にちじょーへん!
きらきら☆ぺどふぃりあらいふ
「あぁん? 誰がペドだって?」
「お前だよ」
ちょっとイラついたような青年の声と、それに冷静にツッコミを入れる甲高い声。
とある休日、お……わたしこと日向 あおいの私室には、一人の青年が来訪していた。
「にしても、また一段と可愛くなったな!
「元の名前にちゃん付けすんな! いまのおれ……
「ぷぷぷ、自分で女の子らしい口調にしてんのwww」
「笑わないでよ!! もう……好きでやってんじゃないんだから……」
言いつつため息を吐いた。しばらくの間、妹やその友達とかに口調を矯正されていた成果がさっそく出てしまっている。今では一人称を自主的に言い直してしまうほどだ。……そうしないと幼稚園で変な目で見られたりするからってのもあるけどさ。
「つーかさ、幼稚園に通ってるってマジ?」
ゲラゲラ笑っていた友人……この姿になる前、同じクラスの友達だったロリコンのジローに尋ねられる。
「マジ」
言ってみたら、彼は額を抑えて。
「うわーいいなー」
「だからお前やっぱペドフィリアも混じってるって」
冷静に突っ込んだ。確か、幼稚園児とか小学校低学年くらいの子供に発情するのはロリコンじゃなくてペドフィリアである。
「いや、お前が言うなよ。どうせ幼稚園で幼女ハーレムでも開いてんだろ? 自称ロリコンの変態野郎」
「変態はお前もだろ」
「…………」
「…………」
沈黙ののちに――二人は大爆笑した。
『はははははっ!!』
さて。
「で、幼稚園ではうまくやってんのか?」
笑いながらジローが聞いてきた。こっちも笑いながら答える。
「うん。めっちゃうまくやってる」
「どんな感じなんだ?」
「えーっと……たとえばねぇ」
**********
「あおいちゃーん!!」
ある朝。いつも通りなのちゃんが俺の胸に飛び込んできた。
幼稚園のみんなはそれを笑いながら見ている。もはや恒例と言わんばかりに。
「ねーねー、きょーはなにする?」
「えっとね……つみきとかどう?」
「うん! じゃーいっしょにやろ!」
「だね!」
そう言って、二人で積み木を取りに行き。
「……あおいちゃん……ちー、でちゃった」
「わたしも……たぶん。せんせいよんでこよ?」
「ん! せんせー!」
そうしてわたしたちはおむつを替えてもらうのであった。
*********
「ちょっとストーップ!!」
「なんだよジロー」
「なんだその桃源郷は!!!」
「と、桃源郷!?」
話の途中で割り込んできたジローの言葉に、俺はちょっとびっくりして。
……でも、ただのロリコンペドからすりゃ桃源郷か……。ちょっと納得である。
「つーかさ、そもそもまず喋り方からほぼ別人じゃねーか。さっきのイメージに出てきた清楚系おむつ美幼女は誰だ?」
「いやあ、超キュートなスーパー清楚系デラックス美幼女だなんて……いやマジ照れる」
「盛ってねぇか!?」
なにを。聞き間違いかな。それはさておき。
「あとさ、お前とその……なのちゃん、だっけ? あの子との関係に百合の波動を感じたんだけど……もしかして、そういう気でもあるんか?」
「百合……何のことだ?」
いきなり花の名前なんか言って、どうしたんだろう。頭でも打ったのだろうか。
……なんだか別の意味もあったような気がするが、その意味を知るのは……己が身をもって知ることになるのは、それからあと数年後の話である。
「まあいい。続けてくれ」
「う、うん」
若干の違和感を持ちつつも、俺は話をつづけた。
**********
「うさぎさーんぴょーんぴょーん」
どうぶつさんたいそう。幼稚園における授業の一環である。ちなみに「動物さん体操」ではなく「どうぶつさんたいそう」なのもミソだ。……体操ってなんてよむんだっけ。
それはさておき。
「たのしいね、あおいちゃん!」
「うん!」
ぴょんぴょんしながら、わたしはなのちゃんと話していた。
「でも、ちょっと大変じゃない……?」
少し息を切らしていたのは、どうやらわたしだけだったみたい。まわりのみんなは元気よく……それこそ先生のお手本を無視して走り回ったり戦隊ごっこしてたり仲良く口喧嘩してたり。元気すぎるほどに元気で、果てしなくフリーダムだった。
それを意に介さず、なのちゃんは笑う。
「あおいちゃんちっちゃいからかなぁ」
「ちっちゃくないもん!!」
わたしはふくれっ面で抗議。……たしかになのちゃんのほうが少し背は高いけど。
「なのちゃんだってそんなにちがわないでしょ」
「でもあおいちゃんよりかはおっきいよ?」
「いわないでよー!」
手をばたつかせてわたしは抗議をつづけた。
そんな光景に、誰かが一言。
「……どんぐりのせくらべ」
『どんぐりじゃないもん!!』
ハモった。どんぐり呼ばわりとはなんと失礼な。
――あとで冷静になってから「どんぐりの背比べ」の意味を思い出して少しだけ赤面するのはまた後の話。
**********
「……一つ言っていいか?」
「なんでもどうぞ」
「お前、完全に幼女じゃん」
言われてしまったか。わたしは目頭を押さえた。
「幼女じゃないも……はっ」
「そのかわいいしぐさとか、わざとやってんだろ」
「んなわけないし」
「じゃあなんなんだよその可愛さ」
そう言われても……。
「まあ? わたしがかわいいのは? とーぜんのことですから??」
「誤魔化したな。本当はうれしいくせに。顔、真っ赤だぜ?」
からかうようにジローはニヤニヤと笑う。……どうやら表情は嘘をつけなかったらしい。
わたしはハッとして、しばらくの沈黙ののち照れを隠すように叫んだ。
「うっ、うれしくなんてないもんっ!」
――そういうとこだよ、とジローは心の中でツッコミつつ顔は思いっきり緩んでいたそうな。
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