私は何も守れない。
「どうりでつええ訳だ・・・こいつ!アルメリアの手下だ・・・」
「まずいですよ先輩っ!」
「怖気づきましたか?」
『ッ!!!』
ジゼルがガーデンリリーの指先を少し動かすだけで、二人の襲撃者は今までにない程縮みあがった。
完全に立場が逆転し、頭を抱えてうずくまっていた領主たちも立ち上がり。
彼らのテリトリーは、当初に比べ目に見えて小さくなっていた。
「お嬢ちゃん。鎧と剣はどうした?」
「その手は、もう通用しませんわ!!」
握られた巨拳が襲撃者に向かって水平に向かう!
「テルっ!!」
「まだかかります!!」
「チィ!!」
先輩と呼ばれる人物は、短刀を振り回し円盤を操作したが、それらは全て命中するかしないかのところでことごとく粉々に握りつぶされてしまった。
「はああああ!!!」
「テルっ!!」「先輩っ!!!!!!」
猛進するガーデンリリーの一撃がテルを庇った先輩と呼ばれる人物を捕らえた。
先輩と呼ばれる人物は凄まじい勢いで吹き飛んでボールのように転がって壁に激突し、それから指一本動かすことなくその場に足を延ばしたままうつ向いた。
「降参しなさい、金輪際このような略奪行為を行わないと誓うのであれば、この世界に免じて許して差し上げます」
「・・・・ぼくは!先輩・・!」
テルは弾き飛ばされたまま微動だにしない先輩とジゼルに何度か視線を往復させて下を向き、弱弱しく手を挙げた。
「まだだっ!!!!!テルっ!!!まだ終わるな!」
「先輩っ!」
「・・・!!!ハッ!!!」
「それはっ!もう通用しませんわ!」
ジゼルはこの時油断していた。
それは、この二人の襲撃者が初めの約束通り自らの意思でジゼル以外を一度も標的にしていなかったからだ。
「ジ・・ゼルさん・・」
先輩の円盤の一枚は、バルコニー入り口の木枠ごとセイムの腕を粉砕し、そのまま一文字に体を通過した。
「セイムッ!!!!」
「・・・わりぃな。大人げなくってよ」
セイムに駆け寄ったジゼルは戦慄した、傷は深く、彼の息は虫の様に弱弱しくなっていた。
「そんな・・・・セイム・・・・セイム。行かないで。私を・・一人にしないで・・・」
二人の青年は釈然としない思いでその様子を眺めていた。
「・・・なぁ、悪かったよ。これ、よかったら使ってくれよ」
「いや!!来ないで!!いやっ!!」
先輩は腰の革帯から液体の入った小瓶を取り出してジゼルに渡そうとしたが、泣きじゃくる少女は目も合わせようとしない。
「お前らよくやった、用は済んだ。帰投するぞ」
「隊長・・・」
ホールの暗がりからリーダー格の男が現れる、ガンズロットの姿は無い。
その背中には大きな機械で出来た四角い箱が背負われていた。
「トラブルか?」
「はい・・・。すみません」
男は不格好な荷物を背負っていながら、再び滑空するようにジゼル近づき影の中に置いた。
「いま、楽にしてやる」
「・・・!!」
後ろに回した男の手が前に現れる瞬間、ジゼルはセイムを抱きかかえたまま脱兎のごとくバルコニーから飛び降りた。
二人はシップの障壁にぶつかり、一度小さな火花を散らし瞬く間に暗闇に消えていった。
「・・・・」
「隊長、帰りましょう。」「どんまいです。」
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