ドロシー
突如、星空を切り裂いて、数隻のガンシップが轟音と共に飛び去った。
「あれは・・・?ハムスター級ガンシップじゃないか・・・!?」
所属不明のヘリオンは、風と共に木の葉や砂埃を巻き上げながら、凄まじい速さで彼方へと消えていった。
「あの方行は?酒場の方角・・・?!」
砂だらけの装備の中に、じっとりと汗が噴き出るのを感じた。こんな夜中に、普通じゃない。
セイムは、この時、孤独で、非力でありながらこの世界を心から楽しんでいたことに今更ながら気が付いた。
「逃げろー!!!!!!!機械人形だ!!!!!みんな逃げろーーー!!!」
人々の悲鳴が木霊する、酒場は真っ赤に燃え上がり、そばに住む人々の暮らしは、一瞬にして炎に包まれ恐ろしいものに変貌していた。
数名の男たちが井戸から水を汲み必死で消火活動に励むが、水を一杯かける間に、機械人形が放つ雷が容赦なく建物を破壊した。
「酒場は?ドロシーは?!ドロシー!!ドロシー!!!いませんか!?」
セイムは、教会の言う奇跡を常日頃から信じていた。
そして、今までそうしてきたことに心から感謝した。
「セイムっ!!良かった!!!どうしよう!!みんな。戦うって・・・・!!!」
ドロシーは、居た。
しかしそのすぐ後ろには、頭のコイルに十分なエレメントをチャージした機械人形が、その目を禍々しく光らせていた。
「ドロシー!!!!!危ない!!!」
「えっ!!きゃあああああ!!」
「みんな怯むな!!!!!」
「石や槍でかなう相手じゃありません!!!!!逃げてください!!!!!」
物陰から投げつけられた石は、結果的に機械人形ではなく、ドロシーに降り注いでいた。
機械人形の目が、それらに向けられ、放たれた雷が、一瞬にして、2~3人を炭に変えた。
その隙にセイムは、泣きじゃくるドロシーを連れ、物陰に隠れ命令した。
「ドロシー!聞いてください!」
「いやっ!みんな・・・いやっ!!!!」
「ドロシー!!聞いてください!逃げるんです!一人でも多く!!逃げてください!」
「セイムは?」
「僕だって逃げますよ!」
「わかった・・・」
それとほぼ同時に、二人が隠れていた物陰が崩壊し、背後から機械人形が現れ、ドロシーを縄状の装備で捕獲した。
「ドロシー!!!!!!!!!」
「セイムっ!!!!!!」
セイムは、連れ去られるドロシーに駆け寄ったが、機械人形の障壁に村のはずれまで弾き飛ばされ意識を失った。
「ダンチョー?プレイヤーが居たみたいだよ?」
「目的は・・?果たせたのか?」
「うん。」
「んならばよろしい、帰投してくれ。」
「はーい。」
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