31.
”僕はそこで絵を描く技術を身に着けた。それから僕は描き続けた。だんだん絵を描くことが好きになったんだ。そして描いた絵が認められるようになって、嬉しくなった。でもきっとそれが良くなかったんだろうな。どんな絵が喜ばれるのかばかり考えるようになってしまった。そうした瞬間、僕が絵に向かうための魂はすり減ってとうに無くなったんだろう。こんなことばかり描いてごめん。今の僕はそんな状況です。”
僕はそのように文通のノートに書いた。親に「次に加藤さんが来たとき、ノートを渡しておいて。」と伝え、また惰眠を貪り、現実逃避する生活に戻った。
何日も他人と会わない生活を続けると程なくして外に出ることが億劫になり、誰かと話すことが怖くなってしまった。
そんな時、加藤さんが毎週届けてくれる学校からの配布物の中に例の文通ノートを見つけた。僕が現況を綴ったことに対して返答をくれたのだ。見るのが怖く、決心するまで時間がかかったが、やがて僕は手を伸ばして読み始めた。
そこには思わぬことが書いてあった。
僕が書いたことは実のところただの甘えであると思う。
加藤さんのほうがきっと日常生活等においても辛いことが多いのだと思うし、何も障害もなく、傷ついたと言う僕に対し責める言葉の一つでもあるだろうと思っていた。
しかし、こう書いてあった。
”来週の月曜日の放課後、美術室に来てください。”
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