第2話
朝とは打って変わって、帰り道はのんびり行く。電車を降りて、駅から家までの間はお楽しみの時間。ただひたすらにのんびり歩く。
この道には、このあたりに住む人々に愛されるマツモト商店がある。ここには電球から食パンまで売っている。品ぞろえがいい。
スーパーはあるけれど、そこに行くには車で十五分かかる。もしもこの商店がなかったら、不便極まりないだろう。
それとこの道には、神社がある。あるといっても誰も足を踏み入れないような、ぼろぼろの神社。黒ずんだ紙垂がひらひらしている。
ちなみに、お社の周りは斜面に囲まれている。この斜面が最高に良い。小学生くらいまで、雪が積もるとそりで滑っていた。誰もいない、貸し切りのゲレンデが秘かな私のお気に入りの場所だった。私にとってはただそれだけ。そこの神様に手を合わせたことすらない。
マツモト商店、神社を横目に通り過ぎ、しばらく歩くと家に到着。
ただいま。まだ六時前。誰も帰ってきていない。私は帰宅部なのでゆっくり歩いても帰りが早い。
二つ下の妹は部活で忙しそうだし、お母さんはバリバリ働いていて忙しそうだ。
うちは母子家庭だからお母さんが大黒柱なのだ。お父さんは養育費をしっかり払っているらしい。普通に暮らす分には何不自由ない。
私もバイトをしたいとは思うけれど、私が通う高校は自称進学校。アルバイトするべからず、としっかり生徒手帳に記されている。というわけで、私は勉強をそれなりに頑張ることにしている。
お母さんも妹も帰ってきた。ご飯を食べる。今日のメニューは舞茸が入った名も無い炒め物だ。こういう料理が一番おいしいと思う。これを伝えたらお母さんと妹には「年寄りくさい」と言われた。
ごちそうさまでした。片づけをして、お風呂に入って、勉強をして、今日、学校の図書館で借りた本を少し読んで、それからベットに入る。
ベットに入ってすぐ眠れたらどんなに気持ちいいだろう。私はなかなか寝付けない性質なのだ。
暫らくごろごろして、ようやく眠る。
私は部屋の中に立っていた。腰のあたりまで水に浸かっている。壁一面真っ白で、テーブルだけが置いてある。
水が揺らめくのを感じる。私は動いていない、水中に何かがいる。影が見える。
水中のなにかは大きい。水が強くうねる。
何かが跳ねた。姿が見える。
鋭い、錐のようなものが見えた。カジキのような魚だ。
気づいたころには、私の腹はそいつに貫かれていた。
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