第2章:酔っ払いのパートさん

第5話:路地裏の出会いは刺激的!?

「ハァ!ハァ!ハァ!」


今日も人通りの少なくなったメインストーリーを走る。


また今日もユラさんに助けられてしまった。


というか、ユラさんがほとんど対象となるモンスターを討伐してしまった。


僕はというと・・・


キラービーという蜂型のモンスターの群に追いかけられ、何匹か倒すも逃げ惑うばかりであった。


ランニングの足を止める。


「ハアアア・・・・・・」


深いため息と共に、うなだれる。


「だめだ!だめだ!いつまでも頼ってばかりじゃ!」


顔をバシ!バシ!と叩いて走り出そうとする。


「ん??」


メインストリートを1本挟んで、柄の悪そうな男たちが意識のなさそうな女性の肩を担ぎ、裏路地に入ろうとしている。


とても周りを気にしながら、隠れるように路地裏に入っていた。


見るかに怪しい・・・・


こっそりと後ろからつけてみる。


路地裏を進んでみると、予想は当たっていた。


一番の大男が、女性に馬乗りになっている。


「なっ、何しているんですか!?人を呼びますよ!!」


大男はゆっくりと立ち上がり、僕の方に振り向いた。


「ちっ、何にもしてねえって!飲みすぎたこのお姉さんを介護しているだけだってー!」


両手を広げて説明する素振りを見せながら、こちらにゆっくりと向かってくる。


「まあ、そういうことだからよー!」


肩に手を置かれた瞬間!


ドゴッ!!!


「ごふっ!!」


腹部に強烈な痛みが走り、膝から崩れ落ちる。


その瞬間、


ドゴッ!!


顔に激痛が走り地面に倒れる。


もう一人の男に蹴られた・・・


その後は、ただただ激痛が走る。


3人の容赦ない蹴りから逃げられない。


「ちっ、くそ弱いくせに調子こきやがって!」


僕に捨て台詞を吐いて、女性に向かって歩き始める大男。


ダメだ。行かせちゃダメだ!!


「待・・・て、行か・・せ・ない」


必死に大男の足にしがみつく。


「ちっ、何なんだよ!お前はよー!」


3人に捕まり、また蹴りが飛んでくる。


イッタイイーーー!!


大男は、地に伏せている僕に唾をかけ、女性の方に再び歩き始めた。


「待てっ!!!!」


僕は残りの力を振り絞り、走って女性の上に倒れるように覆いかぶさる。


僕を引き離そうと、容赦なく男たちの蹴りが飛んできた。


頭を思いっきり蹴られ、視界が揺れる。


その時、声が聞こえた気がした・・・。


「君、とってもかっこいいわ。こんなクズどもはいつでもやれたんだけど・・ごめんね・・・」


「サンダー・・・・」


一瞬、光に包まれた気がした。その光と共に僕の意識はなくなった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ウーーン!」


少しずつぼやけた視界が開けてくる。


「ここは・・・・・・ ツッ!!!」


頭に激しい痛みを感じて頭を押させる。


確か・・・確か、昨晩襲われていた女性を助けようと・・・


「そうだ!!!あの女性は!!」


ガバッ!!!


体を起こす。


「ここは・・・」


周りを見渡すと、全く身に覚えのない部屋にいる。とても広い部屋だ。


そして王族が使うような豪華な装飾がしてあるベッドにいる。


非常に凝った刺繍がしてある床のカーペット。壁には、高級そうな絵画や美術品が飾られてある。


「ここは・・・・・一体どこなんだ・・・」


「目が覚めたのね。」


声をかけられた方に目を向けると、そこには金色の長い髪の褐色の女性が立っていた。


黒の薄いネグリジェからは、豊満な胸が溢れ出し、極めて面積の小さい下着が食い込む腰のくびれ。そして大きいお尻から伸びる綺麗な脚。


思わず口を開けたまま、その女性に見とれてしまう。


「フフッ・・・大丈夫みたいね!とっても元気みたい。」


彼女の視線が僕の1点を凝視する。


彼女の視線を追ってみると・・・


[シト]

「きゃあああああああー!!!」


シーツで体を隠す。


「フフフッ。思った通りかわいい子。私はミナ。ミナ・イージス。あなたのお名前は?」


「ぼっ、僕はシトです。あの・・・あなたは・・?ここは・・・?」


ミナさんが、僕が寝ているベッドの隣に座る。


とても甘い香りがする。


スケスケのネグリジェから見える胸にどうしても目がいってしまう。


彼女の顔が僕に近づいてくる。


彼女の言葉を紡ぐ潤った唇がすぐ近くだ。


「もしかして何にも覚えてないのかしら・・・」


「昨晩あんなにベッドで燃えたのに・・・。私にあんなことやこんなことしたこと・・・忘れちゃったの?」


「あっ、あっ、あの、何も覚えていなくて・・・すいません!!!何かしてしまったら謝ります!」


「フフッ、なんなら昨晩の続きをしましょうか?」


彼女が僕に覆いかぶさる。


彼女の顔が目の前だ。


そしてこのマシュマロのようなやわかい感触は・・・・


彼女の巨大な胸が、僕の胸に押し付けられる。


なっ、なっ、なんて柔らかいんだ!!!


