5
夜は一人だ。
晩ごはんを済ませればわたしたちはおのおの自分の部屋へと引き上げる。小さなころからわたしたちにはそれぞれの部屋が宛がわれていて、物怖じするくらい広い空間を一人で使用し、気まぐれにあれやこれやと模様替えを繰り返してきた。ずいぶんと早い段階からわたしたちは男女の双子であることがわかっていた。それならば子供部屋はふたつ用意しなければならないだろうと両親が考えたのは当然だった。
もちろんわたしたちはお互いの部屋を訪ね合い、たびたびいけなくて面白いことをして遊んだ。けれども夜になればおやすみを言って必ず自分の部屋へと引き上げるのだった。両親の手前、そうしなければならないのだろうとわたしたちは理解していた。両親のあいだで二人丸くなって眠った記憶など、遠すぎてすでにおぼろだ。
だからわたしは一人、電気を消してベッドに潜り込む。一人きりの部屋で響く呼吸音は当然ひとつきりで、それはわたし自身のものだ。わたししか居ない部屋。わたしはそっと、パジャマのズボンに手を差し入れる。
直接は触れない。パンツの上からゆっくりと小さな突起を撫でれば、軽い快感が下半身を中心にして広がった。撫でるときは中指の腹を使う。それから徐々に指を増やし、人差指と中指で挟んで揉むようにやわやわと弄る。やがて下半身から頭のてっぺんまでびりっとした電流のような感覚が突き抜けそうになると、わたしは慌ててパジャマのズボンから手を引き抜く。しばらくのあいだは心臓がどきどきしている。そのどきどきを落ち着かせるように深く息を吐き、瞼を閉じればよく眠れた。わたしが夜中一人ですることは、それだけだ。
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