第13話 夫と別の人

私は怖くて、少しの間、その場から動くことが出来なかった。


「……!!」


夫がニヤリと笑ったのが見えた。そして、夫は追いかけてきた。自分にムチ打って、私も走り出した。来た道を自分の出せる全速力で走った。



(やだっ!やだっ! 来ないで!! 怖い、怖い!)


走り続けて目の前を見ると、行き止まりになっていることに気づいた。


(う、嘘でしょっ……)


壁はとても高くて、足を引っかけられるところがなく、のぼることが出来なかった。後ろを振り向いた。夫はすぐ目の前まで迫ってきていた。私は怖さのあまり、その場に座り込んで、出来るだけ離れるため、後ずさりしようとしたが、壁のせいでそれは叶わなかった。夫がナイフを掲げた。


「ユリ、アイシテルヨ」


そしてナイフを振りかざした。


「いやあああああああ!!!!」


私は頭を両手で抱えて、目を瞑った。

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