第3話
目が覚める。ああ、今日も夢を見た。
私は毎夜夢を見る。気づいたときには夢を見ない日なんて無かった。ある日の私は殴られそうになって必死に逃げまわり、またある日の私は必死に農作業をしていた。
数えきれないほどの夢を見てきた。
夢の中では私は何にでもなる。怖い夢もあるけれど実際には痛くも痒くもないし、物語の世界に入ったようなものとして捉えて楽しんでいる。
最近は死ぬ夢ばかり見る。ちょっと飽きてきた。
今日は水曜日。平日だけど、高校の創立記念日なので休み。
今は午前五時を少し過ぎたところ。休みなのに早すぎる目覚め。少し悔しい気もする。
もうすぐ十二月。明け方の寒さは厳しい。
カーテンを開ける。まだ暗いけれど、街灯のおかげでわかる。外は真っ白になっていた。雪が積もっている。
どうりでこんなに寒いんだ。毛布にくるまって斉藤に借りた漫画を読む。
お母さんも妹も起きてきて、出かけて行った。
妹の那奈はバレー部に所属しており、朝練に参加するため早くから出かけていく。県内で有名な強豪校らしい。こんな寒い日に、那奈はベリーショート。那奈が感じるであろう首の寒さを想像したら、私の体が縮んだ気がした。
お母さんも、今日は特に早く家を出た。雪の日は道路が混みがちになる。時間にだいぶ余裕をもっていかないと会社に間に合わないのである。
家には私一人になった。今日は勉強する気が起きないなぁ。だらだら過ごす。
窓を覗くと雪がしんしんと降っていた。これは結構積もるだろうなぁ。こんなに雪が降っているなら、雪だるまの一つでも作りたくなってくる。折角だから久しぶりに、そりすべりもしちゃおうかな。
コート、マフラー、ブーツ、マスク、とにかく厚着して家を出る。ずるずると、そりを雪の上に滑らせながら歩く。
道中では誰にも会わなかった。
世界が滅亡して、私しか生き残っていないみたい!という妄想で頭をいっぱいにしながら歩いた。
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