23. 

いつも何かを分かった気になって、そこからは一切成長しようとしない。これが僕の悪い癖であった。今回もその例に漏れず、僕は酷い勘違いをしていたのかもしれない。


とっくに最終バスは過ぎてなくなってしまっていた。携帯電話も充電を尽き、僕は歩いて帰ることが余儀なくされていた。だがそんなことは気にもしていなかった。


僕はただ黙って彼女が泣き止むのを待っていた。とりあえず慰められる言葉を一切持っていなかったからだ。

自分を冷たい人間だなと改めて思う。


程なくして彼女は落ち着いたようにみえた。気付いたらしゃくり上げる音は聞こえなくなっていた。僕の手を掴む力もそれほど強くなくなっていた。ただ辺りには鼻を啜る音がしていた。


「どうしたの?」僕は極力、優しい声量でそう彼女に聞いた。


”あのね”という発声の仕方で彼女は息を吐いた。


彼女が話すことができないのは当然知っている。でも今、彼女の涙の理由を聞かなければいけない気がしていた。今まで通りの時差では何かが間に合わなくなってしまうと感じていた。


彼女は1冊の小さなメモ帳を取り出し、僕に渡した。タイトルには”日記”と書かれていた。これは正真正銘彼女の日記だ。交換日記には書かれなかった彼女の本当のことが書かれているのだろう。


明滅するバス停のあかりを頼りに僕はそれを読み始めた。

その間、彼女はずっと僕の手を握っていた。


ここからは僕が知らない話だ。







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