第12話 ソファー

彼らと出会ったあの日から数日。


「なぁ、侑依。あれってさ。」

「武人君も思った?あれって、壮太君の専用ソファーだよね?」

いつも通りに皆が集まったとある日。武人君とゆいが何やらこそこそと話している。

「この間、座ろうとしたらめっちゃ怒られたんだよ?」

「え、武人君もやったの!?俺も先週怒られた。」

「だよな?じゃあなんで…」


壮太君直々の要望により、私は彼のソファーに座っていた。隣には命を下したご本人様が優雅に腰を掛けて、紅茶を召し上がっていらっしゃる。


そんな私たちのところに、ゆいと話をしていた武人君がやってきた

「…なんで、誰も座れないソファーに優ちゃんは座れてるんですか!?」

わざわざ床に正座をして、壮太君に疑問をぶつける。

「お嬢さんは特別だから。」

「なんで!?俺だって、ずっと相方としてやってきたじゃん!俺も特別にして!!」

その様子に驚くこともなく、静かに返事を返した壮太君に武人君が異議申し立てをする。

「ねぇ、壮太くん~。俺も壮太くんの隣に座りたい~!」

「武人うるさい。」

「はい。ごめんなさい。」


騒ぎ立てる武人君を相方がぴしゃりと止める。

「武人君、なにぶりっ子してるの~?」

壮太君の一言で静かになった武人君を、離れたところから様子を見ていた、リーダーの彼がいじる。


「壮太くんのいるときはいつもぶりっ子ですぅ~」

ソファーの前で正座したままの武人君が言い返す。しかし不貞腐れたままでは全く怖くはない。そして、スッと立ち上がると、ドアに向かって歩いて行った。

「あれ?武人君、どこ行くの~?」

「購買でしょ?」

ゆいの問いかけに壮太君が答える。


武人君の行動パターンは完全にばれてしまっているらしい…

「今日は新作のおにぎりが入ったんだって!購買のおばちゃんがこっそり教えてくれたの。…特別に!俺だけに!」

某森のキャラクターのようにわかりやすく怒りながら出て行った彼。

「あれ、本気ですねてるよ~(笑)」

そんな彼を見て、瑞樹君が爆笑している。

「30分もすれば、おにぎり片手に戻ってくるよ。」

さらりと壮太君が予言をした。


「でも、なんで急に女の子隣に置きだしたの?初日なんて、あんなに牽制してたのに。」

向かいに座ったゆいが不思議そうな顔をしている。


最近は、毎日この部屋に通っている。正式に『姫』という立場ではあるものの、もちろん誰かの彼女というわけではない。

あの後話し合った結果、行き帰りは毎回誰かが送ってくれることになっている。引っ越したばかりで不安ばかりだったところから、みんなと騒がしくできて、とてもうれしい。


そして、私を壮太君が甘やかすようになったのはあの時からで…


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