第6話 旅立ち、仲間。


 会議は、無事終わったが。


 大切なのは、ここからなんだ。


 アフターケアこそ、重要になってくる。 


 それぞれの村の住人に話しかけたり、交流を深めるのに、労力は惜しまない。


 なにより、こういった事は、最初が肝心なんだ。


 それを疎かにすれば、いずれ綻びが生まれて破綻する。


 だからこそ、俺はこの後も村に滞在して、その後の経過観察を行う。指導も含めて。


そして、俺は衝撃の事実を目にする。

いや、冷静に考えれば衝撃ではないのだが、本当にあるんだ?と言う感想が出た程度だった。


 そうーーーー魔法だった。


 指導の最中に、狩りに同行した際に目撃した。


 そもそも、俺が気にしていなかっただけで、飲み水や火を起こすのも魔法で行っていたのだった。


 可愛い村人の尻ばかり追いかけていた俺にとっては、仕方ないと言わざるを得ない。


 魔法よりも魅力的だったのだから。


 いや、もしかするとその尻も魔法で俺を既に魅了していたのかもしれない。


 ともあれ、魔法を見たからには、俺も使えるのか?と期待したものの、結果は散々なものだった。


 無い物ねだりしても仕方ないので、諦める事にした。救いだったのが、魔法は全ての人が使える訳ではなかった事だ。


 それに、少しホッとした。仲間がいる安心感は他には変えがたいものがあった。


 そうして、観察の日々は続く中で、俺は1つの事に気付く。


 気付くと言うよりは、頭を悩ます。


 この先の事だった。


 村を出ていくにあたって、1人で行くのは余りにも無謀という事だった。


 まず、魔物を倒せない、魔法を使えない、金がないの役満クラスの雑魚人間である事。


 そんな人間1人が、ひとたび森に入ろうものなら、魔物の餌となり、その骨は土へ還るのが目に見えている。


 「はぁーー。どうしたもんかな」


 溜息も、溢れてしまう。


「どうしたんですか?ワタルさん」


ティアがちょこんと部屋に顔を出した。


「いや、これからどうしようかなと思ってな」


「これからと言うのは?村にいるんじゃないのですか?」


疑う事も無く、ティアは聞いてくるが。


「いや、俺は出ていくつもりだ。ここの村と同じような状況が他にもあるなら助けになりたいからな」


俺は、どこまでいこうとも、この仲裁人と言う仕事に誇りを持ち、続けていきたい意志がある。


例え、殺されるような事があったとしても、誰かを救えるならとーーー


「そうですか....それはいつなんですか...?」


悲しげな表情を浮かべるティア

しかし、別れは来るものだ、早かれ遅かれ別れの言葉は必要だ。


「村同士の交流もかなり上手くいっているから、もうそろそろと思ってるんだ。俺のやるべき事は既に終わっているしな」


「......そんな事、ないじゃないですか、みんなワタルさんに感謝してますよ?ずっと居ても誰も何もいいませんよ?」


「そうだけどな、ティア。俺は、助けれるものは助けてあげたいと思うんだ」


「............」


そこからティアが口を開く事は無かった。


それから数日と言うもの、気まずい日々を過ごす事になった。

ティアにすれ違うも、視線を避けられ、仕舞いには、会う頻度さえへった。

わざと避けているな?と思わずにはいられなかった。


そんな、モヤモヤとする気持ちは村を旅立つ日まで続く事になる。


当日、仲良くなった村同士の連中が見送りをしてくれるようだが、ティアの姿はそこにはない。


嫌われたもんだな...いや、惚れた男に逃げられて寂しいのか?良い男と言うのは困るぜ!とは思うまい。


「世話になったな。これからは、ちゃんと仲良くしてくれよ」


俺の言葉に、リゲルが先に反応する


「約束しましょう。あなたのお陰で、これからは平和に過ごすことができます」


「そうじゃな、これからワシらが争ってきた時間を埋めるように手を取り合う事にするからの」


笑い合う2人を見て、随分と仲良くなったんだなと感心した。

そして、周りを見ると別々の村の連中同士が並んでいたりと、交流はいい方向に進んでいるのが手に取るようにわかった。

いずれ、一つの村になるんじゃないか?と思う程だ。


 みんなからの激励を受けて、俺はついに

旅立つ事にした。


 本当は、仲間が欲しかったが、こればかりは仕方ない。

村の人を今更引き抜くのも、心が痛む。


だから、1人で行く事にした。


寂しいが、お別れだ。


俺は、なるだけ大きな声で、別れを告げる。


「じゃあ、行くよ!またな!」


さよならは言わないでおこう。

また会いたいからな。

俺は、踵を返し、新しい冒険へと進む。


「待って下さいっ!!!!!」


大きく、聞き覚えある声がする。

忘れる訳もない、ティアだ。


「わっ...私も...連れて行って下さい!」


大きな荷物を背負い、既に腹を括っている、そんな表情でティアは言う。


もしかすると、この前の話の後から、ずっと考えていたのか?と思うが、口にはしない。


俺は、もう既に決めているんだ。


と言うか、即答した。


「おう」


「え....?」


「ん?どうした?」


はてな顔をしているティアだが、もしかして断られるとでも思ったのだろうか?


そもそも、こんな天使に誘われて断る男など、世界の果てを探してもおらんだろう。


俺もその中の1人だがな。


「いえ、断られるかと...」


やはりかーーならば


「俺は、1人で行くつもりだったが、心許ないのはわかっていたからな、それにティアが居てくれたら、安心するに決まってるのに、断るわけないだろ?」


「ーー!!!」


俺は、そっと手を伸ばし、ティアを導く。


「ほら、行こうぜ」


「は、はいっ!」


 こうして、俺は、なんとか即死する事なく、次の場所へと進めるようになった。

 実は、心底ホッとしている。

それは内緒の話。

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異世界チート?いやいや、戦うより平和的に解決しようぜ? 無気力0 @horinsdakara

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