友人の家族事情(SIDE ステラ)
ロカの知人から貰ったダンジョン核は、アジ・ダハーカやジェレミーの手で、マジックアイテム製造装置に繋がれた。これにより、製造装置は動力二倍の状態になった。
本当であれば、クリスに製造装置をもう一台作ってもらうべきなんだろうが、学生の身分で二度目のローンを背負う気にもならず、暫くはお金を貯めることにした。
とはいえ、ダンジョン核2個分の動力を得た製造機もなかなかに良い働きをしてくれ、以前よりも1.5倍ものアイテムを製造するようになった。
この感じだと、製造アイテム全体の中から、少数を帝国の冒険者ギルドの売店に回せそうな感じだ。
ありがたいことに、ロカの知人が向こうの冒険者ギルドの売店から資料を持ってきてくれたので、”日ごと、週ごと、月ごとの販売数”、”アイテムが多く売れるイベント”、”競合アイテム士の出品能力”等の情報を得ることが出来た。
それを元に、ステラ自身の生産数を決めるべく、ロカと何度も話し合いをしている。
この手の知識があまりないステラには、彼女の存在は頼もしい限りである。
そんなこんなで、アイテム士として充実した4日間を過ごしていたのだが、ふと、自分自身の成長度合いが気になりだした。
何故かというと、最近魔法学校の上級生を中心にステータスやら、実績やらを気にする雰囲気が漂っているからだ。漏れ聞こえてくる話をまとめると、”優秀な人間なら魔導国家テミセ・ヤに行けるかもしれない”し、”成績不振者は同国からやってくる魔法使い達にマウントをとられる”のだとか。
ステラ自身、マジックアイテムの素材を調達する目的で、テミセ・ヤに渡りたいため、自分のステータスを久しぶりに調べてみることにした。
空き教室に忍び込み、分析魔法を使用する。
【ジョブ】アイテム士 L v68
【サポートジョブ1】魔法使い L v52
【サポートジョブ2】常闇を統べし者 Lv3
【パラメータ】 STR:28 DEX:682 VIT:42(+100) AGI:68 INT:518(+100) MND:525(+100) HP:1,420 MP:47,560
【アビリティ】効能倍加、効能反転、効果移動、エーテル抽出、エーテル添加、変質/攻撃魔法Ⅳ、治癒魔法Ⅳ、防御魔法Ⅳ、生産魔法Ⅵ、分析魔法Ⅵ/時空魔法Ⅱ、怠惰、悪夢、魔法創造
【ウィークポイント】冷属性、時間逆行
空中に表示された自分のステータスをじっくりと眺め、ステラは頷く。
「ふむふむ。パラーメータが全体的に上がってるなぁ。それと、攻撃魔法が3から4に。時空魔法が1から2……」
時空魔法についてはランクが一つ上がったことで、どのようなメリットがあるのか不明であるが、攻撃魔法は、ランクが上がった事により習得できる魔法が増える。これを機に、新しい魔法についての勉強をしても良いかもしれない。
そう思ったステラは、空き教室を出て、図書館へと向かう。
別にマクスウェル家の書庫で探してもいいけれど、今モチベーションが高いウチに、
図書館に近づくと、その扉付近に見覚えがある人物が立っているのが見えた。
ガーラヘル王国の姫君であり、ステラの実の姉であるエルシィ・ブロウだ。銀色の長い髪を風に遊ばせ、物憂げな表情をする彼女はハッとするほどに美しく、ステラは離れた場所からついつい観察してしまう。
普段だったら、このくらいの位置にステラが居たなら気づいただろうに、今日のエルシィは気がつかない。
というか、さっきから彼女の様子は変だった。
教室でステラをじっと見つめたかと思うと、目が合いそうになると明後日の方を向き、顔を真っ赤にさせていたのだ。
変わった行動の多いヒトだけど、今日のエルシィは特に妙に思える。
何か彼女の気に入らない事でもしてしまっただろうか?
不安に思ったステラは、エルシィに近づき、彼女の肩をツンツンと突いた。
すると、大げさに驚かれる。
「ス、ステラさん!? 一瞬の間に移動するスキルでも身につけましたの!?」
「ゆっくり歩いて来たですよっ。エルシィさん、今日はどうしちゃったですか」
「えっ!? そ、それは……」
ステラの問いに、エルシィは慌てた。
顔色を様々に変化させた後、周囲を見回し、上空を確認し、意を決したようにステラの両肩を掴む。
「ふぁ?」
「ステラさん。今から私が言うことには悪意はありません! だから、真面目に聞いてくださいませ!」
「……ほい」
エルシィの剣幕に
今日の彼女は本当に変だ。
「いいですか。私の侍女になってはいけませんわ」
「……!」
「ガーラヘル城には恐ろしい人物が居るのです。ステラさんの様な可愛らしい方は、毒牙にかかってしまうかもしれません。私の力では守り切れないかもしれなくて……」
「う、うん」
「せっかく侍女を
「了解です!!」
エルシィが何を不安に思っているのかはサッパリ分からないが、ステラは元から侍女になる気がなかった。だから、彼女が余計な気遣いをする必要など全くないのだ。
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