TIPs:お宝発見メイロちゃん
〜レスピーガ地下迷宮にて〜
「うわわっ!!!」
「ちょっ!コノハ!?」
クープランの墓との対話後、はしゃいでいた木葉は勢い余って壁にぶつかってしまった、、というシーンからこの話がスタートする。星空の間は少し薄暗いためその感覚が案外測れない。まぁその偶然が幸運を呼んだわけだが。
「な、なんか動いたよメイロちゃん!!」
星空の間の壁を押すと、その壁は簡単に動き色々複雑な動きをした後さらに奥に部屋が爆誕した。説明が雑で申し訳ないのだが、まぁ要約するとそうなる。部屋のできる過程はこの際どうでもいいとして、問題は部屋の中身だった。
「台所、風呂場、図書館、娯楽室、寝室………いやなんなのここ?」
「クープランの墓さんの居住スペースかな?」
「あの骸骨には馬鹿でかい宝箱という居住スペースがあるのだからここはまぁ………ご褒美みたいなものなのかしら??」
「だったらもっとわかりやすく作ってくれればいいのにね。あ!!食材がいっぱいある!!」
台所の隣の部屋は食料庫になっていて、見たところある程度の食料が確保されているようだった。
「卵も乳製品もお野菜も新鮮だ〜。なんでだろ??」
「そういう魔法……としか説明できないでしょうね。今やここはクープランの墓の魔力がふんだんに込められた魔力空間。もう何が起こっても驚かないわよ」
「ふんふん……これだけあればアイスクリームが作れるかも……」
「あぁ、貴方がさっき言ってた薬のようなデザートのこと?」
「薬じゃないもん!!本当に甘くて美味しいんだからね!!よし、私作るよ!メイロちゃんは寛いでて!」
と、アイスづくりを始める木葉。冷蔵機能付きのボックスも存在しており、正直ここだけ文化レベルが可笑しい。
そんな木葉に何を話しかけても鼻歌しか返ってこなくなったので、暇を持て余したメイロはさっそくお目当ての図書館へと向かうことにした。
……
………
………………
「……流石、というべきね」
クープランの墓は初代魔王である。今から約500年前に王国の東の方で大暴れし、当時15歳だった初代勇者の少女に討伐された。その後の初代勇者の消息が不明なため、相打ちだったというのが一般的な説である。
2代目魔王:亡き王女のためのパヴァーヌ討伐の際も、2代目勇者は魔王と相打ちで死亡したとされている。勇者と魔王をめぐる歴史は悲劇的な結末でしか締めくくられない。
でまぁそんなことを説明したいわけではなく、初代魔王たるクープランの墓がいかにその莫大な知識を残したのかというと、その片鱗はここにあった。図書館である。
(おそらく今は王国に統制されたであろう貴重な書物ね。過去王国に刃向かったものの記録……とはいえ500年を境に途切れている。なるほど、つくづくあの骸骨は律儀なのね)
メイロはパラパラとその辺の本をめくり、また棚に戻していく。図書館というか規模的には図書室であるが、その内容の厚みは図書館クラスである。
「ふむ、これは………!?!?」
メイロが何気なくとった一冊の本、、それは…
「な、な、なんて破廉恥な本!!しかもこれ、女の子同士じゃない!!」
クープランの墓のお宝である。あ、どうしよう、作者と趣味が合うかもしれない。
表紙にはあふれんばかりの百合、絡み合う2人の女の子、可愛らしいデザインのタイトル。おそらくクープランの墓の自作だろう。
「こ、こここ、こんな破廉恥なもの!コノハが見たら大変じゃない!!わた、わたわた私が処分しないと……」
グッと小説を奥に押し込めるメイロ。そのまま雑念を振り払うように図書館を出……
「………ちょ、ちょっとだけなら……」
…れませんでした笑
「な、こ、こんな、女の子同士で!ひゃ、ひゃぁぁあぁあ、、破廉恥な……ぅう、静まりなさい私の心臓、、こんなに焦ってたらページがめくれないじゃないの!」
所々に挟まれている挿絵は甘々な女の子たちのスキンシップのシーン。メイロの顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。食い入るようにしてページをめくっていき、とうとう読み終えてしまった………………上巻を。
「くっ!!ここで終わりなの!?あの後ミチカとハナの関係は!?アサダ先輩まで絡んで来て三角関係突入って良いところで終わらせるとかあの骸骨のバカっ!!」
「メイロちゃん??」
「うぅもうなんなのよ心の奥底から湧き上がるこの熱い感情は!下巻、下巻が必要よ!私が今すべきは下巻を全力で探して」
「メイロちゃん!!」
「何かしらコノ…………………あ」
知らない間に木葉が後ろに立っていた。手にはアイスクリームの容器がある。バニラ味らしい。いや今そんなことはどうでもよくて…
「あ、あぁあ、ぁぁあぁ、いや、違う、違うのよコノハ!!」
「へ??あれ、メイロちゃんなんか本読んでたの??見せて見せて!」
「あっぴょい!!」
「あっぴょい!?」
手を伸ばしてメイロの本を見ようとする木葉から本を咄嗟に遠ざける。これだけはどうも見られたくないらしい。その気持ちはすごくよくわかる。学生身分の作者には痛いほどよくわかる。
「こ、これは危険な本よ!!絶対貴方が読んではいけないわ!」
「えー!!メイロちゃん読んでるじゃん!」
「そ、それは、その……。こ、この本は名前が『コ』から始まる人が読むと呪われるのよ!」
「なんてピンポイントな呪い…いいじゃん!みせてよぉ〜!!」
「ダメったらダメなの!!きゃあっ!!」
本を高く上げて見せないようにしているメイロの脇をくすぐる木葉。それに思わず甘い声を上げてしまったが、そんなことは気にしていられない。今やメイロは、お母さんにお宝が見つかりそうになってる男子学生の状況に陥っている。
「むぅ……いいもん。じゃあ私アイス先食べてるから、メイロちゃんも読み終わったら来てね。溶けちゃうから早めに」
これ以上やっても無駄だと察したのか、木葉は図書館から退室していった。そのことにホッと胸をなで下ろすメイロ。粘り勝ちである。
「ふぅ………危なかったわ。さてアイスクリームとやらも少し気になることだし行くとしようかしら」
乱れた衣服を正して歩き出す。が、その前に…
「アイテムボックス………うん、空きがある」
食べたら絶対下巻を探そうと決意したメイロは、小説をステータス画面のアイテムボックスに押し込んで図書館を出たのだった。
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