第4話 始まる会議。
翌日、昨晩の余韻を脳裏に感じながら気持ちよく目を覚ます。
そして、朝食までご馳走になる。
偉い気に入られた物だなと少し喜びを感じ、これからの話し合いが上手く解決する予感を感じられずにはいない。
しかし、俺もそこで気を抜く様な人間じゃない。
遠足は帰るまでが遠足の様に、これも話し合いが終わるまでが遠足なのだ?
いや、遠足では無いがな?こうしてもてなしてもらってはいるが....それはさておき、楽しい会話をしつつも、明日の会議の為に、ひと足早くエンス村に戻る事にした。
村に戻ると、皆が驚く様な表情を浮かべて、その帰還を喜んでいた。
そして、誰よりも早く駆け寄ってきたのはティアだった。
「無事だったんですね!とても心配してました」
その瞳には、涙が溢れる程とまではいかないものの潤いを感じられる。
そして、何故か手まで握られて労いを受ける。
無意識にやっているのだろうが、破壊力が高い、油断せずとも惚れてしまいそうになる。
いや、惚れているのかもしれない。
元来、恋とはいつのまにか落ちる物と言うくらいだ。
俺も既に恋に落ちているのかもしれない。フォーリンラブしているのかもしれない...
ーーーー冗談だがな。
「無事で、何よりです」
水を差す様に、村長からも労いを受け、そのタイミングでティアの手は離された。
その時の顔はおそらく今生の別れの様な顔をしていたに間違いない。
クソ村長め!と言いたくなるが、そっと心にしまう事にした。
「とりあえず、話し合いをする事になった。それは明日だけど大丈夫だろうか?それとーー」
「ええ、大丈夫です。あともう一つは、今日中には完成するはずです。完璧とまではいかないと思いますが、見れば納得してもらえるとは思います」
「なら、出来上がり次第、確認させてもらってもいいか?」
「わかりました。では、出来上がりましたら、伺わせてもらいますね」
そういい村長はその場を後にし、それからは村の連中に背中を叩かれ「死んでなかったんだな!にぃちゃん!わはは!」などと縁起の悪い事を言ってくる奴も居たが、無事帰ってきた事を称えてくれた。
「いい人ばっかだなここは....」
「そうでしょう?自慢の村なんです」
つい、心で思っていた事が口に出ていたみたいでティアに聞かれてしまっていた。
「あっ、つい、口にでてしまった」
「ふふふ、心の中でもそういう風に思えるなんて、ワタルさんは素敵ですね」
スーパーナチュラルな笑顔が、俺を迎える。
防御力無視の精神攻撃は俺のHPをマイナスの領域まで刈り取ろうとする。
その振り切った笑顔の破壊力に、目を逸らす以外に生存の道はなかった。
「どうして、目を逸らすんですか?」
追い討ちをしてくるティア、逃げる物を死の淵まで追い続けるつもりか?
恋と言う名の奈落に突き落とすつもりなのか?
だが!しかし!俺、そんな簡単に落ちる男ではない!攻められた時は相手は防御出来ないのだ、ボクシングに置いても、カウンターが有効なのは、攻撃の最中に防御はできないからだ!つまりヒットすれば大ダメージだ!
俺は、覗き込んでるティアの頬を、そっと両手で押さえて、自分が持てる最高の声を発する「好きになってもいいのか?」となっ!
「あっ...えっ...」
モジモジしながら耳も頬も紅潮させているティア
(ふっ、勝ったな)
と、14歳限定で乗れるロボットアニメの司令官並の確信がそこにはあった。
敗者のティアは、恥ずかしそうに照れて見せて、その気まずさを隠す様に逃げて行った。
官軍となった俺は、残りの時間を勝利の余韻に浸る事にした。
日が暮れ、その報告は遂に来た。
「おお、想像以上のできだ」
そう、俺が村を出る前に、頼んでいた物の1つが、これである。
「昨日、ワタル殿がクルス村に向かわれてから直ぐに取りかかりました。それに、長い間、ここで狩をしてたので、そこまで苦労はしませんでした」
そう、「地図」だ。これの製作を頼んだのだ。
これが、無ければ話にならないからだ。これが有るからこそ、話が始められた。
こっちの村には地図があり、それを元に狩をしていると言う事実が今、現実に変わったのだ。
「で、話し合いの事なんだが、俺は2つの村で狩り場を分けるのではなく、村同士で協力すればいいと思っている」
「どう言う事ですかな?」と村長は首を傾げながら答える。
「狩り場を分け合えば、狩の途中で相手側の狩り場に入ったりした時に、またいざこざが起きる可能性がある。なら最初からそれを無くすべきなんだ。2つの村の合同で狩のグループを作り、それを公平に分け合うべきだと思う」
頷く村長に俺は続ける
「ここで、大切なのは『公平』と言う言葉だ。これは単に取った獲物を半分にする事じゃなく。村の規模、人数によってその量を変化させる事だ。仮に、10人の村と20人の村で、そこから5人ずつ狩に行って、9匹の獲物を獲得したらどうする?」
「そうですね、普通でしたら4.5匹ずつになりますね」
おぉ、計算は出来るのかと少しホッとする
「それうなると、10人の村は、十分な食料を得られるが、20人の村は苦しくなるだろ?そうならない様にするのが『公平』って事だ。
こう言う場合は、10人の村には3匹、20人の村には6匹渡すんだ。
そうすれば、1人当たりの量は同じになる
計算が細かくなった時は、他の物を与えて相殺すればいい」
「なるほど、公平ですか。悪くないですね。と言う事は、村の人数をそれぞれ正確にする必要がありますね」
「そう言う事になるな、それはお互いの村の代表を選んで、それぞれが別の村の人を数えれば不正は出来なくなる。そして、自分達でも数えておくんだ。その数字が合えば、まぁ間違いないだろう。それを使えば、木のみや、草の回収もなんとかなるだろう」
村長は、この話に理解を示して頷いてはいたが、同席していた連中は、うーんとか言いながら苦しんでいる者もいた。
しかし、それも慣れればすぐ分かるだろう、村の規模もほぼ同じならば、基本的に二等分になるからな、それを見越しての提案だった。
まぁ、でも確かに若干の教育は必要なのかもしれないから、村の中でこの話を理解できる人も選出すれば何とかなるだろう
後の細かいのはお互いに話し合って決めれば良いと思っている。
最後まで、俺が間に挟まってたら村の為にならないからな。
それに、せっかくの村が近くにあるんだから、喧嘩するなら協力し合えたほうが、いいに決まっている。
そして、もう一つ、必ず決めておかないといけない事がーーー
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