第15話 買い物

 お菓子作り当日。尚が家まで迎えに来てくれて、一緒に彼の家まで向かっていた。


「尚の家行くの初めてだ~」

「そうだよね!というか、俺らの誰かの家自体行ったことないでしょ?」

「うん。すごく楽しみにしてた!」

 そう、毎日誰かと一緒に帰ったことはあるものの、誰かの家に訪れるのは初めて。昨日はワクワクしてなかなか寝れなかった。


「尚の家ってどんな家なの?」

 なんとなく訪ねてみると思いもしない言葉が帰ってきた。

「俺、兄ちゃんたちと暮らしてんだよね。優ちゃんも知ってるでしょ?御門奏斗。陸君と一緒に仕事してるんだ。」

「え!?あの、奏斗さん?」

 私がさらわれたあの日、私をなぜか睨みつけていたあの人が尚のお兄さんだったのだ。

「私、前にすごく睨まれてたんだけど…大丈夫かな?」

「あぁ、兄ちゃんは陸君大好きだから。武人君みたいなキャラだよ。でも大丈夫!あんなんだけど、一応ちゃんと考えてはいるから。」


 ニコニコしながら、兄について語る尚を見ると、兄弟仲が良いのが感じられる。

 それから今日どんなお菓子を作るか話したりしながら、業務用スーパーに寄って材料を買う。何やら大量に材料をお店用のバスケット。

「尚、そんなに買うの?」

「うん、みんな後で揃うだろうし、荷物持ちの人もそろそろ合流するころだから。…材料はこんなもんでいいかな。」

「荷物もち?」

 今日は三人ではないのかと不思議に思っていると、そこに業務用スーパーには似合わない、高貴な彼が現れた。

「お嬢さん、おはよう。それ貸して。持つよ。」

「壮太君!おはよう。」

 スマートに私から材料の入ったバスケットを受け取ると、レジに向かい支払いを済ませてくれた。ブランド物の財布に入っていたたくさんの諭吉は見なかったことにしよう。


「買い物も終わったし、俺んち行こうか。」

 尚について、目的地に向かう。


 尚の家は大きな屋敷の隣に立つ、一般的な一軒家だった。

「ここが俺の家。ちょっと待ってね。」

 そう言ってかわいいキーケースからでてきたカギを使い、ドアを開けると、中に通してくれた。

「壮太君、中案内してあげて。たぶんゆいも着いてる」

 ドアを閉めた尚はそういうと、家の中に消えていった。

「じゃあ、行こうか。」

 そして私たちも家の中に入る。奥まで進む壮太君の歩みに迷いがないところを見ると、この家来たことは何度もあるのだろう。


 壮太君の後を追って、リビングらしい部屋に入ると、そこにはソファーに寝転ぶゆいがいた。

「あ!優ちゃんたちおはよ~」

「おはよう。いつ来てたの?」

「ん~?30分くらい前に来てたよ。陸君にあけてもらった。」

 …陸さんと奏斗さんの関係とは?疑問に思っていると、買ってきた荷物をしまった尚が戻ってきた。

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