時間凍結
気が遠くなるほど長い時の中で、幾つもの命が儚く散るのを見届けた。
近しい者も例外ではない。
自分にとってほんの僅かな間に、老い、死に絶え、その肉体すらも朽ちてゆく。
独り残される
自分の心は徐々に歪んでいっただろうか……?
ステラは胸の痛みと共に、過去の出来事を思い出した。
(【アナザーユニバース】を創ろうと考えた時、私には友達が居た。私の所為で酷い目にあって……、随分苦しんでた。私と関りを持ったその時から、病気を
未完成のままの術式は、信徒だけでなく、外部にも知られることとなり、今悪用されている。
遥か昔の出来事を思えば苦々しい気分になるが、自分自身の事だから文句を言えない。
記憶の重みに顔をしかめていると、インドラがポリポリと頭をかきながら話しかけてきた。
「――悪かった。疑ったりなんかして」
「あんまり気にしてないですっ」
「良かった。それで……、魔法について何か思い出したか?」
「かなりの記憶が流れてきてる感じです。【アナザーユニバース】には、【
「んなぁっ!?」
インドラは絶句したかのように、口を大きく開け、固まった。
自分も彼のように思いっきり呆れてしまいたいけれど、そうも出来ないのがウンザリする。
「なんか色々な出来事があったっぽいです。今の自分には、一部しか思い出せてないみたいですけども……」
トボトボと歩き、再びいびつな形の魔法陣の前に立つ。
「――前世で自分は、生まれ変わった後の自分に置き土産をしたかったんですね」
「もっと分かりやすく言ってくれないか!?」
「えぇと……。この魔法陣の外周、本物の方には【時間凍結】の術式が書かれてるですよ。でもこっちは空白。そして中心に近い部分に【空間配列】が組み込まれてるです」
「【時間凍結】は分かるが、【空間配列】とはなんだ!?」
「う~ん。同等の質量のエーテルが入った空間の集合体みたいな感じです。え~と、つまり私達が4時間も歩き回った空間全てのことです!」
「理解したぞ! で、ここから抜けるにはどうする? 俺でも【時間融解】を使用するぐらいは想像できるけど……」
ステラは少し考える。
いつもの自分だったら、この手の質問に弱かったが、今はそれっぽい答えにたどり着けた。
「――まず、解放したい空間全てを指定するです。それらに対して、”人間”、”雲”、”岩”みたいに、取り出したい対象の属性を決めるんです。そうすることで、空間外、――というか、元の世界に色んなモノを出すという魔法になるんです。あー、そうか。これを考えていた時は、放出したい物が決まってないから、術式に書いておけなかったのかも」
「そういう事か!! 割とメンドクサイ魔法になるな! だけど……、それをするにはかなりのMPが必要になるんじゃないか? 空間の個数や抜き取る物体の種類次第で、膨大になるぞ!!」
「うん。一回だけではきついかもなんですけども、取りあえずドラゴンと人間だけに絞ってやろうと思うです。それだと、ギリギリMPが足りるかもしれないんです!」
「いい考えだなっ! 流石は俺が唯一認めた男だ!」
「今は可愛い女の子なんですっ!」
「う゛っっ! わ、悪かった。少し混乱してだなぁ!! とにかく、……エーテルが足りなくなったら、金剛杵を使ってくれよ!」
「そうするです」
リボンで背中に括り付けていた金剛杵を手に取ると、
改めてギュッと握ってから、歪んだ魔法陣に手を伸ばす。
触れたか触れないかのところで、大量の球体が放出され、暗い空間に
それを見回してから、
「……我命ず。凍り付きし時を溶かせ。【
魔法陣の外周に、神聖文字が現れる。
その清浄な光を確認してから、ステラはゆっくりと目を閉じたのだった。
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