第4話:初給料で何を買う?

冒険者組合の受付カウンターで、僕たちはクエストの報告をしている。


ピチピチの制服を来たメガネの女性スタッフが対応してくれた。今にもシャツのボタンが飛んでしまいそうだ。


ネームプレートには、ティファニーと書かれている。


「これが受注したクエストで、これがマンゴイーターの根です。」


モンスター討伐のクエストをクリアした場合、証明としてモンスターの一部を提出するらしい。


これもユラさんが教えてくれたことだ。


「はい、ちょっと鑑定しますね。少々お待ちください。」


ティファニーさんは席を立って、カウンターの奥に歩いていった。


その後ろ姿、ピチピチの制服のお尻に目がいってしまった。


ハッ!と我にかえり、何事もなかったようにユラさんの姿を探す。


ユラさんは、情報が張り出されている掲示板を、真剣な眼差しで見つめている。


ユラさん、何か探しているのかな?


「はい、確かにマンゴイーターの素材になります。苦労様でした!報酬の20,000バーツになります。」


いつの間にか席に戻ってきたティファニーさんが、机の上に報酬を置いた。


沈黙・・・・・


「あの・・・、どうかされました?」


「20,000バーツですって!」


僕はその金額の多さに驚いてしまった。


「はい、今回の報酬になります。」


「フフッ!もしかして初心者の方ですか。このクエストの報酬はこれぐらいですよ。わからないことがあればまた聞いてくださいね。お疲れ様でした!」


「はい!ありがとうございます!!!」


素敵な笑顔のティファニーさんに挨拶をして組合を後にする。


やった!やった!!!


すごい!冒険で稼ぐことができた!


本当にユラさんのおかげだ!

というか、ほとんどユラさんのおかげだ!


ユラさんと冒険者組合を出て、大広場のベンチに座る。


「ユラさん、今回の報酬です。どうぞ!!」


ユラさんは黙ってお金をみている。


「ギャラは折半でいいわ。はじめに決めた時給を引いたら、シトの取り分がないじゃない。」


「でも約束ですから!」


ユラさんは、僕の手から強引にお金を奪う。


そして半分を取って、残りを僕に渡した。


「ほら!これでいいわ。あなたがしっかり働いた報酬を受け取りなさい。」


「ユラさん・・・」


ユラさん!厳しいところもあるけど、やっぱり優しい女性なんだ。


「頑張ったわね!社長!」


ビシッと背中を叩かれる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(※ユラ視点)


シトと別れた後、私は考え事をしながら歩いていた。


「今日もあのモンスターの情報は掲示板になかった。あの異常な強さのモンスターはそう簡単に姿を見せないってことね・・・。」


「必ず・・、必ず探してやるわ・・・」


ふと自分の服がボロボロになっていることに気づく。


「あー、この服もうダメね。破けちゃってる。」


マントを覆い、体の露出を隠した。


「ユーーーーーラさーーーん!!!」


聞き覚えのある声に呼ばれて後ろを振り向くと、シトが全力で追いかけてくる。


「なんじゃい!あの少年は?」


目の前についたのでお約束の・・・


ビシッ!!!


「声がでかいんじゃい!周りの人の迷惑を考えなさい!」


「すいません!でも渡したいものがあって!」


頭をおさえながら話すシト。


「これ!服が破けちゃってたから、似たようなやつを買ってきました!」


そう言いながら、衣服を差し出す。


「あなた、こんなもの買ったら、今日稼いだお金がなくなるじゃない!」


「はい!!でも渡したくて!!」


嬉しそうに話してくる。


そういえば、あの人もいきなりプレゼントをするのが好きだった。そのセンスは微妙だったけど・・・。


少しだけ、昔を思い出して嬉しくなる。


洋服を広げてみると、少しサイズが小さめで、胸の上のところが丸くカットされている。胸の露出が目立ちそうだ。


これを私に着ろと・・・。


きっと女性に服なんかあげたことないんだろうな・・・。


「社長はこういうセクシーなのがお好みで?」


シトに広げて見せてあげる。


「あーーーー!ちがっ!すいません。その・・・女性の服は買ったことなくて・・・。」


ほれ、みたことか。


でも、久しぶりに洋服のプレゼントなんかもらったな。


「ありがとう・・・まあ、今度着てみるわ。そ・れ・よ・り、弱っちいんだから、今度は自分の装備にお金をかけなさい!」


「はい!」


モジモジしながら返事をする。わかってるんだかないんだか・・・怪しいところだ。


でも、本当に優しい子だ。


天然なところがたまに傷だけど、この子とパーティーを組めてよかった。


そんなことをふと思ってしまう私がいた。


「さあ、次も頑張りますか!」


「はい!!!」


夕焼けの中、二人並んで歩き始める。


なぜだろう。少しだけ・・・少しだけ心が温まる。


自然と口元が緩んでしまう私がいた。


[第1章・完]

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