第2話 通知書の続き

『アリア・マーフィー様

 前略 あなたは、特定第3号(2)権をお持ちになったことを、ここで証明します。

 今回の権利の付与は、あなたのお母さまの素晴らしい功績を称えたものです。』

「母さん..」

 母さん————リリーは科学の研究者、だったっけ。

母さんも天界うえに行った中の一人だと父さんから前に聞いた。

 もう行って13年。早く帰ってこないかなぁ。

 天界と地上の行き来は自由だと父から聞いたことがあるが、きっと噂だろう。

 父さん————ルイは音楽家で、音楽家含む芸術家の天界への立ち入りは原則禁止されている。例外はそのたちが音楽を嗜む時だけだ。

 そんなことを考えていたら折りたたまれた残りの三行があるところに気づいた。

『特定第1号権、(1)一般人の往来を許可する。(無期限)

        (2)同(期間を限定とする。)

 特定第2号権、芸術家の往来を許可する。(期間を限定とする。)

 特定第3号権、(1)希望する世界へ転生(回数無制限、記憶有)

         (2)異世界へ転生(単発のみ、記憶有)』

「異世界転生…!!」

 天界の創立者————リチャード・ミラー。彼は一体何を考えているのだろう。

 人口120億人分のデータを毎日見ているはずなのに。そこには個人情報や本人の性格がびっしりと掲載されているはずなのに。

 私は「異世界転生」という言葉をことごとく嫌う。流行ったのは60年ほど昔、らしいが。今でも少し流行っているのだ。異世界転生ができるのは天界の人間、しかもごくわずかな人間だけなのだ。この権利が与えられるのはいいことなのだろう。

 だが、この権利を行使するということは、母さんのような科学者がするタイムトラベルの応用実験の実験台になるということだ。

「こんなの、こんなのいらないってば!!」

 私はひどく激怒した。ここまで、一般人したのひとを利用するとは!

 しかし、よく考えれば、これは「権利」であって、「義務」ではない。

 私は少し気が楽になった。


 ————————————————

 少女はなぜここまで激怒したのか。それは父親にきた同じような手紙のせいだった。


————————————————

2020/4/29

筆者)リリーのしている研究が医学ではなく化学っぽいので変更しました。

2021/01/17

筆者)リリーのしている研究が化学ではなく科学っぽいので変更しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る