第6話 あらすじ

 昔々、全ての大陸が一つに繋がっていた頃よりもずっと昔の話。後に神と呼ばれる者たちは、大陸のとある土地に息を吹きかけました。

 神の吐息は風となり地上を駆け、風は空気を運びました。空気は温度を運び大地を温め、大陸に小さな木の芽が生えました。

 小さな芽が風に揺られ、神は愛おしさから涙を溢します。涙は芽にかかり、芽は大木に育ちました。大木はかつて溢れた神の涙を拭く為に高く葉っぱを広げ、大地に落ちた涙を返す為に根から吸い上げ空に返そうとします。


 大木は雲を貫き、天に枝葉を届かせました。土塊から産まれた者たちは大木を特別な名で呼び、その下に集い生活しました。

 土塊が人と呼ばれるようになる頃、大木の恩返しに合わせて人は祈りを捧げるようになりました。幾つかの種族との衝突を繰り返し、幾たびの火の手が伸びましたが、それでも大木は揺らぎません。


 やがて大木の恩返しが叶う頃、神は久方ぶりに地上の様子に気がつきました。凄惨な人々の苦しみに、神は悩み、大木を通じて一つの贈り物を与えました。

 “天授の知恵”と呼ばれる果実を実らせ、大木は平和の象徴として奉られました。人々は争いの愚かさを知り、手を取り合う生き方を選んだのです。


 己が為の祈りは主への感謝に捧げる祈りへと変わり、全ての人が果実を食した頃、その平和が気に食わなかった悪魔が地上へとやってきました。

 手始めとばかりに悪魔は雷雲を喚び、紫煙のような禍々しい雲が大木を覆いました。降り注ぐ雨は人々の姿を変貌させます。姿を変える目の前の相手を目の当たりにし、人々は再び疑心暗鬼に囚われる。不和は不信を招き、『大木にだけ掛かる晴れない紫の雨雲』は新たなる争いの火種へと変わり、大木に燃え移りました。

 その下に集っていた人々は、1人また1人と旅立つように離れていき、特別な名で呼ばれていた事が祝福から呪いへと変わり、やがて人々はその木の呼び名を変えました。


 悪魔の住む城


──────“魔王城”─────────と

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る