第5話計画
「で、でも。この学校を潰すって言ってもどうやって潰すの?そもそも、学校を潰すって聞いた事がないよ」
「いや、簡単な事さ。この学校の悪事を県の教育委員会に伝えるか、この学校に入学してくる生徒を少なくするか。それだけの事だよ」
「だったら、早く県の教育委員会に伝えた方がいいんじゃないの?」
「いや、とりあえずこの学校の腐ってる生徒を排除していくんだ。それからこの学校を潰す。そして、教員も職を無くして全てが丸く収まる」
「な、なるほど」
美咲は頷きながら返事を返した。
しかし、まだ美咲は府に落ちていない表情をいている。
「じゃあ、その生徒はどうやって排除するの?もしかしていじめ返すとか?それだったら…」
「いや、そんな事をしてもそいつらの人生は潰した事にはならない。」
「え?それってどう言う事?」
「人類が産んだ英智があるじゃないか」
俺はそう言い、スマホを取り出した。
「スマホを使うの?」
「あぁ、スマホにあいつらの個人情報を流すんだ。そして、誰もがあいつらを知っている状態にする。いじめているシーンも」
「でも、それって犯罪じゃ?」
「あいつらも既に犯罪を犯している。今やったっていじめているシーンが流れれば俺達はネットでは守ってもらえるだろう」
「な、なるほど」
「とりあえず明日俺のクラスの奴らを潰して行きたいと思うんだけど…」
「いいよ。悟君にこんな事をする奴らには天罰を与えないとね」
「ありがとう」
…………
「また、やられてる」
俺は椅子には接着剤は塗られないようにはなったが、今度は机の落書きが酷くなってきている。
そして、机の中には生ゴミが散乱していた。
「あれれ?悟君。どうしたんだい?もしかして、いじめられてるの?」
「あぁ、そうみたいだな」
「だったら、俺達がいじめている奴らを捕まえてこようか?」
今日は木下さんが学校に来ており、あたかもこいつらは正義の味方を装っていた。
こいつらは木下さんがいないタイミングで俺の机に細工をしていて、木下さんにはこいつらが正義の味方と映っているのだろう。
目がとても信用しており、頼もしい人だと認めている表情だった。
「悟君。私にもどんどん言ってね。私も一緒に探すから」
「うん。ありがとう。木下さん」
クラスの全員の表情が見事に複雑そうな顔をしていた。
全てを知っているクラスはなんとも言えず気持ち悪い感じだっただろうな。
その後も昨日と同じかそれ以上の事が起こっていた。
木下さんは担任に報告しに行くが案の定全く耳を傾けてはいなかった。
「ごめんね。悟君。先生が聞いてくれなくって」
木下さんは申し訳なさそうに俺に謝ってくるが、俺は、
「大丈夫だよ」
と笑顔で返した。
しかし、木下さんの心配そうな顔は変わっていなかった。
当たり前だが、目の前でいじめている生徒が大丈夫って言ったところで信用されないよな。
それに加えて、俺が木下さんと話すことによってさらにいじめが増えてくる。
…木下さんは天然なのかな?と思うが見た感じ本気で助けようとしている姿を見てそんな事を言うのは失礼だと感じ、何も考えなくなった。
俺が引き続きいじめに遭い続けてようやく昼休みがやってきた。
今回の昼休みは流石に木下さんが教室内にいるためにいじめをしにくい環境になっておりしてこないと思う。
そう思いながら俺が弁当を持ってこの教室から移動しようとした時に声がかかる。
「悟君?」
俺が振り返るとそこには木下さんが弁当箱を持ちながら俺を呼んでいた。
「どうしたの?」
と声を返すと、
「私とお弁当を食べに行かない?」
と誘われた。
まさか、こんな俺にこんなお誘いがあるとは思いもしなかった。
当然返答は、「喜んで」となった。
俺はこの事を美咲に連絡して今日は木下さんと一緒に弁当を食べることになった。
「で?木下さん。どこで食べるの?」
「そうだね」
木下さんは腕を組みながら顔を傾けて考えている。
「じゃあ、中庭とかどう?良くない?」
「うん。そうだね。そこにしよう」
俺はそう言い、美咲さんと一緒に中庭へ向かった。
教室を出る時に奴らが睨みつけており、さらに女子グループもつまらなそうな顔をしていた。
今日の天気は晴れであり、とても気持ちがいい。
まぁ、晴れと言っても雲が多い方の晴れだが俺はこっちの方が好きだった。
ガンガン降り注ぐ日差しは暑いし日焼けもする。それがとてつもなくいやだったからだ。
木下さんは足でスキップをしながら移動しており、青春を謳歌していた。
…俺もこんな風に楽しみたい。
その思いが歩いている中頭の中を駆け巡った。
「悟君、ここで食べない?」
「オッケー。分かった」
俺は木下さんが指定した場所に座った。
奇跡と言えるのか分からないがこの場所は美咲と一緒に座った場所であり、内心驚いていた。
それか、女子と言うものはこう言う場所を好むのか?
