愛らしい死人

韮崎旭

愛らしい死人

とても愛らしい死人腐敗したその口は何も語らないのでかわいいね死んでいれば

死人の腐敗した皮膚が湯つくりと崩れる沈むスープのような体液に沈む例えばふかひれのあんかけとかそういったたぐいの愛らしい死人

残念ながら死人はかつて生きていたそれが瑕疵死人になって初めて

死人は完成した愛らしい蛆で埋め尽くされた頭蓋のなかに長虫のように張り付いた血管

欠落こそ、その美点死人はそこにある

或は土葬されてあるいは放置されて埋葬の許可を待っている間に腐敗が進行してしまい行政区の公衆衛生上の問題になっている蠅とハイエナ、あらゆるスカベンジャーとグール(屍食鬼)の女王は 美しく君臨する洞となった眼窩で見渡す ない視力で

愛らしい死人の客体は、そこにあるがけ崩れの危険も顧みない死亡事故の破壊的効果、産んだ傷口が修復不可能に傷む甘い腐臭をまとい熟れた果実のように割れた皮膚から覗く肉 愛らしい死人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛らしい死人 韮崎旭 @nakaimaizumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