選ばれた者達と選ばれなかった者
ステラ達が学院内のカフェテリアから移動し、最寄にある霊園に行くと、開始まで20分ほどもあるというのに既に多くの生徒達でごったがえしていた。
交流会参加者だけではなく、様子を見る目的で来ている人達も多いようで、
ステラは彼の側へとトコトコと近づき、声をかける。
「クリス先輩こんにちわです!」
「お~、元気そうじゃん」
「元気なんかじゃないです! 寒くて、寒くて風邪をひいちゃいそうです」
「あっそう」
「クリス先輩は交流会に出ないですよね? なんでここに居るですか?」
「たまには大魔法が発動するのをみようかと思って」
「大魔法? 何言ってるか分かんないです」
ステラが首を傾げてみせると、クリスは目を細める。
「お前。これからディザーテッド・ストリートに入るってのに、随分呑気だな。大魔法ってのは、ここのダンジョンに仕掛けられたものだ。邪神が創り出した大魔法の一つらしく、100年ほど前に実験に失敗し、この街はその影響から歪な空間になってるんだと」
「ふむふむ」
「外からでも見えるから、観覧しよーかなってな」
「そういう地形のダンジョンて、珍しいものだったですね」
「珍しいどころか、唯一無二ってやつだよ」
「ほへ~」
普段機械いじりばかりやっている人間が、この寒空の下で長時間待つくらいだから、やっぱり見ごたえがあるってことなんだろう。
今日これからの用事も忘れ、楽しみな気分になってくる。
ちなみにクリスは、留学中に高額な発明品を生徒に売りつけようとしたようで、4日程の停学処分にされていた。
それが
クリスは「じゃあ頑張れよ」と適当な事を言いおいて、生徒会長の方へと歩いて行く。
そんな彼を見送っていると、人垣の方からローブ姿の小さな少女がこちらへ歩いてきた。
「あ! エマさん」
「【守りの唄】をかけようと思って、待ってた」
「助かるです!」
「ケイシーさんにもかける?」
「そうですね! ええと、ケイシーさんは……。あ、いた!」
キョロキョロと周囲を見回すと、デイジーと話すケイシーを見つけられた。
エマと一緒に近付けば、いかにも待っていたかのように、二人に迎え入れられる。
「ステラ。見たところいつも通りの格好だけど、準備は大丈夫?」
「準備は大丈夫です! 持ち物は全部アジさんが持ってくれてるですから!」
小さな相棒は霊園入口の柵に乗っかり、伸びあがるようにして、中の様子を確認している。彼もクリスと同じく、かつて邪神が創った大魔法に興味があるのかもしれない。
「ケイシーさんとデイジーさんも、エマさんに、バリアをかけてもらおうです。とっても効果が高いですよ」
「へ~!」
「有難う」
エマはコクリと頷いてから、いつもの唄を歌う。
今回は少人数でのダンジョン攻略となるため、こうして突入前にバフをかけてもらうのはとても有意義な感じだ。
3人の周囲にバリアが張られてから、エマがポツポツと喋り出す。
「ステラ様。困った時には頼ってほしい。ずっとメイリンの機械を見続けてるから」
「はい! 遠慮せずに頼っちゃうです! バリア有難うなんです~」
「……ん」
”メイリンの機械”というのは、昨日マイアに配られたメッセージ機能の付いた魔導機器――メイリン・ナルルが開発したらしい――のことだ。
今日のダンジョン攻略~スカル・ゴブレッドの儀式は危険と隣合わせなだけでなく、運頼りな部分もある。もし予定が狂うような事が発生したなら、マイアや友人達にフォローを頼むつもりでいる。
そのため、メイリンの通信機器を持つのはステラ、エマ、エルシィ、レイチェル、マイア、メイリン、ケイシーの7人になる。ダンジョンから出た後は、ケイシーの方から寄宿生達と連絡を取り合ってもらうため、今回関わる人数はかなり多い。
何となく緊張しはじめたステラの耳に、ギギギ……と金属音が届く。
「あ……」
「霊園の扉が開かれたぞ」
ステラの頭上に飛んで来た相棒が、いつもよりも低い声で告げる。
人気順位1位の生徒達が入園すると、超音波のような音が周囲に鳴り響く。
咄嗟に耳を塞いだステラは目にする。
この世ならざる光景を。
霊園を抜けた先の様子がおかしい。最初に西側に、次に東側に、そして最後に上空に、街が出現したのだ。
「昨日行ったドワーフパブで教えてもらったんだがな、あの光景は、普段は魔法で隠されているのだそうだ」
「普段は見えないだけで、ちゃんとあるってことですか……」
「うむ」
国立魔法女学院の生徒達にとっても珍しい光景のようで、いままでのざわめきが静まり返っている。
しかし、そんな中、ステラの背中がゾワリと泡立った。
異様な気配に驚き、振り返ってみると、人垣の向こうにガーラヘル魔法学校の先輩ヘッセニアが
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