第十四話 持つべきものは、友
まだ四月だが、季節は確実に夏へ向かっている。
聡はまっすぐに顔を上げて叔父を見た。にこりと笑った。
「半分だって、俺がやる気になっただけ
だだっぴろい和室で
じろっと、小さな身体から聡を眺めおろす。
「まあそんなところだろうと思ったわ」
とつぶやくと、たちまち涙の乾いた目で、聡ではなく
「わかった。”
叔父は続けた。
「今、本邸に住んどる
そんであの家に、聡とあの娘の二人しかおらんのは良うないっちゅうてな」
「はあ?」
聡はおもわず
叔父は何を言っている?
しかし叔父はしごく真面目な調子で、
「お前の選挙前につまらん噂が出てはいかん。あの娘に行くところがなければ、とりあえずうちに置いてやる。早急によこせ」
聡が言い返そうとした時、背後から音也の声がした。
「失礼ながら、
出すぎた
叔父は音也の言葉に納得しながらも、まだためらっている。
「しかしあの家に、あの娘と聡が二人きりっちゅうのは……」
「それでしたら、いずれ私がご本邸に引き移ることになっておりましたので時期を繰り上げましょう。本日からでもご本邸の
「そうか。そのほうが何かとやりやすいなあ」
「はい。いよいよ選挙も
「ほんじゃまあ、あんたにちっと無理を聞いてもらおか。聡、”
聡は背後の音也を振り返ることもできずに、快い香りのする畳の上に、べたりと座りこんでいた。
立ち上がる気力さえ起きない。
音也がうちに来る?
姿を見るだけで声を聞くだけで聡の身の内がふるえるほどに恋しい男が、おなじ家に
いやな汗が、聡の背中を濡らしていく。
気が狂いそうだ、と松ヶ峰聡は目を閉じた。
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