そんな事を考えていると、
「悟君?いじめの件だけど」
と木下さんが顔を覗かせながら話しかけてくる。
俺は木下さんの話が頭に入ってきていなかったので頭をかきながら適当に相槌を打った。
「それでね。悟君。この事を校長先生に伝えたらいいんじゃないのかなって思うんだけどどう思う?」
「いや、大丈夫だよ。俺をいじめている人達を探そうとしてくれている仲間がいるんだから」
「そう?」
「そうだよ。ここでその人達を裏切るのはダメだと思うしね」
「裏切るとかって問題じゃないと思うけどそうよね。必死で探してくれてるもんね。」
そう言うと木下さんは突然と立ち上がった。
「こうなったら私達で悟君を救うわ!悟君をいじめている人達は私が許さないから!学級委員長として!」
木下さんはそう言い、拳を握りながら宣言した。
俺はこの迫力に押されて声も出なかった。
そして同時にとても恥ずかしくなった。
ここは中庭って事で声がクラスに通りやすいって事を俺は知っていたからだ。
…やっぱり天然だわ。木下さん。
そう思いながら木下さんを眺めていた。
「さてと、お弁当を食べようかな!」
そう言い、木下さんは座り弁当を食べ始めた。
「木下さんはすごいね」
俺は無意識のうちにこの言葉が出ていた。
その後、あっと思い知らんぷりをしたが、木下さんはどうしたと言わんばかりでこちらを見てきた。
「え?それってどう言う事?」
「いや、こんな俺のためにここまでしてくれるなんてって思ってさ。はっきり言って面倒くさいでしょ?こういうのって。でも、木下さんは委員長としてやってるでしょ。こういうのって大人にもできない事だからさ。すごいと思って」
「やめてよ!しかも、面倒くさいことでもないよ。大切な命が奪われるぐらいならね。だったら助け合っていくよ。私は」
「そう?でも、ありがとうね。とても嬉しいよ」
「ま、まぁ悟君だからやっているんだけど……」
「ん?なんか言った?」
「い、いや、何も言ってないよ。さぁ、食べようっと」
俺は木下さんの声が小さすぎて聞こえなかった。
まぁ、それほど重要な事じゃないだろう。
その証拠に木下さんは食べるのに集中している。
顔を真っ赤にして。
俺は木下さんに続くように弁当を食べ始めた。
「もう昼休みが終わっちゃったね」
「そうだね。じゃあ、教室に戻ろうか」
俺は木下さんに連れられるように中庭から教室へ戻っていった。
木下さんは帰る時もルンルン気分でスキップをしながら帰っている。
周りの人が見ているがお構いなしに。
…やっぱりどこか抜けていると思う。木下さんは。
そう思いながら俺は教室へと帰っていった。
「嘘でしょ…」
先に帰っていった木下さんが突然と俺の机を見て声を出す。
そして、駆け足で俺の机に寄っていった。
俺はなんだろうと思いながら見ていると俺も声を失い、目を擦りながら見てみる。
そこには、動物の死骸などが机の上に置いてあったのだ。
猫、犬、蛇、その他もろもろ色々な動物だ。
さらに、血などが机にこびりついており、いかにも細菌がばらまかれてそうな感じであった。
「こんな事をするなんて…」
木下さんが怒りでワナワナと震えている。
まず、俺という生徒をいじめられているのも今まで通りに腹が立っているのだろうけど、今は動物までも犠牲になっている事が怒りの原因だろう。
ひとまずこんな事人間がやろうと思ってもやれる事ではない。
いくら自分達より小さく弱い生物であっても計画の実行のために殺す事はしないはずだ。
それなのに、あいつらは……
俺がそんなに鬱陶しいのか?消えて欲しいのか?
