第13話 溺愛

 壮太君の態度が激変したのは、私が正式に彼らの『姫』となったあの日。

 私を送ると名乗り出てくれた壮太君に送られて帰宅した。

 その道中、彼とはゆっくり話すことができたのだ。主に話したのはみんなの事だけど、壮太君自身のこともたくさん教えてもらった。


 そして、私に対する態度がとても甘くなったのを感じた。…まさに溺愛だ。


 あの部屋に居るときは、彼の隣に座るのはマスト。毎日、彼の厳選した紅茶を振る舞ってくれる。

 お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな。


 私は彼に「お嬢さん」呼びされることにまだ慣れてはいないし、彼もまた私を甘やかすのに照れが入っているようだ。でも、大切にしようという気持ちが伝わってくるし、悪くはない。


 彼らとのあまり遠くはない思い出に意識を飛ばしていると、

「お嬢さん?大丈夫?」

 壮太君が話しかけてくれていたようだ。

「うん、大丈夫。ちょっと考え事してただけ。」

「そっか。それならいいんだ。」

 そう言って壮太君が私の頭をなでてくれる。


 そんな私たちの様子を見て、瑞樹君はニヤニヤしていた。

「やっぱ、優ちゃん来てから、壮太君変わったね。俺らにも甘くしてよ~」

「お前らなんか甘やかすか。お嬢さんだから。それだけ。」

「(笑)今の武人君聞いてたら拗ねてたろうな。」

 壮太君の辛辣な言葉に全く動じていない瑞樹君は笑っている。


「そういえば、尚はどこ行ってるの?」

 私には恥ずかしすぎる話題を変えようと、今日は姿を見ていない尚の行方をきく。

「尚なら今、買い出しに行ってるよ。冷蔵庫がすっからかんだ~って張り切って。」

 さっきから静かだったゆいが教えてくれた。そんなゆいは何やら書類に向かっていたようだ。なんに書類なのか前、聞いてみたら生徒会の仕事なんだとか。いつも遊んでいたいから、暇なときに消化しているらしい。


 彼らと話しているだけで、30分ほどたっていたようだ。そろそろ私も買い物に行こうかと思っていたところ、

「壮太く~ん!」

 騒がしいあの人がかえって来た。

「ほら、帰ってきた。」

 隣の壮太君が少しうれしそうに、先ほどの予言が当たったのをアピールしてくる。


 武人君は部屋に入ってくるなり、思い出したように私に恨めし気な視線を送ってくる。

「なぜ、そんなに近いんですか~?優ちゃん、そこ変わって~」

「諦めな、武人君。あれは完全に溺愛だよ。」

 瑞樹君に言われたその言葉に再び唇を尖らせる武人君。そこに買い出しに行ったという彼が帰ってきた。


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