第2話 小さな争い。

こっちに来て数日が経ち、村の人達とも交流を図りながらそれなりの日々を過ごしていた。

 しかし、争いは直ぐに始まる事になった。


「ワタルさん、隠れて下さい!」


ティアが、慌てた剣幕でいった。


「何かあったのか?」と聞いてみれば、近くの村と狩り場で鉢合わせして、それぞれ自分達の狩り場だと主張を繰り返し、村同士のいざこざが起こったのだった。


「なんだそれ....」


そんな事で殺し合いに発展するのか?と頭を抱えたくなってしまう。

しかし、生きてく上で食料の確保は必須であるのも間違いないのだが、それでも話し合いで済むんじゃないのか?と思ってしまう。

それなら、滞在させて貰っている恩を返すチャンスじゃないか、俺は、不敵に笑みを浮かべて


「とうとう来たか、この時がっ!」


「ワタルさん、隠れて下さい」


相変わらず、ティアは冷静だった。

が、俺はその願いを聞き入れる事は無い。

こと、争いに関して言えばプロだと自負しているのだ。

自信家であるものの、その実力は本物なのだ。


「ティア、村長の所に連れて行ってくれるか?この争い、俺が終わらせよう」


「無理ですよ!ワタルさん戦えないですよね?危険です!」


「武器を取ることだけが、争いを終わらせれる訳じゃないんだよ」


ティアは、この人は何をいっているんだろう?と言う表情を浮かべているが続ける


「だから、村長の所に連れて行ってくれ。武器がなくても大丈夫だ」


納得のいかない不満顔を浮かべながらもティアは承諾して村長の元へ向かった。


村長の元へ向かうと、数人が集まり何やら話をしているようだった。

村の外には既に他の村の連中が集まっており、それに対面してエンス村の連中は武器を構えている。その均衡は、いつ火蓋が落とされるかわからないような、緊張の糸がピンと張り詰めていた。



「村長!ちょっといいか?」


その張り詰めている空気を物ともせず、俺は口を開く。

しかし、待ったをかけるように村の連中が口を挟む


「おい!今はそれどろこじゃないんだ!」

「そうだ!!よそのもんは引っこんでな!」


蚊帳の外の扱いだった。

身の危険を案じてくれているのか、はたまた本当に今は邪魔だと思っているのかーー

この連中の焦りようを見れば、後者で有るのは間違いない。だから一石を投じる。


「無傷で、俺なら終わらせれる」


ワタルの言葉に、そこに居る全員が反応をみせる。

そして、見た目は40代後半ぐらいの、体付きは、それほどではあるがしっかりと肉は付いていて、優しいであろう性格が顔にまで滲み出ている村長が口を開く。


「どう言うことかな?」


「いや、なにこれから連中とやり合おうって言うんだろう?それなら怪我人は少ない方がいいんじゃないか?それに俺はここの人たちに助けて貰った恩があるから、返したいと思ってる」


村長は、ふむと一考するものの「そんな事が可能なのかな?」と、その方法に予想つけられずに不安な表情を浮かべる。

周りの連中も、そんな事無理だなんだと続く。


「別に、誰かを引き連れて行こうって訳じゃない。俺が1人で敵のところに行く。それで解決してくれば問題ないだろ?誰にも迷惑がかからない危険な目に遭うのは俺だけだ」


「なるほどね、もし本当にそれが可能なら私達は、大きな恩を返してもらえるかもしれないね」


「だから、まず村長と少し話がしたい。いいか?」


「わかった。そうしよう時間は限られて居るからね」


「まず、この周辺の地図が見たいんだが、用意してもらえるか?」


「そんなものありませんよ」と村長は言う。


つまるところ、この村には地図がなく、適当に今まで狩りをしていた場所に入り、狩を続けて居たと言う事だった。

それは、向こうの村も同じかどうかはわからないがエンス村と規模がかわらない相手の村ならばその可能性は高いと感じる

そして、争いは魔物の狩りだけではなく

木の実や草の採取でも度々起こるのであった。

村同士のルールと言うのが全く存在していないのだ。

(そりゃ、喧嘩になるわ....)

しかし、これならば恐らく簡単に話は着くと確信した。


そして、話は終わり村長にはあるものを用意して貰った。

それと、もう一つ急いで取り掛かって貰う用件を告げたーーー



「今はこの位しか用意できなかったけど、大丈夫なのかな?」


不安げな表情を浮かべている村長、もしかして俺の心配をしているのかもしれない。

数日ではあるもののこの村、滞在していた人間が死んでしまったら寝覚めが悪くなるのかもしれない。


そして、受け取りを済ませ

村の外にいる連中に向かう


「この中に、リーダーはいるのか?」


俺は、連中に声をかけると1人の男が「俺だ」と反応を見せ、目の前にやってくる。


大柄な筋骨隆々の男は、手に大きな斧を携えている。

力技には持ってこいのその体格に、少しばかり緊張が走る。


「戦いに来たわけじゃない、君達の村の村長と話がしたいんだが、無理だろうか?」


渡したいものもあると手荷物を見せる。

男は、こちらの顔を覗き込むようにしてジロジロと視線を下から上へ、そして荷物へと動かす。


「どう言うつもりだお前?」


「それは、村長の前でちゃんと話すことにするよ。それに、行くのは俺だけだし、武器も持ってない。最悪殺せばいい」


俺は、手を上げながら戦闘の意志がないことを、身を挺して表す。


「それに、今戦えば人数が不利なのは君達の方だろう?エンス村の人間が皆でやり合えば全滅するのは君達じゃないか?」


まぁ確かにな、と男は言い。

少し間を開けてーー


「まぁ、いいだろう。ついて来い」


意外にも、物分かりがよく

この提案に乗ってくれることになった。

一先ずは、安堵できる事になった。

そして、いざ向かう事になり振り返ってみるとエンス村の人達は、村の前に集まっており

ティアもその中にいた。

手を体の前で合わせて祈るような姿をしていた。

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