夢のまた夢

うごうご

晴の日常

第1話

 ああまた目が覚めた。


 瞼が重いけど自分の瞼を自分でこじ開ける。寒い。布団はべちゃっと床に落ちている。毛布は壁とベットの隙間でしわくちゃの細長い物体になっている。私は寝相が悪い。

 いつだったか、まだお母さんと一緒に寝ていたころ何度も何度も「寝相が悪い」と言われた。寝ている間、私の体は私のものであっても私じゃない。どうしようもない。

 

 私は目が覚めたらすぐに朝ご飯を食べる派だ。階段を下りていく。とんとん。



 今日はパンの気分。納豆とチーズをのせて食パンを焼く。最近はまっている。焼いている間に顔を洗う。


 チーン


 焼けた、食べる。時計を見る。七時半過ぎだ、やばいぞこれは。いつも乗るのは学校に間に合うぎりぎりの、七時五十分に発車の電車。家から駅まで徒歩十分。つまりあと十分足らずで着替えたり、寝癖を直したりするということ。

  やや鄙びた町に、電車はそれ程頻繁には通らない。家と学校の間は一駅だけだけど、その距離は結構遠い。自転車で登校しようものなら私の体力がごっそり削られる。

 八時十五分には教室に入っていないと遅刻になる。遅刻はもちろん嫌。だけどもっと嫌なのが、みんなが静かに座っているところに戸をガラガラ音を立てて開けて入る瞬間!みんなこっち見る。絶対いや。新幹線もびっくりの速さで支度する。

 年頃のおなごとは思えんのぉと私の脳内のひげ面のおじいさんが言う。お黙り!何この妄想。昨日寝る前に読んだ本の影響か?


 お弁当を忘れるところだった。間一髪。行ってきますと言いながら、玄関から飛び出すように出る。実際、飛び出したかもしれない。そして、しゃかしゃかと足を動かす。



 間に合った。友達の斉藤に挨拶して、おとなしく席に着く。


 いつも通り授業やって、お弁当食べて、授業やって、さようなら。


 「はるー!!また明日。」

 「じゃあね、斉藤」


 今日もふつうだった。

 いつもと違うことを挙げるならば、斉藤が家に筆入れを丸ごと忘れたことくらい。


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