第2話:初クエストは凄腕パートさんと共に。

「今は8時50分。さっきから1分経過・・・」


僕は大広場に設置されている時計台を見ている。


「まだかな・・・」


まさか!僕をからかう嘘だったのかも・・・。


いやいや!約束の時間は9時だ。


ギリギリにくるに違いない。


どうしても落ち着かずにソワソワしてしまう。


たくさんの人で賑わうストリートに彼女の姿を探す。


その時、遠くから一人の女性の姿が現れる。


「ユラさーーーーん!こっちでーーす!」


僕は嬉しくて、大きく手を振りながらユラさんを呼んだ。


ユラさんは僕の声に気づくと、早足でこちらに向かってくる。


「うるさーい!!人の迷惑を考えなさい!」


ビシっ!


「痛い!!!すっ、すいません!」


頭を抑えながらユラさんを見ると、その姿に僕の目は釘付けになった。


白のローブにスリットのはいったタイトスカートと網タイツ。

そしてピッチリとした上着で、豊満な胸がとても強調されている。


衣装が小さいのか、胸が大きすぎるのか・・・

どうしても二つの双丘に目がいってしまう。


改めて見ると本当にキレイな人だ。


「ところで、その後ろの大荷物は何でしょう?シトくん?」


「はい!色々と準備したら、こんな大荷物になってしまいました!」


ユラさんは、眉間をピクピクさせながら、僕の頭をビシビシと叩く。


「はい、やり直し。今回はそんなに厳しいクエストじゃないでしょう?」

「武器と回復薬と解毒薬以外は、サンダーさんに預かってもらってきなさい!」

「私の名前を言えば、預かってくれるはずです。」


「はっ、、、はい!!!」


僕はユラさんが指差すお店へとダッシュする。


そういえば、ユラさんは何歳ぐらいなのだろう?

僕はダッシュしながら考える。


無事に荷物を預かってもらい、ユラさんの元へ帰還する。


「預かってもらってきました!」


「はい、ではチャチャっと行くわよ!」


ビシ!


頭にチョップをされる!


「はい!!」


彼女の横に並んで歩く。


初めてのパーティー、初めての冒険、僕の心臓はいつになくドキドキしている。


(そうだ!何か話さないと!えーと、えーと。)


「そっ、そういえばユラさんっておいくつなんですか?」


しばしの沈黙が流れる。


「シーートーーさん!それは女性に聞いてはいけない質問なのではないでしょうか?」


ユラさんの目が釣り上げり、背中にはドス黒いオーラーが見えた気がした。


ハッと何かを思いついたようなユラさん。


「コホンッ!はい、シトくん、ユラ先生はいくつに見えるでしょうか?」


「ううっ、そっ、そっ、そうですね・・・・・」


ユラさんを改めて見つめてみる。相変わらずドス黒いオーラーが見える。


(ハッ!!これはっ!これを外してしまったら、大変なことになるのでは・・・)


「にっ、にじゅう、、、ななさい?ぐらいでしょうか?」


「27だとーー!!!」


ユラさんが声を荒げる。


しまった!!もっと若かかったのか!


怒られると思った矢先、ユラさんの表情が途端に明るくなった。


「はーい♪よくできました!さあ、行きましょう!」


ユラさんの顔に満面の笑みが溢れる。


はああああーーー、よかった!


ところで一体、何歳なんだろう・・・・。


「ところで君はいくつなの?」


ユラさんはこちらをチラッとみる。


「あっ、はい!僕は16歳です。」


「16歳!わかっ!!そういえばご家族は?」


「かっ、家族はもういません。孤児の僕を引き取ってくれたおばあちゃんがいました。でも、1年前に病気で死んでしまって・・・。だから今は一人です。」


ユラさんの表情が曇る。


「ごめん・・・・なんか余計な事聞いちゃったよね。」


「あっ!全然です!もう慣れましたから!気にしないでください!」


「それにやっとパーティーも組めましたからね!」


ユラさんは何か言おうとしたが、僕を見つめてふーと息を吐き出した。


ユラさんの真剣な眼差しが、とてもキレイで見惚れてしまう。


「そっか・・・じゃあ、独り身同士、仲良く行きますか!」


ユラさんの腕が、僕の首に回り、ヘッドロックされる。

ユラさんの柔らかい胸に顔が押し付けられる。


なっ!なっ!なんて柔らかいんだ!!


正直、女性の胸のやわからさなんて経験したことが・・・・


頭がクラクラして・・・・


もう・・・


もう・・・ダメ・・・だ。


ビシューーーーーー!


