空の狩人Ⅱ

黒い鳥の魔獣討伐から10分後、リラ、アリアの2人はブランシュ「ミラ島」の中心部である大都市「クチナシ」へと帰還していた。

ここクチナシは白を冠する地区「ブランシュ」の中心都市に辺り最も繁栄した都市である。名はブランシュの象徴であるクチナシの花と同じで、所々に黒地に白の刺繍を施されたクチナシの旗が設置され風に揺られている。街の中心部には魔獣と戦う専門、魔導士の集う魔導士協会ニーヴェアの本部が設置されている。

本部は街の建物とは少し造りが違い煉瓦レンガ造りではなく一部の地域でのみ採取される魔法鉄マナフェールと呼ばれる鉄で建造されている。これは、万が一にも魔導士による防衛ラインを超え魔獣が攻め込んだ場合の避難場所として簡単には破壊できない造りにするためである。


××××××××××××××××××××××××××××××××××


そんな特殊な鉄で建造された本部に2人は任務報告のためにやってきたのだった。

中には20個程の木造丸テーブルとそれに付属するようにひと机6つの同じく木造の丸椅子が設置されており、入口正面奥には受付と思しきカウンターが設置されている。

中に入ると丸椅子のいくつかには魔導士が座り皆それぞれ昼食を摂っていた。

受付カウンターには腕章をした20代半ばほどの茶髪の女性がおり、目の前にいる30代前半と思しき赤髪の男性と会話をしている様子がみてとれた。


「「ガルシア卿!!」」


2人はその男性の正体に気づくと男性に向かって走り出していた。

男性は2人に気がつくと女性との会話を中断し走ってきた2人を抱きしめた。


「よぉ!久しぶりだな2人とも元気にしてたか!」


「このとおりアリアも俺も元気です!!」


「ガルシア卿こそ地上探査の任務で怪我とかしてませんか!?」


「俺もこのとおりピンピンしてるよ!てか、ガルシア卿なんて呼ぶなよつれないだろ…」


どうやら3人は知り合いのようだ。赤髪の彼はルーカス・ラ・ガルシア侯爵…国という概念が滅んだこの世界で残った数少ない貴族家系の1つガルシア侯爵家現当主である男だ。

貴族という立場であるため2人は彼のことを「ガルシア」と呼んだのだが、彼自身にそのように言われ2人は顔を見合わせすぐさまこう呼んだ。


「「ルーカス!!」」


「よしよし、それでこそリラとアリアだな!」


「そういえばルーカスはお昼食べた!?まだだったらエマ様のご飯一緒に食べましょ!」


アリアははしゃいだ様子でルーカスを昼食に誘うのだった。


「いいのかよ、そんないきなり行っても…!?」


「いいよ、母さんも弟分のルーカスが無事に帰ってきたって分かると喜ぶだろうし。」


「そっか、そうだな!んじゃお邪魔するとしますか!!その前に、2人は用事があってここに来たんじゃないのか?」


「「あっ!?」」


ルーカスとの再会を喜ぶばかりに任務完了の報告を忘れていた2人を見て受付の女性は優しく笑った。


「ごめんなさいエミリーさん、受付の前で騒いだ挙げ句に報告まで忘れていて…」


「大丈夫ですよリラさんアリアさん、討伐ご苦労さまでした。」


謝るリラとアリアにエミリーと呼ばれた受付の女性は優しく丁寧な口調で返事をした。


「今回の任務は"第3種"《大翼の獣べスティア・ディ・グロッサアラ》26羽討伐のため報酬はこちらになります。」


エミリーは丁寧な口調でそう言いながらそれぞれ金貨10枚の入った袋を2人に差し出した。


「「ありがとうございますエミリーさん。」」


2人は差し出された袋を受け取るとお礼を言い、ルーカスと共に本部を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る