アクション

「それでは、ごゆっくり。」


このヨークシャー型は、数ある浮きシップの中でも最も多様化されている種類の一つだ。

内部の装飾や、デザイン、材質、ボルト一本に至るまでオーナーの好みに合わせてカスタマイズできるようになっている。


そして、ガンズロット氏の人柄が現れているようなシンプルで実用的でそれでいて、手間の掛けられた客室内は、二人をしばしうっとりとさせた。


特に、船体の特に手の当たる箇所の木材に施された加工は、セイムを大いに感嘆させた。


木材を一度火で焦し、その後年輪を残して表面を削り取る加工は、『浮き造り加工』と呼ばれているものだ。セイムはしばらく目をつむり、さり気なくそれでいて、すべての人たちに向けられた。もてなしの心、で気持ちが豊かになるのを感じた。


「セイムさん!見て!見てください!!」


ジゼルが興奮気味に指さす方を見てみると、そこには巨大な生物と戦闘を繰り広げるプレイヤーたちが小さく見えた。


「すごい・・・。『時間湧き』だ・・・。はじめてみました。」


「私、初めてこの世界に来た時。一番初めに戦ったモンスターが時間湧きだったんですよ!?ひどいと思いませんか?」


「よく無事でしたね・・・」


「ええ、何とか、あの時は、皆さんにすっかり助けられてしまいました・・・。それからは、もう。転がるみたいに!これ、その時私に割り当てられた戦利品で作ったものなんです」


ジゼルは、行水中も外していなかったペンダントを持ち上げ見せた。


「すごい、とってもきれいですね。」


「あっ!もう少しで倒せそうですよ!ほらっ!見てっ!」


「本当ですね。」


「よかった!無事倒せたみたい!あ!!」


「あれは、別のパーティーですね・・・」


「嫌ですわ全く!教会の領地から離れるとすぐにこれですもの!」


この世界では、暴力が許されている。


 強いものが、弱い者から奪う事を認めている。


セイムは今まで自分が奪われる側にならなかった事を教会とジゼルとこの世界の神様に心から感謝した。


「現実世界で好きなだけ競争しているのに、ここでくらい。みんな、平和に暮らせばいいのに・・・」


「セイムさん?」


「いいえ、なんでもありません」


セイムは、窓の手すりの細かい凹凸を指先で撫でた。


「僕は、ここでのんびりしているわけにはいかないのに・・・。あなたが、とても素敵な人だからつい一緒にいるのが楽しくて・・・。」


「セイムさん?わたくしがなぜこのような遊覧目的のシップに乗り込んだのかお分かりで無いようね?」


「え?」


「こう言ったものには、先ほどのガンズロット様のような領主様が大勢乗っています。領主様は、探検家や騎士などよりも、もっとずっと広い友好関係を築いておいでです。どのような事態なのかは分かりかねますが。セイムさんのおっしゃる通りならきっと、穏やかな事態ではないのでしょう。それとなく、私たちで情報を集めてみませんこと?」


「それは、つまり・・・?」




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