意識が朦朧となり鼻血が溢れ出してしまった。


「きゃーーー!シト!鼻血!鼻血がすごい!いっぱい!」


朦朧とする意識の中で、ユラさんの胸の柔らかさと、ユラさんの言った"独り身"という言葉が気になった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


やっと樹海に辿り着いた。


樹海までの道のり、何も知らない僕にユラさんは色々教えてくれた。


・樹海はそれぞれのエリアに難易度がある。

・難易度があがる程、出現するモンスターも強くなる。

・樹海の中には、かつて滅ぼされた王国の城や砦、または洞窟など、

 まだまだ未開の場所が多い。


そして、この樹海のマップを作成するのに冒険者が一役買っている。

冒険者たちは組合を通して、樹海の調査依頼を受ける。

そして、地形のマッピングや出現モンスター情報などを、成果物として

組合に報告する。報告された情報を組合がマップにまとめて、冒険者たちに

共有しているのだ。


しかし、樹海の中心にあるであろう"大樹木"にたどり着いた者は、まだ誰もいないらしい。


ユラさんはとても詳しかった。そして、ユラさんのことも教えてくれた。


ユラさんは、魔導士で風魔法を得意とするらしい。回復や援護魔法も使えるとのこと。


正直すごい人なのではないだろうかと思う。


それに引き換え、僕といえば、魔法は使えない。メイン装備はダガー。このダガーはおばあちゃんの肩身である。


ユラさんに聞いたところ、サラマンダーダガーと呼ばれるもので火の属性をもつ結構な代物らしい。


「さあ、そろそろね。シト、気を引き締めなさい。」


今回受けたクエストは、

「エリア1:食肉花"マンゴイーター"の討伐」


エリア1とは、樹海のまだ入り口付近のエリアで、それほど強いモンスターはいないらしい。


「はい!気をつけまっ、うわーーーー!!!」


足に何かが絡みついたと思ったら、そのまますごい力で空中に放り出されていた。


「うわーーーー!!」


下を見ると、巨大な花ビラの中央にある、大きな口が開いて、僕が落ちてくるのを待ち構えている。


「きたわよ!!」


ユラさんは、マンゴイーターに駆け寄り、ロッドを叩きつける。


ユラさんに殴られて吹っ飛ばされるマンゴイーター。


「うわーーー!」


ゴン!!!!!


「いたーーーい!!」


僕はマンゴイーターがいなくなった地面に叩きつけられる。


「社長、ふざけてると死ぬわよ!どうやら結構な数がいるみたいよ。」


気がつくと周りには10体ほどのマンゴイーターがうごめいている。


「はいっ!」


ツルのムチをかわしながら、1体を斬りつける。


僕が斬りつけた箇所から炎が燃え上がり、マンゴイーターを苦しめる。


よし!火属性の効果が効いている。


その時、ユラさんの声が響く。


「この者を守りたまえ!"風の守り手"よーー!」


「うわっ!!!」


不思議な緑色の光が僕の身体を包んだ。


「防御力上昇の魔法をかけたわ。しばらくこれでしのいでね!社長!」


ユラさんは、僕に向かってウインクしながら投げキスをする。


「フロート!」


その後、ユラさんも自身に魔法をかける。

ユラさんの体も光り、まるで飛ぶように高い崖を登っていく。


すごい!!そんな魔法が使えるのか!?


「んっ!? そう言えば頼むって何を!?」


「えーーー!!!一人でこの数を???」


マンゴイーターが僕の方にウニョウニョと集まってくる!


「うわ!!!」


「イテッ!!!」


「ぎゃーーーー!食べられるーーー!!!」


なんとかギリギリの状態で逃げ回りながら、ユラさんに助けを求めた。


「ユラさーーーん!助けてくださーーーい!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(※ユラ視点)


崖の上からシトとマンゴイーターの戦いをみる。


10体のマンゴイーターに囲まれながら、泣きながらダガーを振り回すシト。


その不恰好さがおもしろくて、思わずプッと笑ってしまう。


「ん?あれ?なんか耐えてる?」


マンゴイーターの攻撃を受けて、あの細身の身体なら吹っ飛んでもおかしくないはず。


しかし、その場で受け止めている。防御力UPの魔法はかけたけど、元々の耐久力が高いの?


「まあ、いいわ。こっちも準備しないとね。」


ロッドをしまい、両手を広げて呪文の詠唱を始める。


あの歳で一人ぼっち・・・


両親の顔も知らないの?


もう慣れたって?


「ウソね・・・」


「一人で生きるのは寂しいもの・・・」


「いくわよーーー!社長ーーー!エアリアルショットーーー!」


私は、崖の上からマンゴイーターの群に向かって風魔法を放った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕は必死にマンゴーイーターの攻撃をかわす。


必死に逃げ回っていると、上からユラさんの声が聞こえた気がした。


上を見ると、何個かの緑色の玉がこっちに向かって急接近してきた。


「うわあああああああ!!!!」


ドゴーーーーーーン!!!!


すごい爆風で体が宙に浮いたと思ったら、今度はすごい勢いで地面に叩きつけられた。


「ぐはああああああ!」


ユラさん、ひっ、ひっ、ひどい!!


朦朧とする意識の中、なんとか立ち上がり周りを見渡してみる。


すると、目の前でボロボロになったマンゴイーターの触手がユラさんに迫っている。


たっ、助けなければ!


「うおおおお!」


「ユラさん、あぶなーーい!!!」


ユラさんとマンゴイーターの間に間一髪滑り込み、走りながらマンゴイーターを斬りつけた。


マンゴイーターの奇声と共に、マンゴイーターの体液が辺り一面に撒き散らされる。


ドビュ!!!!!


「きゃああああああ!!!」


「うわっ!!」


近くにいた僕とユラさんは、白い体液を思いっきり浴びてしまう。


「何これ・・・!白くてネバネバしている!」


ユラさんの顔や胸に、大量の白い体液がかかってしまっている。


「いやーーーん!顔がベタベタするー!


その光景がとってもエッチで目が放せなかった。

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