筆記試験の結果
試験官からの質問に正解した後、白紙に問題文が表示された。
そこに書き出されていたのは、事前に聞いていた通り
【一般常識&時事】、【歴史】、【会計】、【政治】、【ガーラヘル王国法】、【経済】、【国際地理&文化&法律】、【大陸語】、【芸術】についての問題だった。
これらの知識を持ち合わせないステラは問題文をチラリと読んで気が遠くなったが、幸いなことに”倫理観”だとか”道徳心”があるか、または”勘”が良ければ何となく分かる内容もあるようだ。
酷いプレッシャーと戦いながらお昼前までに解答欄を全て埋め、トボトボと試験室から脱出する。
ドア付近では早めに終わっていたレイチェル達が待ってくれていて、直ぐに取り囲まれる。
「ステラ、どうだった!?」
「レイチェルさん。うぅ……。心臓がいくらあっても足りないくらいに、精神的な試練を与えられたです……」
「そうなんだ?? アタシ達の方は一つの問題用紙を3人で解いていくシステムだったんだよ。アタシは全然分かんなかったけど、他の二人がやってくれたから、大丈夫だと思う!」
「全部解った。問題ない」
「比較的簡単でしたね」
「すごっ!」
エマとロカの回答を聞き、ステラは素直に感動する。
やはり、彼女達の協力を得られたのは大きかったようだ。
だがしかし、採点や合格の基準が分からないため、まだ安心は出来ない。
自分の所為で筆記試験が落ちてしまうことだって充分あり得る。
「午後から実技試験があるから、筆記試験の結果は早めに出る感じです?」
「15分後くらいに、受付前の掲示板に結果が張り出されるみたいだよ!」
「ほへぇ。採点が結構早いですね??」
「なんかさ~、出願者のふるい落としがエグかったみたいで、受験生の7割はすぐに失格扱いになったんだって! ステラは残っていただけでも凄いと思う!」
「うあぁっ。そんなに賄賂を払った人が多かったですか……」
いきなり助っ人達と引き離された上で、
さっきの綱渡り状態が思い起こされ、またしても心臓がバクバクしてくる……。
試験の問題文について話しながら、受付の前まで来ると、もう既に他の受験生達が大勢集まっていた。皆一様に緊張の
(う~ん……。ざっと数えて、30グループくらい残ってそう。このうち何グループが実技に進めるんだろう??)
エルシィの付き人の話では、全員不合格ということも充分にあり得るらしい。
学校の受験や一般企業の入社試験とは違い、相応しい人間が居ないのなら、誰も採用すべきではないとのことのようだ。
試験について色々考え事をしている間に、受付の前に先ほどの試験官が現れ、一枚の紙が張り出された。
「皆様、筆記試験ご苦労様でした。合格者の名前を貼り出しましたので、ご確認くださいね。合格者はこちらのテーブルから実技試験の案内冊子を取り、不合格者はご帰宅の準備を」
そう言われるやいなや、あっという間に掲示板の前が埋まる。
「良かったわぁぁ! あんた達、合格したわよぉぉ!」
「落ちた……。どうしよぅ……」
「何よ、コレ! フォロワーの点数が5点?? 貴女達の所為で不合格になってる!」
前方で様々な人間模様が繰り広げられるが、出遅れたステラは、後方でウロウロするしかない。
「身長がデカイ人が多くて、紙の内容が見えないですっっ!」
「どれ、儂が見て来てやろう!」
「お、アジさん。頼んだです!」
こういう時に、相棒の存在は頼りになる。
さっきこのドラゴンの助言の所為で、失格になりかけた気もするが、これに免じて忘れてあげても良いだろう。
「儂等のチームは合格扱いだったぞっ!」
「本当ですかっ!」
「出願者の点数が21/50、フォロワーの点数が50/50であった。合格点が70のようだから、ギリギリではあった」
「へ~! 皆凄いね! あたしは何の問題文も解けなかったから、ホント感心しちゃうよ!」
「持ってた知識を使っただけ」
「同じくです!」
レイチェルの誉め言葉に対し、エマとロカの反応は控えめな感じだ。
この知識人二人を前に、まさか「自分は解答用紙を全部勘で埋めた」とも言えないので、ステラは取りあえずニコニコしておくにとどめた。
「結局実技試験に進むのは、6グループになるようだな。ミレーネ・セトンスやパーヴァ・コロニアも残っているようだぞ」
アジ・ダハーカに言われ、後方を振り返ってみれば、確かにその二人が居た。
彼等のグループの他には、”妙に毛深く、ガタイの良い女性(?)達”や、”共通の制服を着た、清楚な少女達”、”エプロンや作業着、ミニスカなメイド服を着た集団”が居る。
通過率2割の試験を通っただけあって、表情からにして、全員強そうな感じだ。
「実技試験は昼休憩後すぐに”戦闘”実技があるみたい! もう一度行動のすり合わせをしながら、お弁当食べよっ!」
「う、うん。そうですね!」
ついつい雰囲気に飲まれかけたが、レイチェルの明るさにやるべきことを思い出す。実技試験でやらねばならない事の特殊性を思えば、今から気を抜くべきではないだろう。
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