そして彼女の手が、僕の内太ももをなぞってくる。


もう少しで僕の・・・・・・


もっ、もっ、


もう・・・・


ブシューーーーーーーーーーー!!!!!


「きゃあーーー!!!」


大量の鼻血から大量の鼻血が噴射された。


慌ててタオルで鼻血を拭き取ってくれるミナさん。


「もう、冗談よーーー!やっぱりとっても可愛いのね!」


「ずいまぜん!!!!」


「ご飯食べましょうか。お腹減ってるでしょう?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


モグモグモグ!


「美味しい!!!!!」


カリカリに焼かれた分厚いベーコンと、半熟卵の目玉焼き、そしてバケットと温かいミルク。


こんな、こんな朝ごはんを食べたは久しぶりだ!


誰かが作ってくれたご飯は、なんでこんなに美味しいんだろう!


「よかった!バクバク食べてくれるのをみると、作った私も嬉しいわ。」


朝ご飯を食べながら、昨晩の一連の出来事をミナさんが教えてくれた。


僕が助けに行った女性が、ミナさんだったこと。


昨晩はやけ酒をして、眠ってしまっていたようだと。


ミナさんが起きたのは、僕が男たちを引き止めていた時。


それから僕がミナさんの体の上でダウンした時に、スイッチが入ってしまったらしい。


男たちをボコボコにして、僕を自宅まで連れて帰り、看病してくれたらしいのだ。


「ありがとう・・・!私のこと守ってくれて・・・」


ミナさんは僕の目を見つめて改めてお礼を言う。


「いっ、いえ・・・なんのお役にも立ちませんで・・・」


スリットの入った黒のドレスに着替えたミナさん。相変わらずドレスからは大きな胸がこぼれ落ちそうだ。


「実はね・・・私はとある人の十三番目の妻なの。昨晩、数ヶ月ぶりに会えると言うから期待していたんだけど・・・。あのやろう!!やっぱりこれないとか言い出してね。一人でヤケ酒してしまって・・・。」


ミナさんは赤ワインが注がれたグラスを指でなぞる。


「十三人!!!そんなに奥さんがいるってことですか・・・?」


きっとミナさんみたいな超美人の奥さんが十三人いるってことか!なんと、羨ましい・・・。


「ふぅ・・・もう別れよっかしら・・・。そうだ!シトのことを教えて!何をしてる人なの?」


「はっ、はい!!」


僕は口に入ったバケットをミルクで流し込み、姿勢を正す。


「僕は冒険者をやっています。といってもまだ始めたばかりでして・・・。いつも仲間に助けられてばかりで・・・」


「そうなのね。仲間は何人いるのかしら?」


「女性が一人です!いちおパート契約ということになっていますが、僕の大事な仲間です!」


「ふーーーん、女性ね・・・冒険ね・・・」


ミナさんは何か閃いたようだ。ポンっと手を打った。


「シト君、お姉さんもパート契約してあげましょう!」


「えっ、ミナさんがですか!ダメです!危険です!」


「あらー。昨晩、男3人を倒した事、もう忘れちゃったのかしら?君の身体の傷を癒したのも私よ。ちなみに私は魔導士。しかも結構な上級だと思うけど?」


「ええええーーー!」


そっ、そういえば、あれだけ殴られたのに、身体が全然痛くない!


こんな素敵な女性が魔導士なのか・・・。


でも上級の魔導士ならなおさらだ。


「でっ、でもそんな人を雇うお金は・・・」


「報酬は気にしなくてもいいわ。今日はクエストに行くのかしら?」


ユラさんとお昼に噴水の前で待ち合わせをしている。


「はい、お昼に大広場の噴水の前で待ち合わせです。」


「オッケー。じゃあ、私もそこに行くわ。そこでパートの人とも話しましょう!」


「えっ、えっ、!」


ミナさんは、さっきまではとても落ち込んでいたように見えたけど、今はなんだか楽しそうだ。


でも、こればかりはユラさんに聞いてみないと・・・。


[シト]

「わっ、わかりました。ではまた後で話しましょう。」

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