攻撃魔法ランク4
エルシィは以前、ステラが侍女になることを歓迎するような事を言っていたはずだ。だけど、今は状況が変わったのか、拒否されてしまった。
少し理由を聞いてみたくはあるが「身内の恥を知られるわけには……」などと呟いているので、深掘りすべきではないんだろう。
理由を聞く代わりに、今回ステラが協力したミレーネについて尋ねてみる。
「ミレーネさんは侍女としてどうですか??」
「え、ミレーネさん? あぁ、そういえばステラさんはセトンス家とつながりがあったのですわね」
「そうです」
「……真っ直ぐな方ですわよね。とても強い信念をお持ちですし、彼女のお父様のように、政治家などが向いているのではないかしら。私に仕えても、きっと失望してしまうだけなのよ」
「ふむふむ」
言われてみると、そんな気もする。
ミレーネの清廉潔白でいようとする姿勢は好ましかったけれど、常に監視されているような感覚は、本人からすると辛いかもしれない。
ステラが他の志願者についても聞いてみようかと、彼らの名前を思い出していると、エルシィはこれ以上この話題を続けたくないのか、話を切り替えた。
「ステラさんは最近の噂――”テミセ・ヤの国立魔法女学院”との交換留学について、聞き及んでおりますか?」
「あ、聞いてるですっ。エルシィさんはどうするです?」
「希望を出そうかと思ってます。ですが、だいたいは2,3年生から選ばれているようですから、難しいかもしれませんわ」
「そういうものなんだ……」
エルシィの場合、希望したなら行けそうな気がするけれど、そこは黙っておく。
「ちなみに、どういう基準で選ばれるのか知ってるです?」
「ええ。今週中に担当教師に希望を出しておけば、来週中に希望者全員に対し、簡単なテストが実施されるはずです」
「もうちょっと詳しく聞きたいです!」
「前年の参加者の話では、この学校の闘技場が使われるのだとか。そこにLv60相当のスライムが解き放たれ、一定時間で何体倒せるのかカウントするのです。倒せた個体数に応じてランキング化され、討伐数が多い順に交換留学生に選ばれますの」
「たしかに簡単というか、シンプルというか……。誤魔化しがきかない感じなんです……」
「だからこそ、私の力を学生達に知らしめるチャンスだとも思っていますのよ! 姫だから選ばれたなどと後ろ指をさされたくはないですもの!」
「頑張ってほしいです!」
この選出システムはステラにとっても好都合かもしれない。
というのも、ステラの場合、自分のステータス情報の多くを隠蔽しているからだ。
普段の生活はこれで良いけれど、優秀さの程度をステータスのみではかられた場合、ステラはただの駄目魔法使いにしか見えない。なのでこういう時に損をこうむってしまう。
「頑張ってほしいって……、ステラさんも交換留学の希望を出しますわよね? これだけ興味をしめされているくらいだもの」
「やるだけやってみます!」
「よかった! テミセ・ヤには学びに行くわけですが、貴女とご一緒出来たら、きっととても楽しいはずですわ。お互い、力を尽くしましょう!」
「おー!!!」
二人は固い握手を交わした。
◇◇◇
ステラはマクスウェル家に帰宅した後、敷地内にある訓練所に引きこもり、魔法の練習にはげむ。
さきほどエルシィから交換留学のためのテストについて聞き、色々考えてみたのだが、意外と大変かもしれない。
何故かというと、王立魔法学校の生徒達は破壊活動を好み、常日頃から攻撃魔法の鍛錬を行う者がかなり多い。逆に言うと回復魔法や分析魔法、生産魔法の面では無能な者が多く、問題視する大人達もいるとの話だが……。
その辺はさておき、テストが火力偏重な内容になっているため、王立魔法学校生としての特徴を極めた者がランキング上位になりやすい。
しかもステラの場合、アジ・ダハーカに隠されたステータス部分についての能力を学校で使いたくないので、攻撃魔法とアイテムのみでの勝負になる。
幸いなことに、ちょうど攻撃魔法が3から4に上がったところなので、攻撃魔法ランク4の魔導書を読み、新魔法を覚えているところだ。
そんなステラを冷やかしに来たのか、アジ・ダハーカが入り口から入って来た。
「ふむ、大昔の自分が作った魔法はスンナリ使えるというのに、赤の他人が作成した攻撃魔法は苦戦しておるな」
「アジさん! うぅ~、魔法陣が亜空間に引っ込みやすいです」
「集中力が足りぬのだと思うぞ。糖分補給におやつでも食いに行かぬか?」
「もうちっと感覚を掴んでから休憩タイムにするです」
「そうか」
ステラは目をつむり、右手を前に突き出す。
呼び出した魔法陣は【連続炎爆】――対象を連続で爆破する魔法で、爆破回数が1増えるたびにINT数値分のダメージが加算される。しかしながら、魔法攻撃の対象が行動不能になった後、別の対象にターゲット変更をするのがとても難しい。
対象を倒す→魔法陣を書き換えてターゲットを変更→対象を倒す→魔法陣を書き換えてターゲットを変更→∞(MPが尽きるまで続けられる)
このような感じなので、アジ・ダハーカが言うように集中力が必要だし、器用さとかリズム感とかも求められる。
ステラが放った魔法は、予め用意しておいた土塊人形を5体倒したところで、停止した。
「うーん。中途半端なところで止まると、総ダメージが半端で終わるですよね……」
新しい魔法を覚えるのはなかなか大変だ。
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