体かのトードに囲まれそうになった時、大きく後ろにジャンプし、距離をとる。着地した瞬間にダッシュして、僕を見失っている左右の2体を連続して切り倒す。


「そう。視野を広くする。1体だけではなく、全体のモンスターの行動を見れるようにする。」


「まずは攻撃に当たらない。できる限り少ない動きで攻撃をかわし、次の動作に繋げる。そして囲まれないこと。距離を取り、すぐ詰める。詰めた瞬間に斬る。」


そうなんだ。


初めてシズクさんの戦い方を見た時は驚いた。


驚いたというか見惚れてしまった。複数のモンスターに囲まれながらも、攻撃が全く当たらない。


まるで踊っているかのように、攻撃をかわし、相手の攻撃をいなしながら、流れるように斬りつける。


まったく動きを止めることなく、一連の流れがあるように次々とモンスターを倒していった。


あの動きをイメージする。シズクさんの戦い方をイメージする。


ズボッ!!!


うわーーー!しまった、脚を沼地に取られた!!!


動きがっ!!体制が崩れてしまう。


1体のポイズントードの長い舌が僕の体に巻きつく。


「うっ、動けない!!」


まごまごしているうちに、1体のポイズントードが飛びかかってくる!


シュッ


ドスッ!!!


飛びかかってきた1体の頭にクナイが刺さり、仰向けに倒れる。


「甘い。戦う場所もしっかり把握する。」


シズクさんのクナイに助けられる。


僕はなんとか、身体に巻きついた舌を切り、その1体の頭にダガーを突きつける。


「はっ!はい!」


シズクさんの指摘に返事をしながら、残りのトードへ向かって走り出す。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ハア!ハア!ハア!


限界だ!!!!


トードを全部倒した後に、シズクさんとのマンツーマンの模擬戦が待っていた。


ちょうど、シズクさんの回し蹴りを食らって吹っ飛んだところだ。


吹っ飛ばされるのは何度目だろう。全くシズクさんの動きについていけない・・・


「ブハッーーーーー!」


大きく息を吐きながら、仰向けになって目を開けた時、


「うわーーーー!!!」


いつの間にか、シズクさんが僕の体をまたいで立っている。


「大丈夫?今のは結構いい動きだった。」


シズクさんが手を差し出す。


シズクさんの顔をみる。視線をずらすと、


「だい・・・じょぶでぇえええええ?」


パッ、パッ、パッ!パンツが!!


ミニスカートから伸びる網タイツと黒のヒモパンツが・・・とてもエッチなアングルで・・・


僕の目は釘付けになってしまう。


「あっ、あっ、、、、だっ、だいじょ・・・」


この後、僕が意識を失ったのはいうまでもない・・・


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(※シズク視点)


私の膝の上で眠る少年をみる。


うーん、力の加減が難しい・・・。


手加減はしているのだけど。


顔にかかった少年の髪をそっと耳にかけてあげる。


この顔の半分にかかる痣はなんだろう?


火傷ではなさそうだけど・・・


痣のある方の髪が長い。


「きっとイヤな思いをたくさんしたんでしょうね・・・」


シトの顔についた汚れを布で吹きながら彼の顔を見つめる。


「ハアアアアッ!」


シトは目を覚まして飛び起きる。


その後、私から遠ざかり、正座して土下座している。


「すいません!!また意識を!!!」


知っている。


ダメージというよりは、パンツが見えたぐらいで鼻血を出して気絶していること。それが可愛くて・・・ついついからかってしまう。


「フフッ。今日はこれぐらいにしましょう。お弁当作ってきたけど食べる?」


「おっ!おっ!お弁当ですか!!いただきます!」


シトの顔がパアアと明るくなる。


私の国の料理、蒸し饅頭である。肉と野菜のみじん切りをピリ辛味ソースで炒めて詰め込んだ肉饅頭。甘しょっぱい自家製のアンコを、大量に詰め込んだアンコ饅頭だ。


「はい。どうぞ。」


「いただきまーーーす!!!!」


両手に饅頭を握りしめて、バクバクと食べる少年。その食べっぷりに感心する。


「おっ!美味しいです!!!!モグモグモグ!」


私は彼に向かって微笑んでしまう。


ひとしきり饅頭を食べ終わったシトはとても満足そうだ。


この子は毎日ちゃんと食べているのか、少し心配になる。


二人の間に沈黙が流れる。


私は彼に1つの質問を投げかけてみた。


「仲間ってそんなに大事なの?所詮、仕事の付き合いでしょ?」


シトは、少し驚いたように私を見て、すぐ視線をそらした。


そして、何か考えている。


彼は考えをまとめたのか、ゆっくりと話し始めた。


「僕のパーティーの仲間も、もしかしたらそう思っているかもしれません。でも、彼女たちは僕にチャンスをくれた。ひとりぼっちの僕に笑顔をくれた。だから何よりも大切です。今、僕は守られてばかりです。でも、いつか必ず彼女たちを僕が守ってみせます。」


「そしてできることなら、彼女たちとずっと冒険したり、ご飯を食べたり毎日楽しく過ごしていきたい。」


「それが僕の願いです。僕は彼女たちが大好きですから!!」


まっすぐな目。普段は頼りなそうな子なのに・・・


「仲間か・・・」


「あっ、すいません!弱っちいのに生意気でしたよね。はははは。」


「ううん。いいと思う。」


私は首を降って、笑みを浮かべる。


私はシトから目をそらして、草むらを見つめる。


きっとあちらのお二人さんかしら・・・。


広場からつけられている事にずっと気づいていた。でも、殺気のようなものは感じられなかったから、特にどうもしなかった。


「さあ、いきましょう!」


帰り支度を終わる頃に、草むらの気配は消えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る