第16話 うりゃっ!
アレン 「デ、デカァァーッ! 体長は6mくらい――? うわっ、ノンストップで襲いかかってきた!」
ローリィ 「こら、クマに背中を見せるんじゃない! 危険を感じたら火球! さっき教えたでしょ!」
「いや、無理でしょ! 190cmの高校生とバスケをするだけでもプレッシャーが
「諦めたらそこで人生終了よ。泣き言を言ってないで立ち向かいなさい」
「う、うりゃっ!」
魔熊 『グオオオオオッ!!』
アレン 「ひいっ」
ローリィ 「えいっ!」
「せ、先生! 助かりました、ありがとうございます!」
「火球は
「はいっ、とりゃっ!」
魔熊 『グオオオオオッ!!』
アレン 「ところで、こいつ『グオオオオオッ』としか鳴かないんですが、異世界ファンタジーのバトルシーンがこんなのでいいんですか?」
ローリィ 「ナーロッパの戦闘描写は、頭を空っぽにして読めるくらいがちょうどいいらしいわ」
「頭を空っぽにしていいのはお客様だけで、作り手や演者が頭を空っぽにしちゃダメですよ」
「そこの
魔熊 『グオオオオオッ!!』
アレン 「何だか、魔獣がさっきより大きな声で鳴き始めましたね」
ローリィ 「正常な反応よ。魔獣って
「思春期の少年少女みたいに表現するの、やめてもらえます? 退治しにくくなるじゃないですか!」
「体の大きさと魔力の密度から考えて、アレンくんの石弾でもいきなり脳を貫通するのは難しそうね。アレンくん、石弾で目を撃ちなさい。目を
「『破壊』って言わないでください、怖いから。っていうか、こいつの体が大きすぎて、目を狙える感じではないんですけど?」
「私が撃てって言ってるんだから、撃ちなさい」
「ローリィ先生、自分の見た目が
「返事は?」
「
魔熊 『グオオオオオッ!!』
アレン 「(……火球を作ったまま石弾を撃つなんて、練習でもやったことがない。それに、2つの魔法を同時に発動するのは相当難しい気がする。石弾を撃つ瞬間は、火球を消して牽制を中断しないといけない。もたついたら命はない……!)」
ローリィ 「そう思うならもたもたするな」
「おっしゃる通りです! ……そこだっ、えりゃぁっ!」
『グオオオオオッ!!』
「ねえ、アレンくん、聞きたいんだけど」
「何ですか?」
「私は目を撃てと言ったのに、どうして肩に当てたのかしら? 案の定、
「手元が狂って失敗したんですよ!
「クマごときにビビるナーロッパ主人公なんて聞いたことないわ」
「そいつら、本当にヒトですか? とりゃっ! とりゃっ! とりゃっ!」
『グオオオオオッ!!』
「やっと当たったわね。次は、撃ち抜いた目に火球を当てなさい」
「えぇ……、魔獣が石弾を痛がって暴れているせいで、さっきよりさらに狙いが――」
「じゃあ、クマの頭を全部燃やせるくらい大きな火球を作りなさい」
「――っ! どぅぉぉりゃぁあ!」
『グオオオオオッ!!』
「あー、なるほど。あなた、狙い定めて撃つより、多少手元が狂っても威力高めで撃つことを意識した方が良さそうね。ほら、もう1回」
「えいっ!」
『グオオオオオッ!!』
「最後に、目から脳にかけて、水魔法で
「えぇっ? 結局そんなえげつない方法を選ぶんですか?」
「一度凶暴化した時点で、この子が安らかな気持ちになることはもうないのよ。長くてもあと数日で、過剰な魔力に体が耐えられなくなって死ぬわ。あなたが上手くやれば、苦しむのはあと10秒で済む。すでに目を撃ち抜いてるんだから、さっさと
「分かりました。ぅおりゃっ! ……うわぁ。やっぱり、直視はできません」
「やっと1体……。前にも言ったけど、アレンくん、あなたには教えられたことを学ぼうとする素直さと真面目さがある反面、何が何でも目的を果たすんだっていう気合と度胸は足りてないわね。自分が何のために生まれて、何のために魔法を学んで、将来どうなりたいのか、どうなるべきなのか、あなたはまだそこで
「いや、あの……。僕、昔から進路相談って苦手で」
「ってことは、本を読んだときも、神妙な顔を作っていただけで実は何も考えてなかった?
それとも、何も考えなくても、ただ才能があるから、お父様に言われたから、周りの人間からちやほやされて優越感に
自分がこの世界に生まれたことにどんな意味があるのか、自分がこの世界でどんな役割を果たしたいのか、何を成し遂げたいのか、そういうことを知らないまま、探さないまま、考えないまま、ただ何となく毎日を過ごしていくつもり?」
「い、いや、だって、ほら、僕はまだ12歳ですよ?(中身はそろそろおっさんだけど)」
「そんなんじゃ、いざってときに後悔するわよ」
「それはどういう……?」
「……日が暮れるまでに、この特別授業を終えられればいいんだけど」
結局、アレンはこの日、ローリィの監督の下、魔獣たちに対して様々な魔法と戦術を試し、計6体の魔獣を仕留めた。
特別授業の終了を宣言したローリィは、アレンを
だが、彼女がそれだけでは満足していないことを、さすがのアレンもわきまえていた。
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