時期外れの光虫

@ChihaG

第1話

//1回改稿


儂は近くに竜騎士部隊の基地があるところで食堂を営んでいる。昔は色んな奴がここに来た。隊長であるという奴から、最近毛が生えたような若いやつ、軍属では無い一般の人など様々な客で賑わっていたよ。だがもうそれは昔の話になったがね。

この国は幾度となく戦争をしてきた。隣国は小さな国が多く征服するのは容易だった。だからだろうな、国のお偉方は天狗になり、自分の国よりも大きな国である○○国へ戦争をしかけちまった。当然今までのようにはいかねえ、戦争は長期化し、この国は疲弊していった。

食堂を営むのは苦しかったが、それでも儂は続けた。なんで続けたかって?そりゃここが部隊の、もっと言えゃ若い奴らの憩いの場になってたからさね。さっきも言ったが、この国は疲弊していった。それは物資だけじゃなく、兵士だって減っていったさ。

だから国は15になった男を強制的に軍へ入隊させる決まりを作っちまった。そんな若い奴らの憩いの場になってるのが分かってるのに締められるかってんだ。

ここにはいろんな奴が来たよ。弱虫なやつから喧嘩っぱやいやつ、人族から獣人まで、十人十色さ。

儂ゃそんな奴らを、息子のように思っていたそいつらを幾度となく見送ってきた。しかもそいつらはいつ死ぬか分からないんじゃない、死ぬのが明確に決まってるのさ。あんたも知っての通り、爆弾抱えて敵陣に突っ込み騎龍もろとも自爆するっていう特殊な攻撃、通称特攻。それを行う部隊にいた奴らだったからね。

そうさねぇ、ある奴の話をしようか。そいつは真面目でちょっと内気なやつだったよ。そいつは仮にタケダ、とでも呼ぼうか。その子はねーーー

ーーーーーーーーーー

少年兵A(以下「少年兵」省略)「おばちゃん、こんにちは!」

儂「おぉ、いらっしゃい。お疲れ様、今日はどうする?」

B「どうしようかなぁ」

儂「食べたいもんなんでもつくっちゃるよ。 だから明日も絶対くるんよ?材料そろえとくけんね。」

B「分かってるって、おばちゃん。」ニコニコ

C「なんか甘い物食いたいから…あんころ餅はどう?」

A「いいなそれ、俺にも作ってよ!3つくらい!」

B、C「「俺も3つ!」」

儂「もちろんいいよ。タケダあんたはどうする?」

タケダ「…天ぷら」ボソッ

儂「?」

タケダ「天ぷら食べたい」

儂「よかよ。ただ最近はいい魚が取れんみたいで、エビと野菜でしかできんけど、よかね?」

タケダ「でも」

儂「どうした?」

タケダ「俺、銀貨1枚分しか持ってない。エビなんて高いのは…」

儂「男がお金なんて気にするんじゃないよ」ハハハ

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当然儂だって裕福なわけじゃないから家具やら服やら売って食材を買ったさ。おかげで部屋が広くなって過ごしやすくなったがね、フフッ。

その日から1ヶ月くらいかな、タケダの誕生日があったんだよ。そしてその次の日がタケダの出兵の、もっと言えば特攻の日になった。その時20歳だったよ。外には光虫が飛んでたねぇ。

ーーーーーーーーーー

タケダ「美味かったー。もうこれ以上ら食べられないよ」

儂「そうかい、腕によりをかけて作ったからね。満足してもらえてよかったよ」

タケダ「これが最後の晩餐でよかった」

儂「…」

タケダ「最後に美味いものも食べられたし、もう心残りはないかな。」

儂「そうかい」

タケダ「でも、俺、死んだらまたおばちゃんの所に戻ってきたい。そうだ光虫、光虫になって帰ってくるよ!」

儂「あぁ、いつでも帰っておいで」

タケダ「9時頃になったら帰ってくるから扉を少し開けておいてね」

儂「わかったよ」

ーーーーーーーーーー

そうしてタケダは行っちまったよ。タケダとよく一緒にいたAとBから死んだって、務めを果たしたって教えてもらったよ。

その日の晩の9時頃、扉を少し開けておいたんだ。そしたら1匹の大きな光虫が光を放ちながら入ってきて、タケダがよく座っていたところに止まったのさ。儂は息が止まるかと思ったよ。だってタケダがちゃんと帰ってきてくれたんだから。すごく嬉しかったよ

ーーーーーーーーーー

それから2週間後、食堂の女主人は亡くなった。90歳だった。

女主人の死はメディアで報じられ、連日取材陣でごった返した。

通夜の夜の一段落ついたとき、1匹の光虫が光を引いて入ってきた。その時期は光虫が飛ぶような時期では無かった。その光虫は女主人の棺桶に止まって、また飛んで行った。それはまるで光虫が、タケダが、迎えに来たかのようだった。その時、女主人は微笑んだように見えた。

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