2「松ヶ峰聡と、白い鳳たち」
第百二十一話 政治家の家族
四か月後の衆院選に立候補を表明している、
今日の聡は”
聡の叔父である
もっとも列席者は、病院関係者以上に松ヶ峰家の後援会”
そのため、聡と叔父のまわりにはつねに酒を片手に声をかけてくる吉松会メンバーがとぎれなかった。
「いやあ、松ヶ峰さん。実に久しぶりの選挙じゃないか。”吉松会”としても腕が鳴るね」
「ああ、
「よう言うな、あんた。亡くなった兄さんの選挙では”鬼”と言われた男じゃないか」
聡の叔父に向かって大声で笑いかける
名古屋の医師会でも、かなり大きな顔ができるひとりだ。そして医師会は、保守派の政党にとって確実な
聡は
「叔父や吉田さんのような方がいらっしゃらなければ、とてもわたくしのような
「ああ、聡君。その年で初選挙は荷が重いかもしれんがね。しかし、わしら”吉松会”にとっては、
「”吉松会”、ひいては吉田様あってのわたくしです。よろしくお引き回し下さい」
そういいながら、聡はちらりと広いレセプションホールのすみに目をやった。
そこには、聡の
今日の環は藤色の着物をきて、どこまでもひかえめだ。
なるほど以前に
それでいて誰かが話しているのを上手に聞き、いいタイミングでうなずいてみせる。
それで、
藤島環とは、ピリピリするような政治の場において潤滑油のように物ごとをなめらかなに動かせる人間なのだった。
そのくせ、環の容貌はどこまでも平凡で特徴がない。
女性にとっては
政治家の家族としては理想的な存在感を、いつのまにか藤島環は身につけていた。
もし
聡は後援会幹部との挨拶のあいまに、ちらりとそんなことを考えた。
それからすっと、目じりを鋭くした。
松ヶ峰家の叔母・
野江は、以前から環が
聡はできる限り環をかばってきているが、今はだいじな後援会幹部との談笑中で、身動きも取れない。
吉田の話が早く終わらないか、と聡は内心でじりじりとした。
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