第2話 ごっちゃになる言葉
「明日って、朝練あったっけ?」
「あるよ~、今週末練習試合だからね」
「そうだったわ、明日も早えなぁ~」
校門をくぐりながら、明日の予定を確認する3人。今日も今日とて、練習で絞られた3人は、そのストレスを発散するようにどうでもいい会話をしながら自転車をこぐ。
そんな帰り道、口火を切ったのは、ゴミオカだ。
「エレベーターとエスカレーターってどっちがどっちか分からなくならない?」
答えたのは、センダだ。
「エレベーターが動く階段で、エスカレーターが上下する箱だろ。…あれ?逆だわ」
「ほれみそ」
「たしかにごっちゃになるな。なんかいい覚え方あるか」
「そもそも、エレベーター、エスカレーターってどういう意味だろう、英語だよな、多分」
「エレベイトとエスカレイトの名詞形だ!」
「あっ!ぽいね。でどういう意味」
「意味は知らんけど。タイチョー分かる?」
ゴミオカは、この中で1番学力がましなタイチョーに聞いてみた。
「エレベイトは『上がる』で、エスカレイトは『段階的に上がる』みたいな。…あれ逆だったっけ」
「タイチョーが分かんないならおれらは、もっと分かんないよ」
ゴミオカもセンダも学力は並み以下である。
「ガールじゃない」
「えっ。タイチョーなんて」
「ガールをつけてしっくりくる方がエレベーターで箱。しっくりこない方がエスカレーターで階段」
タイチョーはその独特なセンスで区別の方法を切り出した。
「エレベーターガール。エスカレーターガール。…確かにこれならごっちゃにならないな」
「さっすがタイチョー。いい分け方じゃん」
ゴミオカもセンダもこういうタイチョーの目の付け所には、同い年ながら若干尊敬に近い思いを持っている。
「エレベーターガールっていう単語で区別するの良いな」
「ホットドッグとアメリカンドッグも分からんくならん?」
「「ならん」」
このタイミングで余計なことを言うのが、センダという男だった。
「センダよぉ~、それはわかるだろ」
「ドッグしか合ってないしね」
「ホットが揚げたやつで、アメリカンがパンにソーセージ挟んだやつだろ。…あれ、逆だわ」
「わざとやってないかぁ〜」
「でも、ホットドッグよりアメリカンドッグの方が絶対ホットだし、ホットドッグの方がアメリカンな感じしない」
「屁理屈言うなよ。…けど、そう言われると、確かにそうかもしれん」
センダはこういう一理あるような変な持論をよく展開して先生に怒られる奴だった。
「○○ドッグってその2つ以外すぐ出てこないから余計ね。そこで比較しちゃうとね」
「だろぉぉぉ」
「調子に乗るなよ、センダ」
「シソと大羽」
「タイチョーは、まじで分からんものをださんでよ」
「おれも分からん」
「甘夏とはっさく」
「それも分からんて」
「たくわんとつぼ漬け」
「ちょっ「ココナッツとヤシの実」
「待っ「あき○城と渡辺○り」
「いい加減にせえよ」
タイチョーは割と流れに乗りまくるタイプだった。
「つーかココナッツとヤシの実は、身近にないからそもそも分からんて」
「『あき○城と渡辺○り』は笑い取りに行ったろ」
「あっ!僕ここで曲がるから。またね」
もう3人が分かれる十字路についてしまった。話しているとあっという間である。
「タイチョー言い逃げじゃん。まぁいいか。ばいなら」
「おう、またな」
少し遅れて2人も別れる。
「T字路ティージロと丁字路テイジロ」
「もういいよ」
部活帰りくっちゃべ日記 隣の客がよく食う柿 @sekmaka
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