全く心の中が読めなくなっている。
「貴方達これやった犯人を知っているよね!こんな大掛かりな事バレずにやるなんて無理な事だから!」
木下さんは教室で大声で叫ぶ。
教室の全員も声から木下さんが本気で怒っている事を感じたのだろう。
1人1人顔を見合わせて、話しているだけだ。
しかし、それでも犯人は出てこない。
「貴方達これは普通に犯罪なんだよ!それを止めなかった貴方達も共犯になるんだからね!」
脅しを入れた叫びを全く通じず、全く進展がなかった。
しかし、遂にあいつらが動き出す。
「木下さん、俺見たんだ。あそこにいる山口が悟君の机にああやっている事を!」
「それ本当?」
木下さんが疑いの目で聞き直す。
理由は簡単だ。山口君が普通に大人しく、読書などを中心にしていたからだ。
もちろん、木下さんも疑うだろう。が、しかし、
「本当だよ」
と、1人の女子生徒の声が聞こえた。
それは昨日の共犯である女子だった。
腕を組みいかにもやんちゃアピールをしている。
だが、そいつらは授業中は真面目にメモを取ったり、質問に行っているため木下さんの信頼は厚い。
それだからか木下さんは本気で山口君が俺の机をやったと思い込んでしまった。
「お、俺はやってないよ!本当だよ!信じてくれよ!」
必死で否定するが全く信用されてはいなかった。
山口君は周りに話すが聞いてはもらえず、そして、とうとう犯人が山口君となってしまった。
その後教師が入ってきて、この惨状を見て流石に動き、山口君を職員室に連れていった。
話によるともう、良い成績は望めないらしい。
帰ってきたときには嗚咽や鼻水を垂らして声を出して泣いていた。
木下さんは勝ち誇った顔で、
「悪い事をした罰よ」
と言葉に出し山口君を睨みつけていた。
その雰囲気が悪役に見えてしょうがなく無知は怖いと思う。
授業はというと中止となって自習となり皆が勉強を熱心にやる者もいれば、ふざけ倒す者もおり、その反面山口君の泣きすする声がずっと聞こえて来る。
今日の学校の授業、ホームルームも終わり皆が部活や帰宅をする時間となった。
俺は相変わらず部活へ行こうとする気力が生まれてこない。
それどころか親には申し訳ないがもう部活には興味がなくなっていた。
そのため帰ろうと思い帰宅の準備をしていると、
「お前のせいだ、お前のせいでー」
泣き、凄い顔になっている山口君が俺の胸ぐらを掴みかかり、俺の頬を殴った。
俺は後ろに飛び、地面に這いつくばった。
口の中は血の味がする。
頬を触っていると、体を震えさせる山口君がハッと我に帰りすぐさま帰っていった。
「あれぇ?悟君、殴られちゃったの?」
「そうみたいだな」
「でも、悟君が悪いんだからね」
「もう一回聞かせてくれ。俺の何が悪いっていうんだ?」
「だから、木下さんと話している事自体がだよ。君が離れないというんだったらさらにこういう事をしていくつもりだけどな」
奴らがそう話す中俺はスマホを取り出して、色々予定を確認しようとした。
「おい、お前何してんだ?」
「何って確認してるんだよ。予定を」
「俺と話しているのにか?」
「別にいいだろう」
俺がそういうと、
「ふざけんなよ!てめぇ!」
と俺を殴り飛ばし、馬乗りになって顔を殴ってくる。
そして、俺のスマホを地面に叩きつけて画面を粉々にして踏みつけた。
「ふぅふぅ」
「お、俺のスマホが…」
「けっ!ざまぁみやがれ!俺の話を聞かないからこうなるんだ!」
そう言うと、俺のスマホを蹴飛ばし俺に返してくる。
そして、仲間を連れて帰っていった。
誰もいない教室の中俺は顔を俯き落ち込む。
教室は静寂に包まれて、外の音しか聞こえない状態だった。
俺はその静寂を破るかのように立ち上がり準備を終わらして教室を出て行く。
「悟君、今日はどうだった?」
俺が廊下で待っていたのは美咲であり、それから一緒に帰っていった。
「あぁ、今日も酷かったよ」
「そう。それは頑張ったね」
他愛もない会話だが、俺達にはそれが今一番大切に感じた。
その理由は、
「どう?行けそう?」
「あぁ、とりあえず下準備は終わった。ここから、奴らを地獄に落としてやる」
「ようやく天罰を下すんだね」
「あぁ」
そう、奴らの人生を潰す準備が終わったからだった。
おそらく明日とんでもないことが待っているだろう。
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