第5話 彼らの正体

 この部屋に入ってから取り残されたままの私のところに、壮太君がやってきて、

「ちょっと、いいかな?」

 そう言って、ドアの一つに案内された。


 中に入ると、たくさんの本がならび、何台かのパソコンおかれていた。

「この部屋は気にしないでね。」

 ドアをしめた壮太君は、ゆっくりと話し始めた。

「さっきは空気悪くしてごめんね。別にあんたに怒ってるわけじゃないんだ。」


 近くの壁にもたれかかったまま話す壮太君は、きまり悪そうに謝ってきた。そんな壮太君に私はうなずくしかできなかった。


「俺らね、見ての通りこの学校の生徒なんだ。そして生徒会役員でもある。それで、ここに集まるのは生徒会関係者だけ。」

「はぁ。」

「そんな訳で、俺らが集まるここは情報やらなんやらたくさん置いてある。嘘みたいな話だけど、いまだに学校同士で抗争なんかもよくあるんだ?

…なんとなく察したと思うけど、ここは俺らの拠点であり、弱点でもある。そんなここがつぶれたら、この学校は終わる。だから、ここには一部の人間しか入れないんだ。」


 私にもわかるようにゆっくりと丁寧に壮太君は説明してくれた。易しい説明から彼の頭の良さがうかがえる。


「俺らはこの地域一帯をまとめてる。喧嘩とかが起きれば止めに入るし、起こらないように毎日見回りもしてる。」

「ゆいがいたのも見回りってことですか?」

「そう。あんた頭いいんだね。

 そして、俺らのリーダーで肩書は一応生徒会長、なのがさっきずっとゲームしてたやつ。名前は佐野瑞樹。

 プリン持って騒いでたのが門馬武人で、俺は桐原壮太。二人とも副生徒会長。

 ゆいともう一人、今日はいないやつが書記兼瑞樹の護衛をしてる。」


 さっきの部屋にいた人たちの説明もしてもらいこれで話は終わったかとおもったその瞬間。

「ざっと話した通り、俺らの組織には男しかいない。男なら自分の身は自分で守れる。でも、そこに女の子が足を踏みいれた・・・どういうことかわかる?」


 冷酷な目で私を見つめながら、静かに聞いてきた。

「狙われる?ってことですか?」

「そう。誰が見てるかもわからない中で、こんな大事な拠点に出入りできる『姫』が現れた。敵さんからはそう見える。

 あんたがいるってだけで、俺らの弱点は増えるってこと。」


 易しくも難しいことを伝えられる中で私は壮太君の言葉を頑張って飲み込んでいった。


 そして、壮太君は厳しい言葉を私に掛けるのだった。

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