空の狩人

魔獣が出現してから300年の時が流れた…国という概念は滅び人類は5つの地区に別れそれぞれ1人の代表魔導士が治めることとなったのだ。

5地区はそれぞれ「色」で、地区内に存在する浮島は「星」で、浮島内の都市及び村は「花」の名で区別されている。


ここはその1つ「ブランシュ」。

「ブランシュ」は「白」の名を冠する地区で、大規模浮島1、中規模浮島3、小規模浮島3から構成されており大規模浮島「ミラ」に魔導士協会「ニーヴェア」の本部が設置されている。

代表魔導士の名は「ウィリアム・ホワイト」、平民の出でありながらもSS級に位置し3大魔導士と呼ばれるほどの存在である。彼は優しく穏やかで、そのため自地区民にしたわれる存在となっている。


××××××××××××××××××××××××××××××××××


ここはブランシュ「ミラ」南西部の上空、大規模浮島「ミラ」から数キロほど離れておりここから中心都市までは歩いて半日と言った距離だろうか…そんな中心都市からも離れた島の端っこに位置する上空に2人の青年が浮遊していた。歳は10代後半と言ったところだろうか…

1人は白髪に金色の瞳をした男性、体型は標準で身長は170cmと言ったところだろうか…左手には身長程の銀の杖を手にしている。

もう1人は黒髪に銀の瞳をした女性、体型は少し痩せ型で身長は165cmと言ったところだろう…彼女も同じく左手に銀の杖を手にしている。

2人は同じ黒のローブを羽織っており、左手には黒地に白の刺繍を施された腕章をしている。腕章にはブランシュを象徴する「クチナシ」の刺繍が施されているようだった。


「来たみたいだね…リラ。」


女性が男性に尋ねるような口調で話しかけた。


「そうみたいだね…早く終わらせて帰ろうかアリア。」


リラと呼ばれた男性は女性に対し返事をした。

彼らが見つめる先にはまだ距離はあるが黒い鳥のようなものの影が見て取れた。どうやら数は20羽程度いるようだ。

徐々に鳥たちが近づいてくると異様な事に気がつく、黒い体毛を持ったその鳥たちは1羽1羽が人1人分程の大きさで鋭利な嘴と鉤爪を持っていた。

これが魔獣だ…人類の生活圏であった地上を占領し人類の半数を殺戮した魔獣、どうやら彼らはこの魔獣を討伐するつもりらしい。


「アリア準備はいい?」


「もちろん!」


2人はそう言いながら右手を正面に向け魔法を放った。


「「 雷魔法 《雷帝の裁き》!! 」」


2人の詠唱と同時に黄に輝く魔法陣が黒い鳥たちの上空に描かれ、そこから数多の雷撃が雨の如く鳥型の魔獣たちに降り注いだ。

本来、魔法とは自身の目で見える範囲10メートル程度にしか発動できないもの、だがこの時点での彼らと魔獣の距離は200メートル弱あり本来は魔法が届かない距離である。そのため彼らは《魔法領域》と呼ばれる技術を利用し魔法発動の距離を拡張、更には単発であるはずの《雷帝の裁き》を《連撃》で繰り出すという高度な技術を駆使してみせたのだった。


「周囲に魔力反応はなし…どうやらいまの魔法だけで討伐できたようだね。」


「急な呼び出しでエマ様の昼食食べ損ねちゃったから早く帰って食べましょ」


「そうだね、あまり遅くなると母さんに"あの程度10秒で終わらせなさい!"ってドヤされそうだしね…」


雷撃が止むとリラは探知魔法を使用し周囲に撃ち漏らした魔獣が居ないかを確認した。

魔獣が居ないことを確認すると、2人はそんなことを話しながら浮遊魔法で都市部へと帰還するのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る