第10話 優しい彼ら

 壮太君は頭のいい人だ。

 だからきっと、わかっていた。全部分かっていたから、昨日限りで、私をみんなから放そうとした。

 頭のよさ故に、自ら悪者になろうとした。そんな優しい人なのだろう。


「今回は俺らでよかったな。ほかの輩だったら今回みたいにはいかなかったと思えよ。お前ら、今後どうするか考えなさいね。」

 それまで黙っていた陸さんが口をひらく。

「まぁ、今、お前らがここにいる時点で決まってんだろうけど。」


 全て見透かしたような陸さんは最後に私にウインクをして、部屋から去っていった。後を追って部屋を出る奏斗さんに睨まれたのは気にしちゃいけない気がする。


「なんだよもう~!。」

 門馬さんが溜息をつきながら、部屋に入ってソファーに腰掛ける。

 瑞樹君の瞳の色は、元の優しい色に戻り、窓の外を見つめている。


 壮太君は私の隣に座り、静かに話し出した。

「ごめん…俺の考えが甘かった。危険なんていくらでも予想できてた。」

 ぽつりぽつりと話す彼はずっと下を向いている。

「間に合うと思ったんだ。昨日のうちに関わりを切ればお嬢さんは戻れる。危険なんかない生活が送れる。って…本当に、ごめん!」

 壮太君はリーダーである瑞樹君に向かって頭を下げる。私と門馬さんは壮太君を見つめることしかできない。


「壮太君、そんなんやめてよ。ね?頭上げてくれないと俺、困っちゃう。」

 笑顔で壮太君に声をかけるこの人の優しさは測り切れない。

「今日気づけたんだから、それでいいじゃん。これから守っていこうよ。仲間が増えて俺は嬉しいよ。」

 フォローする彼は、壮太君以上に余裕のある、器の広い人なのだろう。

「大変なことは増えるかもしれないけど、侑依が無理に連れてきたらしいし、ちゃんと俺らで責任取らないと。」


 まだ高校生とは考えられない、落ち着いた口調で諭す彼に、壮太君も落ち着きを取り戻す。


「そしたら、正式に俺らの『姫』だね!…だめだ。恥ずかしいぃ。こういうのはやっぱり壮太くんのセリフだ…」

 空気を変えようとした門馬さんはなぜか照れだした。キャー///とちょけて見せる彼は、きっと誰よりも周りを見ていて、気が付く人なのだろう。


 …いつの間にか彼らに守られることになっている。そのことに気づいた私はやはり断ろう、と声を出した。

「すみません。やっぱり私、皆さんにご迷わk「優ちゃ~ん!」」

 申し訳ないなかで、自分の気持ちを伝えようとするが、肝心なところで彼がやってきて私のセリフを遮った。

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