第3章:影のパートさん

第9話:訓練と紐パン!?

「ふぅぅぅ・・・今日も何もできなかった・・・」


今日はエリア2の湿地帯に生息する、ポイズントードの討伐。


ユラさんとミナさんは次々とトードを屠っていた。


僕はというと・・・


毒に犯され、トードに丸呑みされる始末。


ユラさんが助けてくれなければ、トードの胃袋の中で溶けていたことだろう。


「なんとか強くならないと・・・」


今夜は一人でクエストを受けた。


受付スタッフのティファニーさんがすごく心配してくれた。


でも、僕も強くならなければいけない。


受けたクエストは、エリア1の大樹海の入り口付近の調査。


夜の大樹海の定期的な調査クエストだ。


決められたスポットを調査して、特に大きな異常はないか報告するクエストである。


入り口付近の草原エリアを調査する。僕の腰ぐらいの草が一面に生い茂っている。


んっ!!


ガサガサ!ガサガサ!ガサガサ!


草原の中に気配を感じる。


何かいる・・・。


草原が風でサラサラと音を立てる。


僕はサラマンダーダガーを抜き、身構える。


その瞬間、


「ガルルルルッ!」


「グアッ!!!」


「ガルッ!!!」


目の前の草の中から大きな影が、3方向から飛びかかってきた。


「ウォーウルフ!!!!」


群れで狩りをする大型の狼のようなモンスター。


3体の奇襲を横に大きく回転してかわす。


息をつく暇もなく、その内の1体が着地と同時に、すぐさま方向を変えて襲いかかってくる。


サラマンダーダガーを一閃!


「ガルルッ!」


後ろに飛び、かわすウォーウルフ。


ドンッ!!!


ぐっ!!!


しまった!!


後ろから肩に食いつかれる。


「グルルルルルッ!」


正面の1体に気を取られすぎた!


寝転ぶ反動と同時にサラマンダーダガーを振り回し、肩に噛み付いた1体を振り払う。


しかし、体制を大きく崩したところを狙われる。


別の1体が僕に覆いかぶさる。


サラマンダーダガーと腕当てで、ウォーウルフの牙が僕の喉元に届くのを防いだ。


ウォーウルフの大きく開いた口と、鋭い牙が僕の顔にせまる。


「グルルルルルッ!!」


しまった!


動きを止められた。


これで別の奴に襲われたらまずい・・・・


慌てて左右を見渡すと、両サイドから1体ずつゆっくりと近づいてくる。


まずい・・・・・


やられる!


体に覆いかぶさった1体を、なんとか跳ね除けようとするが動かない!


「まずっ!まずい!!!うおおおおお!!!」


その時、


シャッ!!!!


ドスッ!!


体が急に軽くなる。


覆いかぶさっていた1体が力を無くし、僕の横に倒れる。


近づいてきた2体も、ナイフのようなものが刺さり、すでに地に伏せている。


その時、僕の目の前に大きな影が舞い降りた。


それは、黒髪のロングヘアを一つに結び、黒の短いタンクトップとミニスカート、黒マントを身に纏った美女であった。


仰向けになっている僕をまたいで立っている。


ん・・・


こっ、これは・・・・


「パッ、パッ、パンツ!!!」


僕の目の前に、パッ・・・


パンツが丸見えだ!!!


しかもほとんどヒモだ!!


これは、丸見え・・・・!


「大丈夫・・・?」


「あっ、あっ、あっ、ありがとう・・・・・ござい・・・」


プシューーーーーー!!!!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あれ・・・


なんだかやわからい・・・


目を開ける、だんだんと視界があってくる。


目の前には、吸い込まれそうな黒い瞳の美女が・・・・


「うわっ!!!!!」


ガバッと起きて、そそくさと美女から距離を置いて正座する。


「あっ、あのっ、助けてくれんですよね・・・。あっ、あっ、ありがとうございました!!!!」


僕は頭を地面に擦り付けてお礼をする。


「びっくりしたよ。いきなり血を吹き出して倒れるんだもの。」


「ずい・・・まぜ・・・ん・・・」


どうやら鼻血を出しすぎて倒れた僕を、膝まくらをして休ませてくれていたらしい。


鼻血を出した理由は決して言えない・・・・。


膝まくら・・・。


あのあたたかい感触は膝まくら・・・。


「私は、シズク。名前は?」


「はっ、はい、僕はシトと言います。今日はエリア1の調査クエストをしていて・・・」


「そう・・・。私も同じ。私はエリア2の調査の帰りで、偶然、君を見つけた。最近、モンスターが異様に凶暴化しているように感じるわ。」


「いきなり3体に襲われて・・・くっ、またダメか。」


悔しい・・・


強くなろうと思ってきたのに、また助けられてしまった。


「悲しそう・・・どうかしたの?」


僕は彼女にこれまでの経緯を話した。そして強くなりたいことも。


「剣術・・・教えてくれる人はいるの?」


僕は首を振る。


「仲間は魔導士です。それでも僕を強くしようと、色々と教えてくれるのですが・・・」


「ふ・・・ん。私でよかったら教えよっか?」


「えっ、えっ、僕に教えてくれるんですか?」


「ただ、私の剣術はこの国のものではない。それでもよければの話だけど・・・」


一瞬でウォーウルフ3体を屠る剣術。


細身の彼女の剣術は、華奢な僕にも合っているかもしれない。


「強く、強くなれるのであれば、ぜひお願いします!でも、なんで僕に・・・」


「そうね・・・なんであろう?」


「でも、私には君と同じくらいの娘がいる。もうしばらく会っていないけど・・・」


シズクさんはとっても寂しそうだ・・・。


「おっ、おっ、お願いします!シズクさんの剣術を教えてください!」


シズクさんと目が合う。


済んだ瞳。白くてキレイな肌。小柄で華奢な体。本当にキレイな人だ。


僕と同い年ぐらいの娘さんがいるなんて信じられない。


「わかった。私の剣術を教えてあげる。特訓がてらクエストを受けるわ。報酬は折半ね。」


「はい、よろしくお願いします!!!師匠!」


「師匠ではない!」


シズクさんの口元が少しだけ緩んだ。


よかった・・・。笑ってくれた。


「じゃあ、集まれる時は、女神像の前に21時に集合。10分待って片方が来なかったらその夜はなし。いい?」


「はいっ!!!!!」


シズクさんは、一度手を振ったかと思うと、すごいスピードで去っていく。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(※シズク視点)


夜道を走るシズク。


どうしたんだろう・・・


普段なら、こんなことしないのに・・・


助けるところまではよかった。でも、剣術まで教えるなんて私らしくない。


走りながら、物思いにふける。


あの娘はどうしているだろう・・・。


行方を探しているが、まだ見つからない。


でも、いつか・・・。いつかきっと探し出してみせる。


走るのをやめて立ち止まる。


私の心臓の鼓動が段々と早くなっていく。身体中に汗が湧き出てくる。


まずい・・・。


いつものだ・・・。


「ふーーー、落ち着いて・・・大丈夫。大丈夫だから。」


私は自分の胸の間を指でトントンしながら気持ちを落ち着かせる。


ふとしたタイミングで、昔の事を思い出すといつもこうだ。心臓が破裂するぐらいドキドキしてしまい、息ができなくなってしまう。


さっきの子、シト・・・。


なんだか、ちょっと放っておけなかったのよね・・・。


きっとあの娘もあの子ぐらいに大きくなっているもの。


私は星一つない、真っ黒な夜空を見上げる。


夜21時の待ち合わせか・・・


少しだけ心が踊る私がいる。

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